「iPhone XR」は「XS」よりオススメ 使い比べた結論:本田雅一のクロスオーバーデジタル(3/4 ページ)
2018年の「iPhone X」ファミリーを使い比べて感じたのは、「フル機能のiPhoneはXSシリーズだが、個人的に購入するならばXRを選ぶだろう。また、どのiPhoneを選ぶか迷っている人がいるならば、まずはXRをすすめる」ということだ。
アウトカメラ(広角側)の基本性能は同じ
念のため確認しておくと、iPhone XRのアウトカメラはiPhone XS/XS Maxの広角側カメラと同じである。内蔵センサーの画素ピッチは1.2μmから1.4μmに拡大されており、テストで撮影した薄暗い夕暮れ時の街でもS/Nのよいスッキリした、そして解像感や奥行きもしっかり感じられる写真が得られた(撮影サンプルは後述)。
左からiPhone XS、iPhone XR、iPhone XS Maxの背面。iPhone XRのアウトカメラはシングルだ。ここもデュアルカメラのiPhone XSシリーズと大きく違う部分だが、広角側カメラのスペックは同じ
iPhoneのカメラは、スマートフォンのカメラとしては場の雰囲気を程よく残してホワイトバランスや明暗のトーンがマッピングされる。そうした意味ではHuaweiの端末とは真逆で、照明環境がよくない場合(例えば、複雑なミックス光でホワイトバランスが取りにくい場合など)は、パッとしない絵となることもある。
しかし、そうした面も含め、現実感を伴いつつ、しかし恐らくは機械学習モデルを活用いているだろう画像処理で、いかにも写真らしい写真をたたき出してくれるのは、iPhone XS/XS Maxと同じだ。広角で使っている限り、差を感じることは一切なかった。
ということで、明らかな違いは望遠側カメラがないため、望遠時の解像力が落ちることと、視差による深度検出ができないことの2点だが、後者は実際には利点となる場合もある。
筆者の場合、26mm相当の広角レンズでは歪みが気になるような、被写体に寄りつつも全体のパースが自然に見えてほしいときなど、主に写真の構図を考えながら、広角か望遠かを選び、歪曲歪みが少ない方がよいと思う場合に「2x」ボタンをタップして望遠側カメラに切り替えている(もちろん、遠くの被写体のときにも使うことはあるが)。
26mmとかなりの広角であることを考えると、近接での歪みは気になることは気になるが、普段から広角ばかりを使っているのであれば、特に気にならないレベルだろう。望遠側カメラがなければないなりにフレーミングすればよい。
一方、視差検出が行えず深度を測れない問題に関しては、人物撮影に限るとiPhone XRの方が筆者好みの結果を引き出せる。広角レンズのままでポートレードモードによる背景をボカしたり、ライティング効果を与えたりした撮影ができるためだ。
被写体として人物しか想定していないため、人物を適度なサイズで捉え、認識しているときのみしか機能しない(食べ物などの物体では効果が得られない)という制約はあるものの、フレーミングの自由度が高いのだ。
「iPhone X時代より進化した?」ように見える切り抜き精度
アウトカメラが視差検知可能な2眼となった「iPhone 7 Plus」で搭載されたポートレードモードは、背景をボカすところから始まり、照明効果を与える「ポートレートライティングモード」が「iPhone 8 Plus」で追加された。そしてその後、iPhone Xで顔の形状を認識するFace ID用センサーと連動してインカメラでも利用可能になった。
いずれも被写体への距離、すなわち「深度」を検出する何らかの方法があったからこそ実現していたもので、iPhone XRもFace ID用センサーと連動してインカメラ(Appleは「TrueDepthカメラ」と呼ぶ)ではそのまま利用可能だ。
では、奥行きを認識する手段がない単眼のアウトカメラで、どのようにしてポートレードモードが利用できるようになるのだろう。
ここで使われるのがニューラルネットワーク処理だ。被写体の形状や背景との分離をニューラルネットワークを用いたアルゴリズムと機械学習で鍛えたモデル演算で画像処理を行うことで、まるで立体物を認識しているかのような画像処理が施される。
すなわち、A12 Bionicがあるからこそ実現できた(のではないか)という部分で、テストでも手のひらを広げたり、親指と人差し指で輪を作るなど、背景を切り抜きにくそうな状況を作りながら撮影してみた。
すると、iPhone Xでデュアルカメラを使っているにもかかわらず背景分離に失敗することが多かったシーン(手のひらを広げた撮影など)でも、かなりの高確率で自然な被写体の分離が行えた。
Appleも絶対の自信はないのだろう。iPhone XRのアウトカメラは、iPhone XS/XS Maxのような顔以外を暗くする「ステージ照明」「ステージ照明(モノ)」の効果は利用できないが、「スタジオ照明」と「輪郭強調照明」は利用できる。
もちろん、肩にかかる髪の毛から透ける背景など、分離が難しい部分では、よく見ると不自然なところもあるのだが、「絵全体を見た印象」でいえば十分。むしろiPhone Xよりもキレイに抜けるときもある。
また、ポートレートモードでも26mm相当の画角が維持されるので、カフェなどで向かい合った人物を撮影したり、あるいは背景をある程度写し込みながら構図を決めたりするときなど、「いかにもな人物写真以外」を撮りたいときには、iPhone XRの方が断然楽ちんだ。
ちなみに、機械学習モデルを用いることで、単眼カメラでボケ味を出す機能はGoogleの「Pixel 2」が最初に組み込み、「Pixel 3」ではさらに磨き込まれている。将来的にはiPhone XRとPixel 3の「ボケ味対決」も興味深いところだ。
インカメラを用いた自撮りも含め、作例を置いておくので確認していただきたい。撮影にはプロフォトグラファーの片岡三果さんに協力いただいたが、iPhone 7を使用中の彼女も、iPhone XRのインカメラ画質、ポートレートモード、それに暗所性能や風景を撮影した際の発色に驚いていた。
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