名言で振り返る、2019年のモバイル業界 「楽天」から「5G」「分離プラン」まで(2/3 ページ)
2019年は分離プラン、楽天のMNO参入、電気通信事業法の改正、5Gプレサービスの開始、米中貿易摩擦の影響、中国メーカーの台頭……など、例年にも増して、話題が豊富な1年でした。そんな目まぐるしく移り変わった2019年のモバイル業界。ただ振り返るだけでは面白くない、というわけで、今回はキーパーソンの「発言」に着目しました。
分離プラン、改正法関連
「抜けがないように」(総務省 総合通信基盤局 電気通信事業部長 秋本芳徳氏)
3月5日に電気通信事業法の改正法案を国会に提出した後に、総務省の秋本氏に取材をさせてもらい、「完全分離プラン」の意味を尋ねたときに出た言葉です。
「分離プランを徹底すべし」という議論は2007年にも行われましたが、その基準があいまいで、形骸化した背景があります。こうした過去の失敗を踏まえ、今回は基準を明確にし、法改正にも踏み出して販売代理店は届出制にすることで、キャリアとショップ双方の逃げ道をふさぎました。何としても分離プランを徹底させるという強い意志を感じました。
「ソフトバンクは自分から穴に落ちてくれた」(野村総合研究所パートナー 北俊一氏)
改正された電気通信事業法では、通信サービスの継続利用を条件とする端末割引は一律で禁止し、通信サービスの利用や端末の購入を条件とする端末割引は2万円まで、という制限が設けられました。そんな中で物議を醸したのが、ソフトバンクが9月に発表した「半額サポート+」です。
通信契約を条件とせず、他キャリアユーザーでも利用可能としましたが、分割で購入すると100日間SIMロックを解除できないこと、半額に割り引く条件として「端末の購入」があるため、「新たな囲い込みになる」と、総務省の研究会で問題視されました。
研究会で有識者として参加している北俊一氏は、半額サポート+の問題点を「穴に落ちた」と独特の言い回しで指摘しました。
「SIMロック解除については速やかにルールの見直しが必要」(高市早苗総務大臣)
半額免除施策とSIMロック解除の矛盾点については、高市早苗総務大臣自らも研究会で指摘。「改正法によって通信と端末が完全分離する中で、SIMロック解除については速やかにルールの見直しが必要」と説きました。研究会に総務大臣が出席するのはめったになく、それだけSIMロック解除が喫緊の課題と総務省が認識していることがうかがえました。
5G関連
「5Gならではのキラーコンテンツを現状で絞るのは難しい」(NTTドコモ 吉澤和弘社長)
NTTドコモは9月20日に、ラグビーワールドカップ2019の会場や一部のドコモショップで「5Gプレサービス」を開始しました。2020年春に開始予定の商用サービスと同じネットワーク環境を利用し、スポーツ、ゲーム、観光、音楽などでの新たなビジネス創出や、社会課題の解決を目指します。一方、5Gならではのサービスが、まだ見定まっていない状況であることが、この発言からうかがえます。春の商用サービスでは、どんなサービスやソリューションが登場するのでしょうか。
「5Gを主語で話す人を信じてはダメ」(KDDI 高橋誠社長)
KDDIが8月28日に開催した「au UNLIMITED WORLD」の発表会で、5G時代を先取りした料金プランやサービスを披露しましたが、その中で高橋氏が発した言葉です。5Gという言葉をひけらかすのではなく、5Gならではの体験が重要というわけです。確かに、一般ユーザーはそのサービスが「4Gなのか5Gなのか」気にする人はほとんどいないでしょうし、「5Gで何ができるか」を訴求することは重要だと思いました。
「ピカピカの4Gネットワーク」(KDDI 高橋誠社長)
記事では大きくは取り上げませんでしたが、同じくau UNLIMITED WORLDの会見で高橋氏が発した言葉です。「ピカピカ」とは「品質改善を施した」という意味で、長年、4G(LTE)サービスを提供してきたKDDIが、ネットワークの品質改善にも尽力していることをアピールしました。5Gサービスの開始当初は、4Gネットワーク上に5Gエリアを構築することから、4Gの品質も重要だというわけです。高橋氏は「中途半端な4Gネットワークがあっても5Gは生きない」とまで言い切り、どこに対して、とは言いませんが、自社の優位性をとことんアピールしていました。
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