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コラム

「解約金1000円まで」「機種代金の割引2万円まで」 本当に“乗り換え”は盛んになるのか?元ベテラン店員が教える「そこんとこ」(1/2 ページ)

改正電気通信事業法が制定され、それに伴う新しい総務省令が今年(2019年)の秋に施行される予定です。目玉は「解約金1000円まで」「機種代金の割引2万円まで」ですが、これでMNP(乗り換え)は活発なのでしょうか……?

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 定期(2年)契約の解除料の上限は1000円、端末代金の値引きは最大2万円まで――どちらも総務省で開催された有識者会合「モバイル市場の競争環境に関する研究会」において総務省が示した省令案です。

 携帯電話の料金や端末の販売方法を巡っては、通信料と機種代金を分かりやすく区別するいわゆる「分離プラン」の導入が求められ、大手キャリア(MNO)を中心に、ここ数年で新たな料金プラン、割引サービスや端末販売方法が登場してきました。

 そのような状況下で、さらに定期契約の解除料や値引きの上限が定められるとなれば、新しい料金プランが導入された時と同様に、さまざまな混乱を招くことは間違いありません。

 そこで今回は、この省令案について、携帯電話販売店のスタッフや、来店するユーザーの反応を聞いてみることにしました。

(記事中の価格は特記のない限り税別)

量販店の店頭
家電量販店の携帯電話コーナー。今後どうなっていくのか……?(写真はイメージです)

「解除料1000円」は買い換えの動機にならない

 一部で「違約金」と言われることもある、携帯電話回線の定期契約の解除料(解約金)。新制度案では、その上限を1000円と定めることになりました。

 その主な論拠として、定期契約は自動更新が基本であることと、契約解除料が税込みで1万円を超えることによって、必要以上にユーザーが拘束され、健全な競争が生まれていないという指摘が挙げられます。

 端的にいえば「解約金を安く抑えれば乗り換え(MNP)が活発になる」という発想と、総務省が取ったアンケートの結果(参考リンク:PDF形式)が相まって「解除料1000円」が決まったものと思われます。

省令案
総務省が示した契約解除料の根拠

 果たして、契約解除料が値下げされたらMNPで乗り換えるユーザーが増えるのか――複数の店舗スタッフに尋ねたところ、主に以下の様な意見が寄せられました。

 乗り換え(MNP)する際に、契約解除料や(乗り換え先での)契約手数料で合計1万〜2万円ほどの支出があることは、多くのお客さまが当たり前だと思っている。

 契約解除料の水準よりも、欲しい機種や利用したいサービスの価値や割引の大きさを見て買い換え(乗り換え)を決めるユーザーの方が多い。

 多くのユーザーから声を聞く機会の多いスタッフたちは、解約金の上限を1000円にしたところで、契約(販売)数や契約数に占めるMNP転入の比率が極端に増えたりするとは考えていないようです。

高額な解除料は「割引の総額」で解決できていた

 しかし、税込みで1万円を超える契約解除料でもユーザーから不満がそこまで出ていなかった背景には、高額な割引やキャッシュバックの存在も見逃すことはできません。

 実際に、幾つかの店舗やスタッフからはこんな声を聞きました。

 解除料や手数料で2万円近い支出があっても、MNPで10万円の機種が無料になるなら、「乗り換えずに機種変更をするよりも、8万円もお得になります」と伝えれば、ほとんどのユーザーが成約する。

 MNPで乗り換えたユーザーにを対象に月額料金が2年間毎月1000〜2000円ほど安くなるキャンペーンを提案する際に、「2年間の割引総額は契約解除料と同額がそれ以上」と話すと、高額な契約解除料にも納得できる人が多かった。

 契約解除料を上回る割引は、MNPを活性化する要素として存在感が大きかったことが分かります。

 筆者自身、MNP制度が導入されて間もない頃から、高額キャッシュバックや割引が問題視され始めた頃まで販売現場に立っていました。特にMNPによる乗り換えが優遇されるようになってからは、端末代金や通信料の割引総額で契約解除料の障壁はなくなり、それこそ販売のほとんどはMNPで獲得していたとも記憶しています。

MNP限定割引の例
ソフトバンクがかつて実施した「のりかえ割」。ソフトバンクに限らず、このようなMNP限定で受けられる割引をしっかり案内できれば、契約解除料を気にせず乗り換えるユーザーはいた
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