強みは「コミュニケーション」 LINE Payのモバイル決済戦略を聞く:モバイル決済の裏側を聞く(1/3 ページ)
カードやスマホ画面のバーコードで決済ができる「LINE Pay」。まだ始まったばかりのサービスのような印象だが、「ゼロスタートではない」という。そんなLINE Payの戦略を長福久弘COOに聞いた。
日本に「アプリ決済」の市場が広がっている。アプリ決済とは、スマートフォン上のアプリを通じて決済を行う仕組みだ。NFCやFeliCaを使った決済手段とは異なり、あくまでアプリ上でアカウント情報を参照し、店舗やユーザー同士で通信を行うことで送金や決済を行う。相互通信は、オンライン上で相手を指定する、またはQRコードを使って対面のユーザー同士で直接やりとりを行うことで成立する。複数の手段が用意されている点が特徴といえるだろう。
アプリ決済でおそらく現在世界的に一番知名度が高いのは「Alipay(支付宝)」や「WeChat Pay(微信支付)」だが、先日紹介した「楽天ペイ」もその仲間となる。そして今回、メッセージングサービスで多くのユーザーを獲得している「LINE」のプラットフォーム上で、決済や金融方面の強化を進める「LINE Pay」の戦略について、同事業を率いるLINE Pay取締役COOの長福久弘氏に話を聞いた。
決済はコアなユーザー同士のコミュニケーション
昨今のトレンドとして「アプリ決済」のカテゴリーに含まれることの多いLINE Payだが、もともとはWeb決済から始まったサービスだ。後にJCBとの提携でLINE Payカードを発行し、リアルな店舗を含めた「カード決済」の分野に進出した。
LINE Payカードのメリットの1つは、従来ならクレジットカードの取得が難しい若年層にカード決済の裾野を広げた点にある。もともと若年層を中心にユーザーが広がっているLINEの特性も生かし、パートナーとなったJCBやその加盟店、そして他ならぬLINE自身にも利用層の拡大という恩恵をもたらすことになった。
では、直近はどのような戦略なのか。「ここ2年くらい、中国でのAilpayとWeChat Payに代表されるようなモバイル決済が普及していることもあり、われわれも(LINE Payで)2017年から2018年にかけて、モバイル決済に大きくかじを切っていこうとしている」と同氏はLINEの決済戦略について説明する。
日本でも2017年から2018年にかけて、急にこうしたQRコードを使った「モバイル決済」が話題になった印象があるが、この点について長福氏は「流れだと思っている」と言う。「中国でも2年くらいで大きな盛り上がりを見せた。日本では政府による銀行のオープン化の話の他、2020年に開催される東京五輪を目標にしたキャッシュレスの実現など、いろいろな要素が重なって2017年や2018年がモバイル決済の始まりとなるだろう」というのが同氏の見解だ。
この指摘にもあるように、2017年から2018年にかけて中国だけでなく日本でもアプリ決済の機運が盛り上がり、多くのサービスが雨後のタケノコのように出現して互いの商圏を拡大している。その中でLINEの強みについて長福氏は「ゼロスタートではない」という点を強調する。
もともと「メッセージング」というコミュニケーション型サービスを出自とするLINEでは、「決済はコミュニケーションの1つ」という形でLINE Payはスタートした。もっとも、当初のサービスとはだいぶ内容も変化しているが、「人と人、人とサービスの距離を縮める」という企業ビジョンにのっとったコンセプトは変化していない。
登録ユーザー数も現時点で3000万人を突破しており、各種キャンペーンに連動した増減はあるものの、アクティブ率は2017年対比でかなり伸びているという。LINEはここ数年LINE Payカードに注力しており、2%のポイント還元も寄与して母数が拡大した印象だ。また2017年後半からはモバイル決済向けのキャンペーンも拡大し、今後の伸びが期待される。まだまだ数としては増えてくると同氏は分析する。
一方で、ユーザー数の母数増加とともに、それを実際の市場規模拡大に結び付けるには、LINE Payが使える店舗の拡大も必要だ。QRコードによるモバイル決済は、既にローソンを皮切りに、札幌のツルハドラッグ、ロフト、ワタミといったチェーンでの導入が進んでいる。
インタビュー時点では店舗名を明言しなかったものの、今後も大手を中心に一気に導入店舗拡大の流れにあるという。実際、大手でいえばインバウンドの恩恵を受けている店舗ではどこも検討自体は進めており、中国人の旅行客向けにはAlipayやWeChat Payを導入する一方で、日本人向けのサービスとして何を提供するのかを考えたとき、LINE Payがその候補となるという流れだ。大手はPOSレジの改修で対応するものの、中小や個人商店ではAirレジとの提携を生かしてQRコード決済の裾野を広げていく。
「ライバル各社が数十万や5万という対応店舗を掲げる中で、LINE Payでは100万店舗という導入目標を掲げている。大きな目標と言われるかもしれないが、LINEでは『LINEビジネスパートナーズ』の名目で『LINE@』という企業向けアカウントサービスを提供しており、このアカウントが既に30万ほど存在する。さらに同サービスの審査に通っていない企業の一般アカウントも含めれば、契約形態としては既に大規模なものだ」(長福氏)
【更新:2018年2月14日19時30分 初出時に掲載していたLINE Payを利用できる店舗の画像は、LINE Payカードの場合だったため、LINE Pay QRコード/バーコードを利用できる店舗の画像を追加しました】
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