iPhoneを扱えない事情も MVNOとSIMフリースマホの関係:MVNOの深イイ話(2/3 ページ)
MVNOの多くは、通信サービスとセットでスマートフォンの本体も販売しています。そのスマホのほとんどは「SIMロックフリー」です。今回はSIMロックフリースマホにまつわるあれこれを取り上げてみたいと思います。
MVNOオリジナルのスマホ
メーカー主導で企画・販売される日本のSIMロックフリースマホは、基本的にはどの販路でも同一の仕様のものが販売されます。ですが、中には特定のMVNOや販路限定のモデルというものも存在します。
限定モデルを扱っているMVNOの中でも特徴的なのは、UQ mobileを展開するUQコミュニケーションズでしょう。UQ mobileでは、日本でも多数の販路で販売されていた「HUAWEI P9 lite」の自社限定モデルとして、「P9 lite PREMIUM」を発売しました。この機種はスマホの中心的な部品であるプロセッサ(SoC)を標準品とは別メーカーのものに交換しており、外装はともかく中身は別物に近いアレンジが行われています。
こうしたハードウェアの変更を伴うオリジナルモデルは、製造ラインの都合からある程度の台数を販売できる見込みが必要になります。UQ mobileはKDDIグループにおけるauのサブブランドMVNOという立場もありますが、UQ WiMAX事業では自社で基地局を持ち、独自の端末を販売するキャリアでもあります。どちらかというと、これらの端末はキャリアのスマホに近い位置付けなのかもしれません。
最近のスマホ向けプロセッサは、同じメーカーから性能に差をつけた系列モデルが用意されているケースが多く、その場合、系列モデル内でプロセッサを交換することで、比較的簡単に性能違いのスマホを作れる場合もあります。
例えば、「ASUS ZenFone 4 カスタマイズモデル」は、標準品のZenFone 4に対しダウングレードしたプロセッサを利用し、メモリも減らした廉価版です。標準のZenFone 4は当時としては高性能なスマホでしたが、その分価格も高め(発売時に税別5万6800円)でした。ほどほどの性能にダウングレードした廉価版を用意することで、予算に合わせて機種を選べるようにしたものです。
ちなみにこのZenFone 4 カスタマイズモデル、実はIIJが発注した独自モデルでした(※)。そのため、製品の型番にも「ZE554KL-64S4I」と、IIJを示す"I"が最後に追加されています(この機種はIIJmio以外のいくつかの販路でも取り扱われていますが、これらはIIJから商品を提供しています)。
ここまで手をかけた限定モデルではなく、外装などによる簡単なアレンジが行われる場合もあります。富士通コネクテッドテクノロジーズの「arrows M04」は、メーカーが外装を変更可能なオプションを用意していたため、多数の販路で限定色が発売されました。このときは、希望の本体色のためにMVNOの乗り換えを検討するといった話題も耳にしていました。
少し変わった例として、トーンモバイルの「TONE m17」という機種もあります。トーンモバイルは自社専用のスマホを提供する垂直統合モデルとして、他のMVNOとは少し違う路線を志向しています。TONE m17でも、ハードウェアの仕様は富士通コネクテッドテクノロジーズが開発するarrows M04とほぼ同様ですが、外装だけでなくソフトウェアがトーンモバイル仕様にアレンジされ、トーンモバイルが提供するサービスとの連携が図られていました。
比較的軽微な変更として、出荷時に搭載されているプリインストールアプリを独自に追加することもあります。例えば、楽天が販売している幾つかかのスマホには、楽天関連のアプリがインストールされた状態で出荷されています。
このようなアプリのプリインストールは、機種や販路によって異なる工程で行われることがあります。
1つは、あらかじめアプリを搭載したファームウェアをメーカーが用意し、別製品としてメーカーがスマホを製造する方法です。ファームウェアにアプリを搭載しておくと、スマホを初期化した場合でもアプリが消えることはないため、再インストールの手間などが省けます。しかし、標準品と異なる専用のファームウェアを制作し、OSのアップデートに合わせて更新し続ける必要があるため、その維持のためのコストが必要になります。
もう1つは、メーカーの出荷時にアプリをインストールする方法です。メーカーによってはインストール時にアプリや壁紙などを独自のものに入れ替えるサービスを提供している場合があり、そういったサービスを利用することで独自アプリが搭載されたモデルを提供できます。ただ、あくまで標準品にアプリをインストールしただけなので、スマホを初期化するとアプリが消えてしまいます。
また、メーカーでインストール作業ができない場合は、メーカー標準品として出荷後、一度パッケージを開けてアプリをインストールし、通信設定を行って再出荷するという場合もあります。これはMVNOや販売店が行うこともあれば、物流業者が作業を代行する場合もあります。
この方式の場合、作業のために梱包(こんぽう)に施された未開封を示す封印を破る必要があるため、「新品」状態のままユーザーの手元に届けられないというデメリットがあります。ですが、スマホ1台ごとにオプションの契約内容に合わせてライセンスを登録したり、同時にSIMカードの取り付けを行ったりと、各ユーザーに合わせた対応が可能になります。
このように、メーカー主導で企画、販売されるSIMロックフリースマホについても、各販路でオリジナリティーを出すためにさまざまな取り組みが行われています。
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