IIJはなぜ音声特化の「ケータイプラン」を提供するのか? 「eSIM」とのつながりも:MVNOに聞く(2/3 ページ)
IIJmioが、音声通話とSMSに特化した「ケータイプラン」を2月1日に開始した。データ通信が主流のMVNOで、なぜあえて音声通話向けのSIMを提供したのか? そこには、サービスインを控えるeSIMとの、隠れたつながりもあるという。
「着信専用でちょっとだけ話す人」向け
―― 通話料が30秒20円、みおふぉんダイアルを使うと30秒10円です。場合によっては、ドコモのカケホーダイライトの方が安くなることもありますが、少し安めにするということはしなかったのでしょうか。
矢吹氏 自分からはほとんど通話をせず、着信専用でちょっとだけ話すというイメージを描いていました。通話でガンガン使いたいときは、別のプランを買っていただいた方がいいかもしれません。
―― 通話定額は使えますよね。
佐々木 はい。使えます。3分以内や10分以内の通話が多い方は、通話定額を契約するのはありだと思います。スマートフォンだったらアプリを入れるだけですし、ガラホ(Androidベースのフィーチャーフォン)の中にもプレフィックスを設定できるものがあります。
―― ベースの通話料ですが、これはMNOからの卸料金をベースにした金額だと思います。今、総務省ではこの値下げについても議論されていますが、それが実現した際には、料金が下がるのでしょうか。
矢吹氏 通話料のところはアグレッシブに変えていけるので、下がればそのまま反映はしていきたい。ただ、大きい時代の流れとして、だんだん電話を使わない方向にはなっています。
佐々木氏 今は、そもそも請求金額を細かく決めることが非常に難しい。ドコモさん(とKDDI)からはIIJの全ユーザーの明細をもらえますが、そこに書いてある金額がベースになります。それをわれわれが独自で15秒単位で課金できるかというと、難しい。より細かく設定しようと思うと、もっと裸に近いログが必要になります。それがないので、他のMVNOも変えていないのだと思います。
ここで競争するとなると、もっと細かいログや加工可能なログをくださいということになりますが、そこまでできるかというと難しいのではないかと思います。もちろん、家族だけを安くするのはわれわれもやっていますが、これは非常に複雑なログの中から一部だけを切り取って安くしています。
コンシューマー向けのeSIMサービスも
―― ケータイプランがeSIMを想定してのものというのは意外でした。こちらに関しては、現状どのようになっていますか。
矢吹氏 技術的には動くので、今はロールアウトの準備段階です。対応端末はまだそれほど多くないので、春商戦が落ち着いてからですね。優先順位もあるので、夏ぐらいにはリリースしたいと思います。
―― コンシューマー向けを出されるのが少々意外でした。フルMVNOの一環として、法人向けが中心かと思っていたので。
矢吹氏 そこは、対応デバイスの数だと思います。eSIM対応のチップが積まれれば積まれるほど、僕らのチャンスは広がります。デバイスも法人需要に耐えられるものが出てくればいつでも出せますが、これは僕らが思っていたより若干動きが遅いですね。
佐々木氏 iPhoneはサプライズに近い形でしたが、それ以降に企画され、2019年後半ぐらいに出るAndroidのハイエンドモデルにも、搭載されることになると期待しています。当然、iPhoneも次機種以降でも搭載してくると思いますが、一気にブレークするかといえばそうではありません。eSIMは契約の仕方もガラッと変えてしまうので、やはりキャリアも慎重に見ていますからね。当たり前のようになるのはもう少し先で、IIJも、最初はeSIMと聞くとワクワクする人たちにお届けするビジネスになると思います。
―― eSIMと聞くとワクワクする人(笑)。ちなみに、料金はいかがですか。
矢吹氏 基本的には、あまりいじるつもりはありません。キャンペーン的に何かすることはあると思いますが、まずはテクノロジーを普及させることが第一で、すごくアグレッシブな何かというより、面白いものが出てきたという打ち出しを考えています。
佐々木氏 eSIMとプラスチックSIMで原価構造が変わることはないですからね。ただし、1つあるのは、今だとSIMカードを物理的にデリバリーしていて、宅配便の費用などもかかりますが、そういったところで納得していただきやすい考え方は取り入れていきます。また、普及期に入ってからにはなると思いますが、デリバリーコストを下げることで、超短期プランや時間プランなど、eSIMの特性を生かしたものも長期的にはできると思います。今だと1日だけお使いいただきたい方にSIMをお届けするのが難しいですからね。そのためにも、まずは経験値をためるためにやっていきます。
矢吹氏 例えば、今も大規模災害が起こると1GBのクーポンを提供するというようなことをやっていますが、これがeSIMになると臨時で回線を提供するようなこともできるようになります。臨時の社会インフラを作りやすくなるというのも、eSIMのメリットだと思います。
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