MVNOが生き残るために必要なことは? ジャーナリストとIIJ中の人が徹底討論:IIJmio meeting 20(3/3 ページ)
IIJが、20回目となるファンミーティング「IIJmio meeting 20」を7月14日に東京で開催した。「ジャーナリストが本音で語る、MVNOここだけの話」というテーマで、トークセッションを実施。業界動向、通信品質、料金・サービストレンドについて語り合った。
IIJのフルMVNOサービスはどうなる?
IIJがフルMVNOに参入したことは、2018年上半期のMVNOサービスの大きなトピックだ。主に法人向けサービスだが、回線の開通や停止が自由にできることでコストを下げることができ、海外事業者との接続やローミングに関して新しい技術が生まれることも期待されている。eSIMやIoT向けの通信で、これまでのMVNOができなかった新しいビジネスを切り開いていけるというメリットもある。コンシューマー向けでは、「Japan Travel SIM」のフルMVNO版が発売され、業界内で使う人が続出した。
フルMVNO版のJapan Travel SIMは、「SIMを挿すだけですぐ使えるようになることや、オフィシャルには言っていませんが、iOSだとAPNを入力しなくてもつながること、アクティベーションが簡単なことが新鮮」と石野氏。ドコモ版に比べて値段が安いことも魅力で、「訪日外国人観光客向けSIMカードの決定版になる」と太鼓判を押した。
石川氏は、「IIJにはSIMカードを日本中、世界中にばらまいてほしい。業界全体を盛り上げる意味でも、SIMカードがもっと認知されるようなばらまき方をしてほしい」と語った。
太田氏は、IoTや組み込み用、eSIMにも期待。なお当日は、会場にeSIM内蔵の「Surface Pro LTE Advanced」が展示され、IIJのプロファイルをダウンロードしてアクティベートし、データ通信ができる状態になるというデモが行われていた。
石野氏は国際ローミング対応への期待も語った。「現地でSIMを買うのはハードルが高い。特に中国でデータローミングができず、現地のSIMを買ったら金盾のせいでTwitterを利用できないというトラブルに遭う人がいる」(石野氏)
それに対し佐々木氏は、「国際ローミングに関しては、そもそもビジネスが全くなく、制度も何もない。借りるに借りられない。交渉の爪が引っかからないので、提供できないという形」とMVNOの現状を説明。その上で、IIJのフルMVNOで国際ローミングは、SIMカードの自由化とともに大きな柱の1つだが、サービス提供は少し先の話になるとした。
「eSIMはロマン。ありとあらゆる携帯電話のビジネスモデルが、全部ご破産になるくらいの破壊力を持っていると思っている。4年先、5年先の世界だと思うが、サービスが登場してきたときに、IIJはこういうことを見据えてやっていたんだと思ってほしい」(佐々木氏)
MVNOが生き残るためには?
最後に、今後、MVNOが生き残るために必要なことが提言された。
石川氏は、「手っ取り早いのはMNOと一緒になること」と大胆な発言。しかし、「一緒になると、MNOに対して忖度(そんたく)し、個性がなくなり面白くなくなる。サブブランドやキャリア系MVNOの人に会っても、目が死んでいる」と決して勧めているわけではない。それよりも「MVNOはリスクを取る必要がある」と語る。「IIJはフルMVNO化することで、コストをかけてかなりリスクを取っている。あるいはリスクを取った上で、いろんなパートナーと組む。マルチキャリア展開になれば、複数から調達することで、別の調達の仕方も生まれる。サービス面でもパートナーと組むことで生き残る道が探れる」
石野氏は「少なくとも現在、シェア上位のところはそんなに簡単にだめにならないと思う」とし「今のように差別化を図りつつ、サービスを多様化させていけば大丈夫だと思う」と語った。「いろいろな差別化の仕方があると思う。その中で、ユーザーにちゃんと選ばれるものを出していくことが大事。料金一辺倒ではなく、少し違う方向に行くといいなと思う」
太田氏は、ターゲットを絞って満足度を高めるやり方を勧めた。「小さいMVNOは、ある程度ターゲットを絞ることが必要。小さなISPでも残っているところはたくさんある。特色を出してターゲットを絞りつつ、しっかりコミュニケーションして満足度を高めていけば、共存共栄できるのではないか」
佐々木氏は「MNOと一緒になることは、ばかにできない選択肢」と言う。一緒になるというよりは、「MNOと利害が一致するところでは、一緒になってやっていく」という考えだ。例えば5GやIoT、国際ローミングなどで、「MNOとMVNOの間で利害一致するところがあれば、一緒にそこを盛り上げていく。MNOをうまく利用し、新しい価値を作っていく。そこが僕らの腕の見せどころ。総務省に甘えているだけではなく、自らリスクを取って、次のステージを目指して戦っていくことができるといいと思っている」
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