下期の競争は落ち着く? 楽天モバイルとどう付き合う?――KDDI高橋社長一問一答(2019年第2四半期決算編)(1/2 ページ)
KDDIが2019年度第2四半期の決算を発表した。第1四半期で減益となったものの、第2四半期では増収に転じたため、通期の業績予想は据え置いた。この記事では、報道関係者向け決算説明会での高橋誠社長との主なやりとりを紹介する。
KDDIは11月1日、2019年度第2四半期の連結決算を発表した。第1四半期を含む上期は、第2四半期単体での増益もあって前年同期比で増収増益となった。通期決算の見通しについては、当初の予測のまま据え置いている。
この記事では、同日に開催された報道関係者向け決算説明会における、報道関係者と高橋誠社長との主なやりとりを紹介する。
新料金プランや法改正について
―― 第2四半期単独(7~9月)では増益に転換したとのことですが、なぜこの期間は増益したのか、改めて理由を説明してください。
高橋社長 下期に電気通信事業法が改正されることと、楽天モバイルが(MNOとして)参入することもあり、全社を挙げて第1四半期の減益を(第2四半期で)できるだけカバーしようと取り組んできました。
コスト削減を含めて努力をした結果、このようになった(増益転換を果たせた)と思っています。成長分野であるライフデザイン分野やビジネス分野を含めて、全分野が堅調に推移した結果でもあります。
―― 改正法は10月から施行された訳ですが、9月までの間に3Gの巻き取り(4G LTEへの移行)や端末販売に対するコストは積み増されたという理解で良いでしょうか。
高橋社長 そう思っていただいて結構だと思います。
決算説明資料でも399億円の「端末販売コスト増」を記していますが、ここには3Gから4Gへの端末移行促進費用が盛り込まれています。楽天モバイルが入ってくると、3G(でとどまっているユーザー)が一番のターゲットになると考えて、積極的に移行促進を図りました。
―― 通期の決算見通しが据え置かれています。下期に反転する要因をもう少し整理して教えてください。下期に向けた抱負もあればぜひ聞かせてください。
高橋社長 上期の段階で(前年同期比で)78億円の減益で折り返すことになるので、下期にそれを跳ね返した上で増益に持って行かないといけません。私たちとしては、さらなる努力が必要だと考えています。
先ほども言った通り、下期は電気通信事業法の改正があり、10月時点で若干の影響が出ていますが、変化が読み切れない部分もあります。慎重にやらないといけない面も出てくるでしょう。
いずれにしても、通期決算は予想通りの着地になるように対応していきたいです。
―― 10月以降の端末販売ルールの変更によって、顧客獲得に関する競争は落ち着いて、端末販売に関するコストは変化すると見ても良いのでしょうか。
高橋社長 10月を見る限り、MNO(大手キャリア)同士でのMNPによる流動性は、9月までと比べると落ちています。一方で、先ほども言った通り、3Gから4Gへの移行はも進んでいます。バランスを見ながら、採算管理をしていきたいと思います。
たい。
―― 上期ほど(競争的に)加熱することはないということでしょうか。
高橋社長 何をもって「加熱」というのかにもよりますが、法改正によってMNO同士ではインセンティブ(端末購入補助)が抑制されて、解約金も1000円までに制限されたので、イメージとしてはMVNOへの移行は若干増える可能性がある環境になったかな、と思います。
何を「競争の激化」と呼ぶのかにもよりますが、MVNOのいわゆる「格安スマホ」との競争環境はますます厳しくなりますし、MNO間の流動は以前ほどは激しくならないと考えています。
―― 足元の景況感が怪しくなっている面があると思います。下期に向けて、端末販売はもちろんですが、料金プランなど、御社として「身構えている」部分はあるのでしょうか。
高橋社長 10月が終わった段階なので、読み切れない部分は多分にあります。
それほどあおった訳ではありませんが、9月には駆け込み需要が多かったので、それに対して10月はMNO間の流動性が落ちているのは事実だと思います。一方で、解除料が1000円になったことから、(スマートフォンに)詳しい人はMVNOに移行する動きもあるようで、そのようなパス(auからMVNOへの転出)については今までより若干増えているのかな、と思います。
ただ、9月に対する10月の反動とリテラシーの高い人の(すばやい)動きもあるので、11月や12月の動きを見ながら、適宜(対策を)検討していきたいと思います。
KDDIグループ全体としても、au契約者数(同一名義の重複と、プリペイド契約分を控除)は純減傾向にあるのに対し、子会社(UQコミュニケーションズ、UQモバイル沖縄、ジュピターテレコム、ビッグローブ)が運営するMVNOサービスの契約者数は純増傾向にある
―― これから年末商戦や新年度商戦を迎えるわけですが、前年度(2018年度)と比べてどのくらいの盛り上がりになると思いますか。
高橋社長 単純にいえば、インセンティブに2万円の上限がかかったので、私たちが(販売面で)取れる施策の自由度は非常に狭まっているわけです。この面では、前年度と比べて影響が出る可能性があります。
そこで、通常は12月からやっている「学割」を、学生の動きが早くなっているというデータもありますので、11月からスタートさせました。11月と12月は、従来とは違う状況になる可能性もあります。
―― 先ほど来、10月前後の販売に関する質問が出ていますが、割り引きが抑制されたことによって、端末の売れ行きや売れ筋など、販売面で何らかの変化はあったのでしょうか。
高橋社長 詳しい数字は出していませんが、9月は「駆け込み」がすごく多くて、10月はそれが落ち着いたという感じです。ただ、(10月に入って)販売数量が劇的に落ち込んだという事にもなっていません。
例えばiPhoneですと、9月は想定よりもかなり数字(販売数)が出ましたが、10月はおおむね想定した数字で収まっています。3Gから4Gへの移行も順調に推移しています。
確かに(MNO同士の)流動性は落ちていますが、(販売数が)大幅に落ち込んでいるということもないと思います。
―― 御社は他社よりも早く、2022年3月末で3Gサービスを終了する予定です。先ほどから「3Gから4G LTEへの移行は順調」とおっしゃっていますが、移行の進捗(しんちょく)度はいかほどか教えてください。
高橋社長 弊社は数字としては公表していません。NTTドコモは先日の決算で(3G契約が)約2000万だと公表していますが(※1)、auでは9月末段階で(3G契約が)数百万件あると捉えていただいて構いません。
※1 NTTドコモは決算のデータ集(補足資料:PDF形式)で通信規格の世代別契約者数を掲載している
今は3Gからの移行に良いタイミングであると考えています。個人的には、QRコードを読み取るのもフィーチャーフォンよりもスマホの方が便利ですし、動画サービスも楽しみやすいです。(スマホに)移行したくなるソリューションも増えています。
何とか(4G LTEの)移行数を伸ばして、予定通りに(3Gサービスを)終わらせたいと思います。今の所は、順調に移行が進んでいると捉えていただいて結構です。
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