「格安SIMに通話定額がないのはドコモのせい?」 ドコモ株主総会でも目立ったMVNOの広がり(1/4 ページ)
ドコモの株主総会で感じられた格安SIM/格安スマホの広がり。4年ぶりの増収増益を達成し、社長が交代するドコモの経営陣に、どんな質問が寄せられたのだろうか。
6月16日に行われたNTTドコモの株主総会には、約3500人の株主が出席。ドコモの2015年度決算は4年ぶりの増収増益だったためか、業績に関する質問は少なめだった。
例年通り、利用者の立場からサービスに関する質問や要望も目立ったが、今回は格安SIM/格安スマホ利用者からの声もあり、MVNOの広がりが感じられた。主な質問と回答は以下の通り。なお肩書は株主総会の決議前のもの。
自社株買いにはどんなメリットがある?
―― 自己株式の取得が株主還元になるということだが、その実感がない。なぜ株主のためになるのか、分かりやすく説明してほしい。またその巨額の資金を配当には使わないのか。希望としてはさらなる増配をお願いしたい。
佐藤取締役 株主還元の強化は重要な経営課題と認識している。還元には増配と自己株式の取得という2つの要素があると考えている。
自己株式取得の効果だが、資本の効率化という観点も合わせて、1株あたりの価値、EPS(1株当たり当期純利益)を上げていきたいという狙いもある。市場から株を買い取って(市場の)株式数を減らすと、1株あたりの価値が上がる。これが株主還元の強化になると捉えている。
増配と自己株式取得のバランスは、基本的に配当を安定的に継続して上げていきたいというのが基本的な考え。増配で還元していくが、企業成長のための出資や自己株買いの資金も必要だ。このバランスはあらかじめ決めているものではなく、キャッシュフローや株主の意見を参考にしながら、株主還元を強化していきたい。
株主総会の運営を改善してほしい
―― (経営陣に対して)皆さんの顔は笑顔でにこやかだが、株主に対する対応が他社と比べて雑ではないか。座ったままのあいさつや回答では、会社のアピールにならない。ほかでは、議長が回答者を指名したら、立って(株主に)こうべを垂れて説明をする。座ったままでは後ろから見えず(対応が)いい加減で曖昧だ。
また(入場が遅れ)株主が表に並んでいる状態なのに、時間になったから強引に開会するのは違うのではないか。
(NTTドコモは今回、株主・経営陣とも着席したまま発言するスタイルを採用した)
加藤社長 (従来のスタイルでは)形式張っていないか? という議論があった。リハーサルした中でこの方が率直なコミュニケーションができるとなり、今回からチャレンジした。発言者が分かりにくい点は反省し、挙手して氏名を申し上げてから発言している。また会場の画面にも映し出されるので、この形式で進めさせていただきたい。
(会場から拍手)
谷取締役 受付と入場に時間がかかってしまい大変申し訳ありません。できるだけスムーズに運営したいと思っており、次回は見直して参りたい。
―― 株主総会の事務局が(経営陣の)後ろにいると思うが、弁護士は入っているのか。
谷取締役 株主総会は適法に運営しなければならないため、弁護士にも来ていただいている。
―― 視覚障害者だが、業績をビデオで説明されても何も分からない。音声ガイドや点字の資料を用意してほしい。聴覚障害がある方には手話などで配慮が必要なのでは。
加藤社長 私どもが至らなかった。次回から工夫していきたい。できるだけ多くの株主様に出席していただき、コミュニケーションをしていきたい。運営方法を改めたい。ドコモのサービスでは、メールを読み上げるというものも用意している。
格安SIMで定額通話がないのはドコモのせい?
―― NTTコミュニケーションズのSIMカードを使っている。端末はヤマダ電機で買った。NTTコミュニケーションズによれば、(MVNO向けの)カケホーダイ料金をドコモが出してくれないという。こういうことはないようにお願いしたいが、あるのか、ないのか。
阿佐美取締役 MVNO様には、いろいろなバリエーションの料金体系でネットワークを提供している。現状(MVNO向けの)定額通話メニューはないが、自ら定額通話サービスを作って提供しているMVNOはある。MVNOが(回線を)仕入れた中で、いろいろ考えていただければと思う。
―― ドコモが邪魔しているのではなく、NTTコミュニケーションズがそういう(通話定額)料金体系を作ることも可能だ、ということか。
阿佐美取締役 その通りだ。
セキュリティ対策はどうなっている?
―― 「+d」としてサービスの拡大が見込まれているが、JTBやベネッセなど、会員情報の流出問題が起きている。セキュリティ対策について聞かせてほしい。
吉澤副社長 +dとして多くの企業とコラボレーションしており、サービスによっては顧客情報をやりとりしている。
委託先とは国の個人情報保護ガイドラインを元に、情報管理を徹底するようお互いに取り決めており、閲覧ログを残すといったセキュリティ対策がしっかり行われているのか、体制が万全であるのかを年に1~2回確認して管理している。
今回は非常に高度な標的型メール攻撃で、すぐに具体的な対処ができず甘さがあった。委託先の管理が行き届かず、さらに強化を進めたい。
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