最近話題の「5G」 一体何ができるようになるの?:ワイヤレス・テクノロジー・パーク 2018(1/2 ページ)
2020年までの商用サービスを目指して実証実験などが進む「5G」。しかし、何ができるのかいまいちピンと来ないところもある。「ワイヤレス・テクノロジー・パーク 2018」の展示から、何ができるようになるのか見ていこう。
最近よく聞く「5G」という言葉。「第5世代移動体通信」のことだ。
5Gは、現行規格の「4G(第4世代移動体通信)」と比べて「低遅延」「高速・大容量通信」「多接続」の面で進化……といっても、具体的に何ができるようになるのか、あるいは何がより便利になるのか分かりづらい面もある。
そこで、5月25日まで東京ビッグサイト(東京都江東区)で開催されていた「ワイヤレス・テクノロジー・パーク 2018(WTP2018)」の展示内容から5Gでできること、便利になることを簡単に紹介してみようと思う。
機械の遠隔操作:その場で操作するような感覚で、より確実に
携帯電話などで通話する時には、自分の発した声が相手に届くまでに若干の時間差が発生する。このような時間差のことを、通信の世界では「遅延(レイテンシ)」と呼んでいる。
現行の4Gでも、無線区間(端末〜基地局間)の通信は、接続開始までの遅延が100ミリ秒(0.1秒)、データ転送の遅延が片道5ミリ秒(往復10ミリ秒)と比較的低遅延……なのだが、他のボトルネック要素(基地局間の通信、端末のデータ処理など)によって遅延が加わることを考えると、機械の遠隔操作に使うためには、もう少し遅延が抑えられることが好ましい。
そこで、5Gでは無線区間のデータ転送遅延を片道1ミリ秒(0.001秒)以下に抑えることを目指している。他のボトルネック要素の改善も合わせて進めることで、その場(すぐ近く)で操縦しているのと同じ感覚で、機械の遠隔操作を行えるようになる。
加えて、5Gのもう1つの特徴である「大容量」を生かすと、遠隔操作に必要な映像(動画)をより多く、より高画質に伝送できるため、操作確認の確実性が増し、操作ミスや不慮の事故をより減らせる。
建設機械(建機)、とりわけ特殊な建機のオペレーター(操縦資格保有者)は不足する傾向にあるという(参考記事)。5Gの利点を生かすことで、オペレーターが足りないという社会的課題を解決できるのだ。
コマツとNTTドコモが共同で実施した建機の遠隔操縦デモ。東京ビッグサイトとコマツの実験フィールド(千葉市美浜区)を光ファイバー回線で結び、フィールド内に5G基地局を設置して行われた。最終的には全ての伝送を5G回線で行うことを想定している
自動車:自動運転の進展→リッチなコンテンツを車内で楽しむ
先述の通り、5Gを活用することで機械の遠隔操作のリニア性が高まり、映像を使った操作確認もより精緻に行えるようになる。このことは、コネクテッドカー(ネットワークにつながった自動車)の機能向上にもつながる。
例えば、自動運転を実現する場合、緊急時(人の飛び出しや急な割り込みに対する急ブレーキ)におけるシステム全体の応答性を高める必要がある。この際、周辺を走行する自動車、道路管理者や歩行者に対してより迅速に危険を伝える手段として、5Gの低遅延が性や多接続が役立つ可能性がある。自動運転に必要なプログラムやデータの配信時にも、5Gの高速・大容量通信は生かせるはずだ。
KDDIがアイサンテクノロジー、ティアフォーと共同で行った公道における無人自動運転車の遠隔制御実験で実際に利用した車両。この実験ではLTEを使ったが、5Gを使ってより高レスポンスかつ高精細な映像利用も視野に入っている
技術が進歩して、レベル4以上(※)の自動運転が実現すれば、ドライバーは前方注視から解放され、車内での過ごし方も変わるだろう。その際に、5Gの高速・大容量通信を生かして高画質な映画(動画)を自動運転車に配信して、ドライバーに見てもらう……という未来もあるかもしれない。
※自動車の自動運転レベル(SAE Internationalの定義:レベル3以降が「自動運転」)
- レベル0:完全手動運転
- レベル1:ハンドル操作または加減速をアシスト(運転支援)
- レベル2:ハンドル操作と加減速の両方をアシスト(運転支援)
- レベル3:特定条件下でのみ自動運転(緊急時はドライバーが操作)
- レベル4:特定条件下でのみ自動運転(緊急時も原則システムが対応)
- レベル5:どこでも自動運転
少し視点を変えると、カートに大型ディスプレイを装着し、5Gを使って高画質な動画広告をリアルタイム表示する「動くデジタルサイネージ」としての活用も期待できる。
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