「人材開発」が発祥!? ソフトバンクのRPAはこうして生まれた(3/4 ページ)
SynchRoid(シンクロイド)というRPAソリューションを法人に販売しているソフトバンク。このSynchRoid、元々は自社内で使うために開発してきたものだという。担当者に話を聞いてみると、RPAに取り組む意外な背景が見えてきた。
RPAは「手足」 時短効果は薄くても不可欠になる
現在ソフトバンクでは約2000件の業務自動化プロジェクトが進行中で、時間の節約効果は年間合計24万時間だという。単純計算すると1カ月、1プロジェクト当たり10時間の節約ということで、1件あたりの時間節約効果はそれほど大きくない。
しかし、木村氏は「RPAはビジネスプロセスを変えるきっかけ」になるのだという。
RPAが人に変わって入力を請け負う「手足」だとすると、「目」になるIoT技術や「脳」になるAI技術があり、これらは今でも進化をしている。
RPAをきっかけに可能な業務を自動化し、生まれた時間でプロセスそのものを見直す――人口減少が避けられない局面では「ロボット(RPA)との共存」を前提にさまざまなことを検討する必要がある、というのがソフトバンクとしての考え方のようだ。
「概念ばかりでは分かりづらい」と、木村氏は「法人のモバイル(携帯電話)契約」を例に説明してくれた。
法人から携帯電話の契約を2万4000件を受け付けたとする。手作業で申込書を処理する場合、1件当たり38分ほどかかる。単純計算すると、全部処理するのに1万5192時間かかってしまう。
申込書の入力は定常的に発生する、テンプレート化しやすい業務。そこで入力を自動化するロボットを用意すれば、入力にかかる時間を「0時間」にできる。
「入力」は他の業務でも発生しうる。単機能のロボットをたくさん用意して「ロボットライブラリ」を作っておけば、必要なロボットを組み合わせて他の業務も自動化できる。多少の改修は必要だとしても、ゼロから開発する必要はなくなる。こういう点でも横展開は重要なのだ。
法人向けの携帯電話では、モバイルデバイス管理(MDM)に関する管理も重要。管理ポリシーは企業によって変わるが、セキュリティにも関わる部分なので厳密にやらなければいけない。
設定手順(項目)は約700あり、10人がかりで年間1万2516時間かけて処理(設定)しているという。手順が多い理由はシンプルで、機種によって設定方法が異なる部分があるからだ。
これでも、ロボットによる自動化はある程度できる。ただ、従来のプロセスにそのまま当てはめるだけでは、時間や人員の削減効果は限定的。自動化部分が「虫食い」になってしまうからだ。
そこで、業務フローを見直してシンプル化。どうしても自動化できない判断業務を「後回し」とし、作業者の業務を「承認」「判断」に絞り込んだ。自動化で生まれた余裕を使ってプロセス自体を見直すことでさらに時間を創出し、割く人員を減らしたのだ。
ただ、ここで浮いた人員は単純に「削減」するわけではない。今までの人員は単純作業が多い「オペレーター」だったが、これからはどこにどのような技術を適用すれば良いかを考える「オペレーターエンジニア」として新たな役割を担うことになる。
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