クアルコムが「スマートトランスポーテーション」のイベントを開催――5GとC-V2Xで安全なクルマ社会を築くことはできるのか:石川温のスマホ業界新聞
総務省や各キャリアなどの担当者が登壇する「スマートトランスポーテーション」に関するイベントをクアルコムが開催した。5Gでは「自動運転」に期待が寄せられているが、自動車関連ではそれ以外にも活用できる分野があるが、実現する上でハードルもある。
クアルコムは11月28日、「5G/C-V2Xにより実現するスマートトランスポーテーション ワークショップ」というイベントを開催。総務省、NTTドコモ、KDDI、ソフトバンク、日産自動車、沖電気、住友電工が登壇し、未来の自動車交通網がどのようになるのかというビジョンが語られた。
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この記事は、毎週土曜日に配信されているメールマガジン「石川温のスマホ業界新聞」から、一部を転載したものです。今回の記事は2019年11月30日に配信されたものです。メールマガジン購読(月額500円・税別)の申し込みはこちらから。
登壇者からは「5Gで自動運転が実現するかといえばちょっと誤解がある」という指摘があった。
5Gの超低遅延によって、自動運転が実現されるものではなく、5Gは補完的な情報や遠隔操作をクルマに伝えるだけに過ぎない。自動運転を制御するのは、クルマに搭載された機器が自立的に行うものだという。
万が一、自立的に自動運転していたクルマが止まらなくては行けないときに、5G回線を使って遠隔的に操縦するという使い方に留まるというわけだ。
また、ある登壇者からは「見えないものを見えるようにするのがコネクテッドカーの本質だ」という意見もあった。
将来、信号機などに5G基地局を取り付け、コネクテッドカーと信号機が通信することで、交差点でも、車内のモニターから死角が見られるようになるといった世界観が語られた。ドライバーが予め死角の先を確認できれば交通事故は減少するだろう。
ただ、こうした環境を整備しようと思うと、課題は山積みだ。
信号機に4社の5G基地局を載せるのか、それとも共同の基地局にするのか。新しい信号機の設置工事は誰が費用を負担するのか。そもそも「そんなニーズはあるのか」という点も深堀りする必要がある。
実現しようと思うと、国土交通省や総務省といった行政機関や警察庁が横断的に対応しなればならないし、キャリアや自動車メーカー、道路インフラ事業者なども手を取り合う必要がある。
今後、様々な企業が集まり、こうした世界観を実現するために議論を重ねていく必要があるだろう。
ただ、日本ではETCやVICSなど、クルマに情報を配信したり、通信することで利便性を上げる取り組みで成功してきたという実績もある。
クルマとクルマ、クルマと信号などが通信すれば、もっと安心安全な社会になることは間違いない。
今年、幼い命が自動車事故に巻き込まれることが多かった。
1人でも多くの命を守るためにも、多くの企業が手をつなぎ、通信の力でスマートトランスポーテーションの世界を実現してほしいものだ。
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