「人材開発」が発祥!? ソフトバンクのRPAはこうして生まれた(1/4 ページ)
SynchRoid(シンクロイド)というRPAソリューションを法人に販売しているソフトバンク。このSynchRoid、元々は自社内で使うために開発してきたものだという。担当者に話を聞いてみると、RPAに取り組む意外な背景が見えてきた。
昨今、企業の業務を効率化する手段の1つとして「RPA(Robotic Process Automation)」が注目されている。RPAは、自動進行するソフトウェアロボットに業務を代行してもらう、というソリューションの1つだ。
RPAソリューションを提供するベンダーは複数ある。通信キャリアのソフトバンクもその1社で、「SynchRoid(シンクロイド)」というRPAソリューションを法人向けに販売している。
このSynchRoidは他のRPAソリューションとは「生まれ」が違う――そんな話を耳にした筆者は、ソフトバンクに取材を依頼。SynchRoid事業を担当するプロセスマネジメント本部の木村信幸担当部長から話を伺った。
生まれたきっかけは2015年の「Half & Twice」
SynchRoidが生まれたきっかけは、ソフトバンク社内で掲げられたスローガン「Half & Twice」にある。
ソフトバンク(旧ソフトバンクモバイル)は2015年4月、ソフトバンクBB、ソフトバンクテレコムとワイモバイルを吸収合併。社長も孫正義氏から宮内謙氏に交代するなど、新体制に移行した。
このスローガンは、この体制移行の際に掲げられたもの。人件費以外のコストや業務工数を半減(Half)しつつ、最新のICT(情報通信技術)で生産性や創造性を倍(Twice)に引き上げるという戦略だ。
時代に合わせて、ソフトバンクはさまざまな事業に取り組んできた。収益的に現在は通信事業が「本業」ということになるが、最近では「Beyond Carrier」を掲げて新規事業の創出にも取り組んでいる(参考記事)。
Half & Twiceがうまく回れば、空いた人員や時間を新規事業に回せる。ここで重要なのが「さまざまあるテクノロジーを、どのように取り込んでいくか」(木村氏)ということ。自身がサービスを提供する側でもあることから、いち早くこの課題を自覚していたようだ。
だが、通信を含めたICT分野では深刻な技術者不足という課題もある。「情報システム部門がやるのか、現業部門がやるのか、それともセールスエンジニアがやるのか」(木村氏)といったように、AI(人工知能)やIoT(モノのインターネット)といった進歩の速い技術の導入をどの部署が担当すべきか決めづらいという問題も抱えている。
どの部門が主導して新技術を取り入れるにしても、実際にそれを使う現場ではそれなりの知識は要求される。木村氏は「技術はどんどん進歩していく。それを取り入れれば仕事を効率化できるはずなのに(旧態依然としたやり方しか知らず、知識を持たないゆえに)気が付かない」こともあるという。
自覚していても、知らないことには始まらない。ある部署で使っている新技術を別の部署で取り入れるにしても横展開するための仕組みがないと難しい。
ICT企業でもそうでない企業でも、ぶつかる「壁」は大きくは変わらないのだ。
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