CESで話題に事欠かなかった「5G」。実は「期待はずれ」――T-Mobileが600MHzで5Gエリア展開するのはアリなのか:石川温のスマホ業界新聞
主に3.5GHz以上の周波数帯と30GHz以上の「ミリ波」で実験や実用化が進んでいる「5G」しかし米国のT-Mobile USは“600MHz帯”という低い周波数帯で実証実験を進めている。米国の他2社と異なる方針は、「なんちゃって5G」につながる可能性も否定できない。
今年のCES、目玉は「5G」だと思って、鼻息荒くラスベガス入りした。
しかし、結果は「期待はずれ」。ここまで何もないとは思わなかった。
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この記事は、毎週土曜日に配信されているメールマガジン「石川温のスマホ業界新聞」から、一部を転載したものです。今回の記事は2019年1月12日に配信されたものです。メールマガジン購読(月額540円・税込)の申し込みはこちらから。
実際のところ、会場内では「5G」を掲げるブースも多く、基調講演や記者会見などで5Gを取り上げるところも多かった。話題性という意味では、5Gが盛り上がっていたのだが、肝心の製品やサービス、ソリューションの具体的で目新しい展示が全くなかったのだ。
唯一、きちんと5Gに関する展示を行っていたのが、クアルコムだ。中国メーカーの5Gスマホのプロトタイプを並べ、しかも記者会見では「2019年に30機種以上の5Gスマホが登場する」と明言した。インテルやファーウェイも5Gチップセットを手がけているはずだが、いずれも製品に関する展示はなかった。
アメリカでは2019年前半にベライゾンとAT&Tが5Gサービスを始める予定だが、両社ともCESで5G関連の目立った展示は行っておらず、まさに「期待はずれ」に終わってしまった感がある。
そんななか、T-Mobile USが5Gに興味深い展示をしていた。
彼らは、600MHz帯で5Gの電波を吹くというデモをアピール。ミリ波に比べ、一つの基地局で圧倒的に広いエリアをカバーできると訴求していたのだ。ほかにも、ミリ波では窓を閉めただけで電波が弱くなるとしており「家の中までカバーするなら600MHz帯だ」と言いたいようなのだ。
確かに28GHzなどでは、数百メートル程度しかカバーできず、スマホの前に人が立つだけで電波が入らないなど、どこまで実用的なのか、かなり微妙な感じがしている。
その点においては600MHz帯で5Gが提供できれば、アメリカでも一気にエリアをカバーできることになる。
しかし、1つの基地局で、広大なエリアをカバーするとなると、当然、それぞれの端末のスピードは遅くなるし、遅延も発生することだろう。600MHzで、世間が期待する5Gのスペックを提供できるかはかなり怪しいはずだ。
ただ、この流れで行くと、T-Mobileは、他社に先駆けて「エリアの広い5G」をアピールしてくるのではないか。かつて、HSPA+にも関わらず「4G」を名乗り出し、アメリカでは各社が「なんちゃって4G」を訴求しはじめた状況がまたやってくるのではないか。
「5Gはピンポイントで使う」というのがキャリアのなんとなくの共通認識であったが、T-Mobileがこのような動きをしてきただけに、他のキャリアも「5Gをプラチナバンドでいち早く全国展開する」という流れに付き合わされることになるかもしれない。
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