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「+メッセージ」の本質は“LINE対抗”ではない? 大化けに必要な道筋

「+メッセージ」発表時には「LINE対抗」という触れ込みでの報道が多く見られた。一方で、+メッセージがベースとするRCSのポテンシャルは“法人利用”にあるという。具体的には「企業と顧客の間のコミュニケーション」だ。

 NTTドコモ、KDDI、ソフトバンクの3キャリアが、足並みをそろえて5月9日に提供を開始した「+メッセージ」。3キャリア共通のメッセージサービスで、電話番号だけでやりとりできるのが特徴だ。


3キャリアが提供する「+メッセージ」。SMSの後継規格「RCS」の一部仕様に準拠している

 SMSの進化版として紹介され、画像や動画、スタンプなどのコミュニケーションも送れるという内容も手伝ってか、発表時には「LINE対抗」という触れ込みでの報道が多く見られた。


海外で提供されているRCSは、企業がユーザーとコンタクトを取る手段としても使われている

 一方で、+メッセージがベースとするRCSのポテンシャルは“法人利用”にあるという。6月14日、SMS配信サービスを手掛けるAOSモバイルと、メールを利用したマーケティングプラットフォームを提供するエイジアが開催したセミナー「SMSのリッチ化でマーケティングはこう変わる ―海外SMS事情から読み解く国内でのSMS活用術とは?―」からRCSの今後を探る。

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急速に拡大するRCS

 +メッセージは、GSMAが定めるメッセージサービスの国際規格「RCS(Rich Communication Services)」の一部規格に準拠している。

 このRCSは、SMSの最大70文字という制限を取り払った上で、見た目をチャットアプリのようにブラッシュアップしたもの。2018年初から世界各国でキャリアによる採用が急速に進んでおり、将来的にはSMSの代替になるとみられている。

 現在の+メッセージはRCSの一部仕様のみを取り入れたもので、用途は「個人対個人のコミュニケーション」に制限されている。一方、RCSにはもう1つの用途がある。それが、「企業と顧客の間のコミュニケーション」だ。

 RCSの規格では、企業が顧客(会員)とやりとりするための仕様が「RCS Business Messaging」としてまとめられている。RCS Business Messagingは、米国など海外では既に導入されており、サンドイッチの注文や航空券の登場案内といった用途にRCSを活用した事例が登場している。

 特徴は、対話型のユーザーインタフェースを使えること。サンドイッチ店の例ではユーザーが選んだサンドイッチをカスタマイズするメニューがボタンで一覧表示される。表示されるボタンを順番に選んでいくだけで、サンドイッチの注文メニューが作成される。


Subwayが米国などで展開するサンドイッチ注文サービス。RCSを活用し、専用アプリを追加することなく利用できる

 企業ごとにテーマカラーやアイコンを設定できるなど、デザイン性が高いのも特徴だ。また、送付元の認証機能も備えており、迷惑メッセージとの区別が付けやすくなっている。


RCS Business Messagingで機能追加されたポイント

同じコンテンツの表示もSMSより見やすく表示できる。海外のある事例ではRCS化により開封率が10%近く改善されたという

RCSの導入で「電話番号」の価値が向上か

 日本で展開している「+メッセージ」は現状、RCS Business Messagingに対応しておらず、利用できるデバイスも3キャリアが提供するスマートフォンに限定されている。加えて、外部サービスと連携するAPIも公開されておらず、法人向けの配信では利用できない状況だ。


RCS Business Messagingの日本展開は携帯キャリアの対応待ちの状況。AOSモバイルはGSMAに加入し、将来の対応に向けた準備を進めているという

 AOSモバイル CTOの鈴木聡氏は、今後RCS Business Messagingに対応した場合、「+メッセージは大化けする可能性がある」と期待を寄せる。「電話番号さえ知り、受信許諾を得れば、誰にでも送信できる」というSMSの特性を備えつつ、表現力の高さから、プロモーションツールとしての利用が急増するだろうという見方だ。

 +メッセージは、3キャリア共通の新メッセージサービスとして登場したが、ソフトバンクではトラブルが発生し、提供が一時中断となっている。前途多難な同サービスだが、その真価を問われるのは法人向けに本格対応したタイミングかもしれない。

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