“祭り”ならず? 「iPhone 11」シリーズの売れ行きがイマイチに見えてしまう3つの理由:元ベテラン店員が教える「そこんとこ」(2/2 ページ)
9月といえば新型iPhoneの発売です。しかし、今年(2019年)は特にそこまで盛り上がっているように見えません。一体なぜなのでしょうか。店舗スタッフやユーザーから話を聞きつつ考えました。
理由その1:価格
ヒアリングを通して、2019年のiPhone商戦が盛り上がりに欠ける理由がハッキリと見えてきました。
まず、最新iPhoneの購入を考えるときに真っ先に気になるだろう価格です。
iPhoneの2019年モデルのうち、最も廉価なのはiPhone 11の64GBモデル。Apple Store価格で7万4800円(税別)です。これは、最新のiPhoneとしてはお手頃といえます。
しかし、新しいiPhoneは「去年から大きく変わった部分」が注目されがちです。発表から発売直後までのタイミングでは、初めてトリプルカメラを搭載したiPhone 11 ProやiPhone 11 Pro Maxに視線が注がれます。Apple Storeでの価格は、前者が10万6800円から、後者が11万9800円から。「最廉価」であったとしても、消費税を含めると、決して安いスマートフォンとは言えません。
理由その2:2017年モデルにおける発売時期の「ズレ」
多くの携帯電話・スマートフォンユーザーは、おおむね2~3年で端末を買い換えると言われています。毎年買い換える熱心なファンはさておき、2~3年で買い換えるとなると、2017年モデルである「iPhone 8」「iPhone 8 Plus」や「iPhone X」を発売直後に買った人は、そろそろ機種変更を検討し始めるタイミングです。
2017年のiPhoneは、使い慣れたTouch ID(指紋センサー+ホームキー)を備えるiPhone 8/8 Plusと、Face ID(顔認証ユニット)を搭載し操作体系やデザインを一新したiPhone Xと、同じiPhoneでも人気を二分したことを思い出します……が、iPhone 8/8 PlusとiPhone Xで発売時期がずれていたことも忘れてはいけません。
iPhone Xを発売直後に購入した場合、2年経過は11月以降。要するに、より積極的に買い換えるであろうユーザーの機種変更検討はこれからなのです。
可能性の話ではありますが、2019年モデルの新iPhoneが爆発的に売れるのは、2019年末以降になるかもしれません。
理由その3:「買い方」と「回線」の選択肢の多様化
2008年に日本に上陸したiPhoneは、しばらくの間キャリアを通してのみ販売されてきました。しかし、2013年に大手3キャリアが横並びで扱うようになった「iPhone 5s」以降は、Appleが直接販売するSIMロックフリー版も登場しました(※)。
※ 実店舗のApple Storeでは、キャリアのSIMロックがかかったiPhoneも購入できます
SIMロックがかかってないので、さまざまなキャリアのSIMカードを挿して使えることはもちろんですが、iPhoneをいち早く、発売日に入手するにはもってこいの販路ということもあり、Apple StoreでiPhoneを買う人は増加傾向にあります。
WebのApple Storeで注文する場合、配送受け取りでも実店舗引き取りでも注文(予約)した時点で到着予定日時が表示されるので、発売日に手に入るかどうかすぐ分かります。大手キャリアの予約ではいつ受け取れるか明確でないことと比べると、すぐ手に入れたいファンの心をつかめています。
Apple Storeでの購入者が増えている背景としては、MVNOが提供するいわゆる「格安SIM」の利用者が増えていることも挙げられます。MVNOの利用者には「最新のiPhoneをセットで買う」という選択肢がありません。ゆえに、最新モデルを発売日に買うにはApple Storeしか選択肢がないのです。
さらに、販売価格もApple Storeで買う人の増加に拍車を掛けていると思われます。
iPhone 11の64GBを購入する場合の端末価格を税込みで安価な順に並べてみましょう。大手キャリアの価格はオンラインショップのものです。
- Apple Store:8万2280円
- ドコモオンラインショップ:8万7120円
- ソフトバンクオンラインショップ:8万8280円
- auオンラインショップ:9万720円
見れば分かりますが、Apple Storeから購入するのが一番安いのです。この傾向は、他のiPhoneでも同じ。単純に価格だけ見れば、キャリアショップや家電量販店を含め、大手キャリア経由で買う理由は見当たりません。
最新の販売ランキングではトップ10のほとんどをiPhone 11シリーズが占拠してはいます(参考記事)。しかし、端末価格の高騰とそれに伴う買い換えサイクルの鈍化、端末の買い方の変化によって、新しい以前よりもお祭り騒ぎのように盛り上がる時代ではなくなったといえます。
このことは、現在の国内の携帯電話市場を語るに当たり知っておくべき“ポイント”かもしれません。
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