名言で振り返る、2019年のモバイル業界 「楽天」から「5G」「分離プラン」まで(3/3 ページ)
2019年は分離プラン、楽天のMNO参入、電気通信事業法の改正、5Gプレサービスの開始、米中貿易摩擦の影響、中国メーカーの台頭……など、例年にも増して、話題が豊富な1年でした。そんな目まぐるしく移り変わった2019年のモバイル業界。ただ振り返るだけでは面白くない、というわけで、今回はキーパーソンの「発言」に着目しました。
スマートフォン関連
「何となくハイエンドの終焉」(シャープ 通信事業本部 パーソナル通信事業部 事業部長 小林繁氏)
分離プランが義務化され、端末購入補助が制限された2019年の業界を端的に表す言葉だと感じています。これはシャープが9月に「AQUOS zero2」と「AQUOS sense3」シリーズを発表したときに、小林氏が述べたものです。
今後は「明確な目的や強い意志を持って、こだわりのフラグシップを選ぶ層」と、「間違いのない賢い選択をして、値段相応以上の買い物をしたい層」に分かれるというのが小林氏の見立て。スマホ市場では、このような2極化がますます進みそうです。
「皆さんが安いと思われるのは、それ以外の機種が高いからでは?」(オッポジャパン トウ・ウシン社長)
ミッドハイのスペックで防水とおサイフケータイに対応しながら、3万5800円(税別)という驚きの価格を実現した「OPPO Reno A」。発表会後の囲み取材で「なぜここまで安くできたのか?」という質問に対し、オッポジャパンのトウ・ウシン社長が答えたのが冒頭のコメントです。Reno Aのコンセプトは「いろいろと余裕のスマホ」ですが、トウ社長の余裕たっぷりの態度も印象に残りました。
「Android OSとGMSを優先して使っていく」(ファーウェイデバイス日本・韓国リージョンプレジデントの呉波氏)
米政府のHuaweiに対する禁輸措置の影響で、日本でP30シリーズの発売が遅れたり、Mate 30シリーズにGoogleサービスを搭載できなかったりと、いまだ予断を許さない状態が続いているHuawei。11月に発売した「nova 5T」は、現時点でGoogleの認証を受けた最後のスマホだと思われますが、その発表会で、呉波氏が約半年ぶりにメディアの前に姿を見せ、その発言が注目されました。
特に印象に残ったのが冒頭のコメントで、HuaweiがAndroidとGoogleサービスを重視している姿勢が改めて分かりました。一方、今後発売するスマホにGoogleのサービスを載せられるかどうかはいまだ分からず、Huawei独自のアプリ開発基盤「HMS」を着々と強化していますが、Googleサービスが使えないスマホが売れるのかという不安はぬぐえません。問題の早期解決を望みます。
MVNO関連
「MVNOは解消してもらいたい」(NTTドコモ 吉澤和弘社長)
MVNO関連で物議を醸しているのが、MNOの楽天がMVNOのサービスを同時に展開していること、MNOのグループ会社が競合MNOのネットワークを借りてサービスを展開していることです。これはドコモ側が問題視しており、吉澤社長は楽天モバイルに対して、早期にMVNOサービスを終了すべしというスタンスを貫いています。KDDI傘下でドコモ回線を使っているビッグローブ側には「既に話をしている」そうですが、当のビッグローブ側は「ドコモと回線貸し出しをやめる交渉はしていない」そうで、情報が錯綜(さくそう)している感もありますが、2020年に何らかの動きが起こるのでしょうか。
「このような発表をするのは本当に遺憾」(NTTドコモ)
総務省の研究会でも、ドコモの担当者が楽天モバイルのMVNO継続を批判。「このような発表」とは、無料サポータープログラムの発表と同時に、MVNOも継続することを改めて発表したことを指しています。
ドコモ側は「イノベーション競争の阻害」「電波の有効利用の阻害」「情報漏えい」によって公正競争が阻害されると訴えました。研究会では各キャリアの担当者に対し、同じテーマでヒアリングをします。その際に競合キャリアを批判する趣旨の発言が飛び出すことが多く、普段の発表会とは違う緊張感が味わえます。「本当に遺憾」という強い言葉から、ドコモが危機感を持っているのだとも感じました。
「根拠が分からない」(IIJ 勝栄二郎社長)
MVNOがMNOに支払う接続料は、前年度の実績をもとに算出されるため、予測の数値と実際の数値が懸け離れていると、業績に大きな影響を及ぼしかねません。2019年3月に発表されたドコモの接続料改定は、当初IIJが見込んでいた「14%」を大きく下回る「5%」の低減率だったため、想定よりもネットワーク原価が20.5億円上乗せされました。
勝氏は、接続料の算定方式も含めて不満をあらわにし、「ドコモの言い分は『需要が9%増えたから』。前年は10%増だったが、(今回の)9%の根拠が分からない。社内資料にはあると思うが、もう少し透明化する必要がある」と要望を述べました。
なお、接続料の算定については、総務省が将来原価方式を2020年に導入することを検討しており、大きな動きがあるかもしれません。
モバイル決済関連
「スーパーアプリを目指す」(PayPay 中山一郎CEO)
2019年はスマートフォンのコード決済が盛り上がった年でもありました。そのけん引役となったサービスの1つが「PayPay」であることは間違いありません。サービス開始1年でユーザー数が1250万、加盟店申込数が140万箇所に達するなど、勢いがとどまることを知りません。
PayPayの中山一郎CEOは、サービス開始1年を目前とした2019年9月の会見で、今後のPayPayは「スーパーアプリを目指す」と意気込みを語りました。スーパーアプリとは、単にお店で支払いができるアプリから、決済や金融にまつわる機能がスマホだけで完結するというものです。2020年以降、決済の先にある世界を開拓した事業者が、モバイル決済で覇権を握ることになるかもしれません。
独断と偏見で決める名言大賞は「携帯業界のアポロ計画」
個人的に名言大賞を選ぶなら、楽天三木谷氏の「携帯業界のアポロ計画」です。楽天モバイルについては、予定通りにサービスインが進まなかったり、オペレーションで不備があったりと、どうしても厳しい見方になってしまいますが、久々の携帯キャリア新規参入は素直に応援したいです。2020年春までに、われわれをアッと驚かせてくれる料金プランやサービスを発表してくれることでしょう。そのときを楽しみに待ちつつ、2020年もキーパーソンの発言には注目していこうと思います。
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