Huaweiスマホはどうなる? 「AndroidとGoogleを優先」も、独自のアプリ基盤「HMS」にも注力
ファーウェイが発表した新製品「nova 5T」はGoogleサービスを利用できるが、今後の状況は不透明だ。デバイスプレジデントの呉波氏は「Android OSとGMSを優先して使う」と語るが、米国の制裁が解除されない事態に備え、独自のアプリ開発プラットフォーム「HMS」を強化。日本を含む世界のアプリ開発者を支援する。
2019年はHuaweiにとって激動の年だといえる。米政府の禁輸措置によって日本ではP30シリーズが販売延期になり、9月に海外で発表した「Mate 30」シリーズはGoogleアプリを搭載できず日本での発売は未定。米国の制裁はまだ解除されておらず、今後、日本で新製品をどのような形で投入するかは不透明な状態が続いている。
そんな中でファーウェイ・ジャパンは11月14日、新たなミッドハイスマホとして「HUAWEI nova 5T」を発表。ファーウェイデバイス日本・韓国リージョンプレジデントの呉波(ゴ・ハ)氏が、2019年5月のP30シリーズ発表会以来、約半年ぶりにメディアに姿を見せた。
米国の禁輸措置で致命的な影響はなく、業績は向上
禁輸措置という逆風が吹く中でも、Huaweiの端末事業は成長している。2019年第1四半期〜第3四半期の売り上げは6108億円に達し、前年同期比で24.4%向上した。2019年のグローバルでのスマートフォン出荷台数は10月22日に2億台を突破したが、これは2018年より64日早い到達だったという。
日本市場では、Huaweiスマートフォンのブランド認知率は39%から63%に向上し、Huaweiスマホの購入を検討する率は9%から13%に向上した。後者の検討率は「Huaweiユーザーが端末を買い替えるときに、同じHuawei製品を使ったり周りに勧めたりする」内容を示すもの。BCNの調査では、2019年1月〜10月における国内キャリア市場とSIMフリー市場でのシェアは3位につけ、SIMフリー市場だけだと1位を維持している。
呉氏は「米国の禁輸措置が根本的な影響を与えているわけではない。いろいろなところで結果を出している。日本市場では、(エンティティリスト入りした)5月16日以降、販売状況は少し変動したが、皆さんから支持されたおかげですぐに回復して、前年を上回る業績を打ち出せた」と胸を張る。
10億ドルを投資してアプリ開発者を支援
今後は、スマートフォンを中心に、その周辺領域の“スマートデバイス”にも力を入れる。呉氏はそのキーワードに「1+8+N」を挙げる。1はスマートフォン、8はタブレット、PC、スマートスクリーン、スマートテレマティクス、VRグラス、スマートウォッチ、スマートイヤフォン、スマートスピーカーを示す(一部は日本で未発売)。そしてNは「5GとともにやってくるIoTデバイス」を指す。これらの製品群を組み合わせることで、「端末間の境目をなくし、シームレスなAIライフをお届けする」と呉氏は意気込む。
Huawei製品の中心に位置付けられるスマートフォンは、米国の規制によってGoogleと取引ができない状態が続いており、「エンティティリスト」入り以降に発売した端末は、Googleのサービスやアプリが使えない(nova 5Tはそれ以前に海外で発売されていたため、Googleサービスは利用できる)。そこでHuaweiは、独自のアプリ開発プラットフォーム「HMS(Huawei Mobile Service)」を立ち上げ、Googleに依存せずにアプリを配信できる体制を強化している。
無料サーバの提供、開発者大会を開催するなど、Huaweiは世界でHMSに参画する開発者を獲得するための活動を続け、開発者コミュニティーの拡大に努める。既にポルトガル、ポーランド、スペイン、アラブ首長国連邦、シンガポール、タイ、マレーシア、フィリピンで開発者大会を実施した。
呉氏は、日本の開発者も同様に支援していくことを表明し、東京で開発者大会を行う予定。Huaweiは、日本を含む世界中のアプリ開発者を支援すべく、10億ドルの資金調達を行った。「HMSに登録すれば、170の国や地域にアプリを配信できるようになる」と呉氏。HMSを介して、タクシー配車アプリの「Grab」は300万以上、ブラウザアプリの「Opera Mini」は80万以上ダウンロードされるなど、ヒットアプリも生まれている。
AndroidとGoogleが最重要なのは変わらず
しかし、Huaweiにとって最も重要なプラットフォームが「Android OS」と「GMS(Google Mobile Service)」であることは変わらない。呉氏は「方針としては、Android OSとGMSを優先して使っていく。今でもGoogleと良好な協力関係を保っている。最悪のケースになったときだけ、われわれのエコシステムを立ち上げていく」と話す。つまりHMSは、米国からの制限が今後も解除されず、Googleサービスが一切使えなくなったときの“備え”ともいえる。
例年なら、年末にMateシリーズを発売しているが、2019年はMate 30シリーズがGoogleサービスを使えない状況が続いていることから、年内の投入はないようだ。呉氏はMate 30シリーズについて「来年(2020年)の日本での5G商用化に合わせて、発売の準備をしている」と予告する。さらに、折りたたみ形状の「Mate X」も検討中だとした。ただしGoogleサービスが使えるかどうかのメドは立っておらず、呉氏が言う「最悪の状況(米政府の制限解除なし)」が来春まで続くような事態になれば、日本でもGoogleなし、HMSを取り入れた形での発売になるだろう。
なおnova 5Tを含む既存のスマートフォンについては、「アップデートで影響を受けることはない」と呉氏は言い切る。「Huaweiは、さまざまなアップデートサービスを提供しており、2年前の旧モデルもアップデートの対象にしている。日本ユーザーの皆さんには、安心して使っていただきたい」(同氏)
Huaweiは独自OSとして「Harmony OS」も開発しているが、「AndroidとiOSの代わりになるものを作ろうとしているわけではない」と呉氏。Harmony OSはスマートフォンにとどまらず、IoTデバイスに向けたものでもあり、スマートスクリーン、スマートウォッチ、スマートテレマティクス、スマートスピーカーにも搭載していくという。
「米国に規制されても、独自のOSとエコシステムを作り上げる力は持っている」と呉氏は自信を見せるが、Googleのサービスが使えるか否かは重要なポイント。来春、Mate 30シリーズが日本で登場する頃に状況が好転していることに期待したい。
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