楽天・三木谷社長が「設備投資は6000億円で充分」と強気発言――設備投資4400億円のイー・アクセスは第4の携帯電話会社になれず:石川温のスマホ業界新聞
楽天の三木谷浩史CEOが、2017年度通期決算説明会で、参入を予定している携帯電話事業の設備投資計画に言及。「設備投資は6000億円で充分」と語る三木谷CEOだが、5Gの足音が聞こえてくる中、その投資額で本当に大手3社に対抗できるネットワークを構築できるのだろうか。
楽天は2月13日に決算会見を実施。そのなかで、三木谷浩史CEOが参入を予定している携帯電話事業の設備投資計画に言及した(筆者は海外取材中だったため、決算資料やITmediaなどの記事を参照)。
KDDIの田中孝司社長が「その金額で設備投資がまかなえるほど通信事業は甘くない」と語るなか、三木谷社長は「3Gには対応せず、4Gのみを提供することでコストを抑える。かつて、イー・アクセスやUQコミュニケーションズの設備投資額は4000~5000億円だった」と語ったという。
この記事について
この記事は、毎週土曜日に配信されているメールマガジン「石川温のスマホ業界新聞」から、一部を転載したものです。今回の記事は2018年2月17日に配信されたものです。メールマガジン購読(月額540円・税込)の申し込みはこちらから。
三木谷社長のこの発言こそ、6000億円では足りないことを示唆しているのではないか。
時代は4Gから5Gに移ろうとしている。楽天が4Gのみのネットワークを提供したところで、2020年から5Gをはじめようとする大手3社には対抗できなくなる。
当然、iPhoneなどの端末も5G対応してくるだろう。スマホで当たり前のように5Gが使える中、ユーザーにとって4Gしか使えないキャリアを選ぶという選択肢はない。4GでもギガビットLTEとして、5Gに肩を並べる通信速度も実現できるが、それは周波数帯をいくつも重ね合わせるからこそ、実現できるというものだ。当初の楽天におけるネットワークでは、ギガビットLTEの実現も難しいのではないか。
もうひとつ「イー・アクセスやUQコミュニケーションズは4000~5000億円だった」という発言。イー・アクセスは、この金額では足りず、ユーザーに満足なネットワーク環境を提供できなかったからこそ、市場から消滅してしまったのではないか。この金額で充分で、全国規模のネットワークを構築し、音声通話サービスも問題なく提供できてたら、ソフトバンクに買収されることはなかっただろう。
イー・アクセスは1.7GHzを軸にサービスを提供したが、それでは品質面では満足できず、やはりプラチナバンドである700MHzを欲しがった。プラチナバンドのない楽天もイー・アクセスの二の舞になる可能性が極めて高い。
UQコミュニケーションズも「KDDIからLTEのネットワークを借りる」という荒技で、全国網を構築している。結局、5000億円程度の設備投資では、全く足りないのだ。
三木谷社長は「すでに様々なベンダーから見積や提案を受けている。MNOで働いた経験のある人を多く採用している」というが、誰か三木谷社長を止める人はいないのか。
関連キーワード
三木谷浩史 | 楽天 | 石川温のスマホ業界新聞
関連記事
楽天が携帯キャリア事業参入を表明 2019年中のサービス開始を目指す
楽天が携帯キャリア(MNO)事業への参入を正式に表明した。総務省が2018年3月末頃に行う「1.7GHz帯」「3.4GHz帯」の電波の割り当てを前提に、2019年中のサービス開始を目指す。楽天モバイルが仙台にYogiboコラボ店をオープン 今後の店舗展開は?
楽天モバイルが2018年2月21日に「楽天モバイル 仙台駅前」をオープン。これに合わせて、今後の店舗展開についての方針を発表した。今後は専門店や量販店などの店舗を強化していく方針だ。「楽天でんわ かけ放題」、2月28日でサービス終了 3月から自動で従量課金に
楽天が「楽天モバイル」向けに提供している「かけ放題」サービスを、2月28日で終了する。3月からは自動で従量課金になる。「5分かけ放題」は引き続き利用できる。楽天、プリペイドSIM&訪日観光客向け観光アプリ「J-TripGateway」 コンテンツ閲覧で通信量を無料追加
楽天コミュニケーションズは、1月22日にプリペイドSIMとスマートフォンアプリを合わせたサービス「J-TripGateway」を提供開始。アプリ内のコンテンツを訪日中に利用・閲覧すると、通信容量を無料で追加できる。楽天が6000億円で、携帯電話事業に本格参入――5年前、イー・モバイル買収なら1800億円で済んだのに
楽天が通信設備を持つ「MNO」として名乗りを上げることを決めた。より柔軟なサービス設計を実現するための選択だと思われるが、いろいろな意味で“遅きに失した”印象がある。
関連リンク
© DWANGO Co., Ltd.