新生「OCN モバイル ONE」は格安SIMのシェア1位を奪還できるのか?:石野純也のMobile Eye(3/3 ページ)
「OCN モバイル ONE」が11月20日に料金プランを刷新。通信品質の改善も図る。一時はMVNOのトップシェアを誇っていたOCN モバイル ONEだが、競争の激化に伴い、シェアを徐々に失っていた。ライバルのUQ mobileやIIJmioに勝てる見込みは?
通信品質にも改善を図ったOCN モバイル ONE、今後の課題は?
木藤氏は、料金と同時に、通信品質に対する反省も挙げていた。新コースでは、ここへの対策も取った。MVNOは大手キャリアから帯域をMbps単位で借り、それをユーザーが“シェア”する形を取る。そのため、帯域に対してユーザーが多いと、「パケットロスが発生し、通信が遅いと感じるようになってしまう」(NTTコミュニケーションズ OCN モバイル ONE テクニカルプロデューサー 藤原康行氏)。トラフィックのピークは通勤・通学の朝夕やランチタイムの12時台で、これらの時間帯はMVNOにとって“鬼門”になっている。
OCN モバイル ONEも「トラフィックコントロール装置を自前で持ち、技術革新によって利用者全体の通信品質向上施策を行ってきた」というが、「まだまだ品質にご満足いただけないという声が上がっている」(同)という。そこで、新コースは旧コースと帯域を分け、設計を見直した。旧コースでは容量を使い切ったり、アプリで高速通信をオフにしたりすると、200kbpsで使い放題になっていたが、ここにも見直しをかけている。藤原氏によると、「新コースでは、ごく一部のお客さまの利用頻度が高い低速通信の利用に一部制限をかけることで、帯域の圧迫が起りづらい仕組み作りを行った」という。
その中身はこうだ。例えば3GBコースを契約している場合、容量を使い切った後でも、1.5GBまでは200kbpsで通信できる。一方で、200kbpsでの通信が1.5GBを超えると、速度にはもう一段の制限がかかる。これによって、200kbpsで帯域を占有しているユーザーが減るため、全ユーザーの速度を底上げされるという。2段階目に制限する速度は非公表。「規制がかかった後のお客さまの声を踏まえ、変動させていく」(同)という。現時点では、「ブラウザでサクサクといろいろなものを見られる状況ではないが、LINEなどのコミュニケーションツールは使える」(同)レベルに抑えられているようだ。
OCN モバイル ONEでは、「総トラフィックを見ると、10%のお客さまが50%ぐらいの帯域を占めている現状がある」(同)という。あえて高速通信を利用しない「節約モード」を頻繁に利用するユーザーも、5~10%程度に上る。こうしたデータを踏まえると、新コースは、ユーザー同士がより公平に帯域を分け合って使える設計になっているといえる。
料金と品質に改善を図り、NTTコミュニケーションズは「再び業界シェアでナンバーワンを目指す」(木藤氏)。楽天モバイルは今後、徐々にMNOへユーザーを移行させていくため、競合となるのは2社。UQ mobileとIIJmioだ。
ただ、UQ mobileはKDDIの関連会社で、逆にWiMAX 2+をMNOとしてKDDIに貸しているため、帯域にコストをかけやすい構造がある。リアルなショップも拡大しており、一般的なMVNOより販路も広い。「リアルな接点は家電量販店やゲオと、かなり密にコミュニケーションを取っている」(同)というものの、Y!mobileやUQ mobileといったサブブランドと比べると、どうしても見劣りする。
大手キャリアやそのサブブランド並みに販売網を整備するのは、コストがかかり、料金に跳ね返ってしまう恐れもある。それを補うフルMVNOやeSIMのような“MVNOらしさ”は、今まで以上に発揮していく必要がありそうだ。IIJを追う形で、NTTコミュニケーションズも2020年にフルMVNOのサービスを開始する予定だが、OCN モバイル ONEにその成果が生かされることを期待したい。
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