ソニーモバイルとシャープの5G戦略を読み解く スマホは共通点が多いが、法人向けに違い:石野純也のMobile Eye(3/3 ページ)
ソニーモバイルやシャープが、相次いで5G対応スマートフォンやルーターを発表した。どちらもスマートフォンは、従来以上に写真や動画といったビジュアルコミュニケーションを強化したのが特徴だ。一方で、ミリ波対応の法人端末は方向性が分かれた。
ミリ波対応でビジネスニーズにこたえる「Xperia Pro」と「5Gモバイルルーター」
一方で、ビジネス向けの端末には、ミリ波のニーズが高いと判断した。5Gでは、各キャリアとも企業との協業を柱の1つに据えているが、メーカーとしては、こうしたニーズに応える必要もある。その解として打ち出した端末には2社の企業カラーが色濃く反映されている。ソニーモバイルはプロカメラマンの用途に特化した「Xperia PRO」の開発を表明。シャープはコワーキングスペースなどで利用するための、「5Gモバイルルーター」を発表した。
ソニーモバイルのXperia PROは、ミリ波の電波を受信しやすいよう、4つのアンテナを採用。金属やガラスといった電波のさまたげになる素材を廃し、ボディーには樹脂素材を採用した。HDMI接続でカメラのモニターとして利用できるのも、この端末の特徴だ。
Xperia PROは、端末の形状こそスマートフォンだが、用途としてはディスプレイ付きのWi-Fiルーターに近く、プロのカメラマンが映像をその場でアップロードする利用シーンを想定している。ソニーモバイルは米キャリアのVerizonや米テレビ局のNBC Sportsと共同で、スタジアム内のビデオカメラに5G対応のプロトタイプ端末を搭載し、映像を伝送する実験を行っていたが、これを一歩進めて製品化を表明した。業務用のカメラでシェアの高いソニーグループならではの強みを生かした格好だ。
同様にシャープのモバイルルーターも、3方向のアンテナを採用し、電波の感度を向上させた。サイズ的には4Gで一般的なモバイルルーターよりも大きく、半固定で使うことを想定したものだ。そのため、Wi-Fi 6はもちろん、2.5GBASE-Tの有線LANポートも搭載。複数人のユーザーで、5Gの通信環境をシェアする使い方を提案する。
古民家をオフィスにしたり、出張したメンバー同士がコワーキングスペースで使ったりと、一時的にチームワークが必要なときに利用するルーターというわけだ。サイズも通常のモバイルルーターより大型だが、CPE(据え置き型の宅内ルーター)よりはコンパクトで、カバンに入れれば持ち運ぶことも可能だ。政府の調達方針を受け、一部の企業では中国メーカー製のルーターが敬遠される傾向がある。シャープの5Gモバイルルーターは、こうしたニーズに沿った端末といえる。
ソニーモバイルとシャープの2社とも、5G時代に向け、既存のスマートフォンやモバイルルーターの枠を超えた製品を打ち出そうとしている様子がうかがえる。開始当初は、スマートフォンが普及の起爆剤になりそうな5Gだが、エリアの拡大や5G単体で動作するSA(スタンドアロン)方式の導入が進むにつれ、より多彩な端末が登場する可能性は高い。Xperia Proや5Gモバイルルーターは、その先駆けと捉えることができそうだ。
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