「人材開発」が発祥!? ソフトバンクのRPAはこうして生まれた(2/4 ページ)
SynchRoid(シンクロイド)というRPAソリューションを法人に販売しているソフトバンク。このSynchRoid、元々は自社内で使うために開発してきたものだという。担当者に話を聞いてみると、RPAに取り組む意外な背景が見えてきた。
「人材開発室」から生まれたSynchroid
ソフトバンクはこのような課題にどう立ち向かったのか。
何とRPAの開発や導入を「人材開発室」が主導して進めることにしたのだ。技術部門ではなく人材部門が、である。
宮内社長の方針もあって、同社では新技術が出てくると、まず社内で「使い倒す」(木村氏)。使い倒すからには、新技術に対応できる人材の育成も求められる。ただ、業務効率向上に資する新技術を、技術部門に閉じた形で試用するとなると、先述の通り横展開は難しくなる。
そこで、新技術に対応できる人材を横展開で育成するという観点から、RPAについては、人材部門が主導することにしたようだ。
RPAの社内検証は「外販ありきで行ったものではない」(木村氏)。しかし「検証で抱えた悩みはお客さま(外部企業)も同じじゃないか」(同)という声が社内から上がったことから、外販の検討が始まった。
「働き方改革」の盛り上がりが手伝ったこともあり、ソフトバンクのRPAは2017年11月に「Synchroid」として製品化することになった。
現在、人材開発室は、社内外にRPA導入を促す「RPA推進室」となっている。2019年2月13日現在、SynchRoidの導入企業は700社を超えたという。
部門ごとにプロジェクトチーム結成
ソフトバンク社内では現在、48部門がRPAを使った業務改善プロジェクトに参加。特に繰り返し作業が発生しやすい部署は熱心に取り組んでいるという。
規模感は部門によって異なるが、いずれの部門にも「推進リーダー」「開発担当者」「運用担当者」からなる「推進チーム」を設けている。チーム化しているのは「(RPAへの取り組みを)属人的にしたくなかった」(木村氏)からだ。
RPAを実際に開発・運用する際には「リスク」「ナレッジ(知見)」「パフォーマンス」の3点を適切にマネジメントすることを心がけているともいう。
リスクマネジメントでは情報漏えいを始めとするロボットの予期せぬ動きがもたらすリスクを適切に管理できる体制、ナレッジマネジメントでは運用ノウハウの横展開ができる体制作りを進めている。
そしてパフォーマンスマネジメントでは使っているロボットがプロセスに最適なのかどうかという検討を随時行うことが重要だという。ロボットが扱う業務内容には「めったに変わらないもの」もあれば「しょっちゅう変わるもの」もある。システム改修などによってロボット自体が不要になる可能性もある。「不要になったロボットをほったらかしにしていたら余計なこと(リスク)を生んでしまう」(木村氏)ので、使わないロボットを停止することも必要なのだ。
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