AQUOS R3の「動画」と「ディスプレイ」は何が変わったのか? シャープ開発陣にじっくりと聞く:開発陣に聞く(1/3 ページ)
シャープの新スマホ「AQUOS R3」は、前モデル「AQUOS R2」に続いて動画専用カメラを搭載。撮った動画をリアルタイムで約15秒のダイジェスト動画にする「AIライブストーリー」を提案してきた。ディスプレイは第5世代のIGZOに進化。そんなR3で改善したポイントを開発陣に聞いた。
望遠や超広角カメラを搭載して静止画に注力するハイエンドスマートフォンが多い中、シャープの「AQUOS R3」は、前モデル「AQUOS R2」に続いて動画専用カメラを採用。さらに、撮った動画をリアルタイムで約15秒のダイジェスト動画にする「AIライブストーリー」を提案してきた。
そんなAQUOS R3の開発陣に、動画に注力する意図を改めて聞くとともに、第5世代のIGZOを使った「Pro IGZO」やデザイン、UI(ユーザーインタフェース)の改良点について語ってもらった。
5Gを見据えて動画を訴求する
シャープ製のAQUOS R3はドコモ、au、ソフトバンクの大手3キャリアから販売されており、テレビCMも流れている。そのCMでは、10億色表現や、強い日差しの下でも見やすい「Pro IGZO」、動画を撮っているときに自動で静止画も撮る「AIライブシャッター」がメインで紹介されている。その一方で、動画を撮った後に自動でダイジェストのショートムービーが生成される「AIライブストーリー」は、それほど強調されていない。5月8日に行われた発表会では、AIライブストーリーの説明に時間をかけていただけに意外に思える。
発表会でプレゼンテーションも行った通信事業本部 パーソナル通信事業部 事業部長の小林繁氏は、「発表会とプロモーションでは少し位置付けが違う」と話す。
「発表会は、われわれがスマホで未来に何をしていきたいかという戦略を説明する場にもなっています。5Gに向けて、世の中をこんな風に変えていきたいという意図で、AIライブシャッターやAIライブストーリーを訴求しています」(小林氏)
動画専用カメラで差別化したAQUOS R2の実績に満足していると小林氏は語っており、基本路線を踏襲したAQUOS R3も「予約から好調」と、かなりいい手応えを感じているようだ。「AQUOS R2はチャレンジでしたが、そこがよかった。ユーザーのフィードバックからも、今まで以上に動画を撮る機会が増えたという声が聞けた。このコンセプトは行けると確信しました」(小林氏)
動画を訴求しようと決めたもう1つの要因に「5G」があるという。
「5Gの明確なソリューションを提示できている事例が意外に少ない中で、SNSでの動画のコミュニケーションは確実に5Gサービスの一端を担うと、みなさん、何となく理解していると思います。そんな未来を見せていきたいという気持ちがありました」(小林氏)
15秒のダイジェスト動画を作る仕組み
発表会のプレゼンテーションの中で小林氏は、動画はデータ容量が大きいからシェアされないのではなく、撮ったコンテンツと見たいコンテンツにギャップがあるからだという見解を示し、非常に見やすい形でシェアできるAIライブストーリーを提案した。「編集だのなんだのは必要なく、撮ってSNSに上げたら、それが見やすい動画になっている」という状態を目指したものだ。
AIライブストーリーは、動画を撮影中、AIが笑顔や構図などでいいシーンだと判断した部分を選び、BGMやエフェクトを加えて約15秒のショートムービーを自動で作成する機能だ。動画を撮影中、AIがおすすめの瞬間の静止画を撮るAIライブシャッターと同時に利用できる。
AIライブストーリーで、AIは動画の中の「シャッターを切ったシーン」「笑顔」「顔が大きく写っているシーン」などを判定し、スコアを付けて優先順位を決めていく。特に自分でタッチして静止画を撮影したシーンは、自分が残したいと思っている部分なので優先順位が1位になる。また、犬や猫が映っているシーン、動きが速いシーンも優先順位の上位に来る。魅力的なスコアのシーンが出てきたら、スコアの低いものが消えて、他のスコアの高いシーンが前にずれていき、時系列は崩れない仕組みとなっている。
「ここがいわゆる機械学習で、構図のいい/悪いポイントをたくさん学習させています」(小林氏)
AIは、動画の中からいいシーンにリアルタイムにスコアを付けて選んでいるだけだ。AIライブストーリーは約15秒で固定されているが、それはAIがまとめ上げているのではなく、BGMやシーンの切り替わりなどのエフェクトのパターンは、あらかじめクリエイターが作成している。「そこはある意味固定で、AIは選んだ動画を枠にどう差し込むかを計算しているという感じです」(小林氏)
動画の中でいいシーンにインデックスを付け、再生時はその部分を再生。SNSなどでシェアする段階で1つの動画ファイルとなる形だ。動画を撮ったらすぐにダイジェストが見られるようにするために、この方法が採用された。
膨大な数の「シナリオ」をクリエイターが作成
AIライブストーリーでは1つの動画に対し、基本の「Standard」、アップテンポで明るい雰囲気の「Fun」、落ち着いた雰囲気の「Relax」という3タイプのダイジェストを見られる。クリエイターが作成したパターンは「シナリオ」と呼ばれ、テーマそれぞれの中に複数ある。
パーソナル通信事業部 商品企画部 係長の小野直樹氏はシナリオについて、「AIが機械的に考えるものではなく、人の感性が必要になるところ」と考え、注力したという。「こちらの意向をクリエイターさんに伝え、いろいろなシナリオを作ってもらっています。毎回、何か違う驚きを感じてもらえると思います」(小野氏)
シナリオの数は公開していないが、かなりたくさん撮って利用しないと尽きない程度の数は用意しているそうだ。BGMも独自に作曲しており、さまざまなタイプがあるという。Standard、Fun、Relaxで使われるBGMが変わると、それを基準に選定するシーンも微妙に変化する。
動画の撮影時間、9割が1分以内
小野氏が大事なポイントとして挙げたのが「1つの今ある動画でショートムービーを作り上げること」。関連性のない別々の動画をつなぎ合わせるのではなく、「必ずつながりがある」シーンをまとめ上げることだ。ユーザー調査によると、スマホで撮る動画は9割が1分以内だという。
撮影が長時間になると、AIライブストーリーに残したいシーンが省かれて残らないのではないかと心配になるが、9割を占める1分以内の動画であれば心配はなさそうだ。シーンごとの関連性も高く、まさしくダイジェスト動画として楽しめるだろう。
ダイジェスト動画の約15秒という長さにもこだわった。「テレビCMや映画の予告は15秒で簡潔にまとめられています。最近ではTikTokが15秒でしたし、Instagramのストーリーも15秒で1回切れます。SNSで他人の動画を見る時間の限界があるのではと思いました」(小野氏)
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