「格安SIMに通話定額がないのはドコモのせい?」 ドコモ株主総会でも目立ったMVNOの広がり(3/4 ページ)
ドコモの株主総会で感じられた格安SIM/格安スマホの広がり。4年ぶりの増収増益を達成し、社長が交代するドコモの経営陣に、どんな質問が寄せられたのだろうか。
タスクフォースの影響は? 通信料金をもっと下げてほしい
―― 利益の中核になる通信料金の在り方について。年末に政府高官から料金値下げの発言があり、通信各社の株価が大幅に下落した。その後回復しているが、その影響は大きかった。それ以前から2年縛りや実質0円販売などが指摘され、特にドコモは政府の動向を受けやすい。
通信料金は民間企業として各社が自主的に決め、利用者の判断に委ねるべきもの。政府の人気取りに反発する必要もないし、無批判に従う必要もないと思う。
今後も政府などからの影響は続くと思うが、どのような方向で経営していくのか。事業計画の中でも利用者の拡大、収益の増大は説明されているが、具体的な方法を確認したい。
阿佐美取締役 総務省が通信料金の値下げに関するタスクフォースが立ち上げられ、その経緯はご質問の通り。家計における通信料金の割合が、ここ10年で2割上がっているという具体的な指摘もあった。それは、タブレットなど新たな端末が増えたこと、またコンテンツ購入やショッピングの支払代金も含めて請求しており、その結果、料金が上がっていると理解している。
タスクフォースでの議論は、消費者のご意見が集約され、提起されたと理解している。事業者としては、お客さまの声が集約されたものとして、真摯(しんし)に受け止めた。その結果、利用が少ない方向け、あるいは長期契約者向けの新しい料金体系をお示しした。原則は、事業者間の競争で切磋琢磨していくもの。タスクフォースの議論は利用者の声をまとめたもので、市場の声だと理解して対応している。
加藤社長 たくさんのお客さまに、長く使っていただきたい。長期利用の方にはできるだけ安く、と「ドコモずっと割」を用意した。かつ、ご家族で使ってもらえると使いやすく、データ量を分け合える料金も用意した。これをベースに、さらに便利で安価になるよう頑張りたい。
通信は中核中の中核事業で、料金は根幹。これを変更する、工夫する時は非常に慎重に検討しているつもり。とはいえ2014年度に新料金プラン(カケホーダイ&パケあえる)を開始し、中間決算で1200億円の下方修正をしたのは心の傷として残っている。大変なご迷惑をおかけし、反省している。
現在も回復途上にあるが、利用者の利便性と企業としての継続性を両立させることが、事業の根幹であると思う。これからもご叱咤、ご支援、ご理解をお願いしたいと思う。
(会場から拍手)
―― 質問というか要望だ。ガラケーからスマホに変える際、基本料金が急に高くなってしまい、買うのにちゅうちょした。いろいろな絡みもあると思うが、基本料金を下げると家計にも優しくなり、利用者がもっと増えるのではないか。
阿佐美取締役 低廉化に向けた取り組みはしっかりやっていると思っている。タスクフォースの議論を背景に、比較的利用が少ない人、フィーチャーフォン利用者にマッチする料金を用意した。
家族でデータ利用が少ない人向けの「シェアパック5」や5分以内の通話が定額の「カケホーダイライト」で、カケホーダイライトは組み合わせられるデータ料金の幅を広げた。6月からは長期利用者向けの「ずっとドコモ割」、2年契約の更新ごとにポイントを差し上げる「更新ありがとうポイント」なども取り組んでいる。
加藤社長 サービスの向上と低廉な料金の提供、そして事業の成長と、相反する面もあるが、これを進めていくのが経営の根幹。1700円で5分以内の通話がかけ放題になる新プランもある。料金プランについてはこれからも工夫していきたい。
サービスは家事をお手伝いするものや健康に関するものも作っていきたい。それらを支えるのがネットワークで、信頼性が高く、データ通信もサクサクとできなければならない。ネットワークは生き物で、油断できない。サービスを含めて当たり前に使えるよう、災害時対応も含めて努力していきたい。
米大統領選など、海外動向は事業リスクにつながる?
―― (都知事の)桝添さんがやめてもドコモの株価や配当に関係はないと思うが、英国のEU離脱問題や米国の新大統領など、収益や株価への大きなリスクになるのか。あるなら早く売りたい(笑)。会社が持っているリスクを教えてほしい。
坂井取締役 最近の株価は円高になると下がり、円安になると上がるということを繰り返している。ドコモ株も、為替市場や日経平均の影響を受けていると思うが、影響の受け方は少なくなった。年初来の動きは安定しており、上がる下がるを断言するのは難しいが、業績をできるだけ上げてダメージを小さくしたい。
加藤社長 事業リスクが全くないことはないが、自信を持って経営していきたい。EU離脱問題や米大統領選は世界経済全体に影響があることだと思うが、ドコモに直接的な影響はないだろうと思う。ただ、+dのパートナー企業に影響が出るところはあるかもしれない。
―― 配当性向(純利益に対する配当の割合)について。当期も増配だが(純利益も上がったため)配当性向は下がった。次期の利益目標では配当性向も46%程度に下がるのではないのか。なんとか50%を維持してほしい。
谷取締役 配当性向に目標は設置しておらず、1株あたりの配当を上げ続けていくことが重要と認識している。配当性向は上下するが、配当額は2011年度以降、右肩上がりなのでご理解いただきたい。
―― 海外事業の戦略について。上期の大きなトピックとして、インドからの撤退があるが、(株主総会の)招集通知に特段の記載がない。先ほど事業リスクへの質問でも、これには答えていない。2000億を超える金額の投資をし、大きな損失になると報道されている。投資と撤収の経緯を教えてほしい。
坂井副社長 2009年3月にインドのTATA(タタ)へ出資し、インドの携帯事業に参画した。ただインドは電波行政が混乱し、オークションで頂いた周波数を返却するなどの経緯があった。また業者が乱立し、過当競争に陥ったこともあり、2014年4月に撤退を決めた。そのため、2016年度の招集通知には記載していない。
現在、英国・ロンドンの国際仲裁裁判所に(TATAを)提訴し裁判を進めている。契約では撤退の条件として、もしTATAが所定の業績目標に達していない場合、出資金額の半分、または(ドコモが保有するTATA株を)公正価値のいずれか高い額で買い取るというものだった。ところがこの契約は実行されず、裁判に踏み切った。
裁判は2016年中には、なんらかの結論が出る見込み。結果は分からないが、今のところ、われわれの主張が認められるものと思っている。
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