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なぜキャリアの5Gとは別に「ローカル5G」が必要なのか? メリットと課題を整理する5Gビジネスの神髄に迫る(2/2 ページ)

5Gはキャリアが展開するものだけでなく、自由に5Gのネットワークを構築できる「ローカル5G」という仕組みも存在する。特に法人での5G活用においては、ローカル5Gに高い関心が寄せられている。ただしNSAでの運用が求められていること、参入事業者に知見があるとは限らない、などの課題もある。

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現状の課題はNSAとノウハウの不足

 自由度が高く展開する事業者の幅も広いことから、スマートファクトリーなど産業向けを中心として、ローカル5Gに高い期待を抱いている人や企業、自治体は多いようだが、ローカル5Gにも課題はいくつかある。中でも大きな課題といえるのは、現在割り当てられている28GHz帯はノンスタンドアロン(NSA)での運用が求められることではないだろうか。

 5Gの法人利用では、高速大容量通信よりも低遅延などに期待が寄せられている部分が大きい。にもかかわらず、ローカル5Gはゼロから構築するネットワークでありながら、最初からスタンドアロン(SA)運用ができないのは残念な部分だといえる。

 NSA運用が求められるということは、5Gだけでなくそのベースとなる4Gのネットワークも用意する必要があることも意味しており、そのためには4Gの周波数帯も必要になってくることから、事業者にかかる手間とコストはそれだけ大きくなってしまうのも課題だ。それゆえ京セラのように、あえてSAでの運用が可能な帯域の免許割り当てまで参入を待つ企業もいる。

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 ちなみに総務省は、ローカル5G事業者が4Gのネットワークを運用するに当たり、地域BWA向けに割り当てられている2.5GHz帯の帯域を活用できるようにする方針を打ち出している。地域BWAは、ケーブルテレビ会社などが特定の地域限定で提供している、WiMAXやAXGP方式によるBWA(Broadband Wireless Access)サービス。この帯域が使われていない地域が多く存在することから、そうしたエリアでローカル5G向けに活用してもらおうとしているわけだ。


現在割り当てがなされている28GHz帯はNSAでの運用が求められ、5Gだけでなく4Gの設備が必要になるなど手間とコストがかかる。そこで京セラは、SAでの運用が可能な4.5GHz帯の割り当てに照準を合わせ、基地局などの開発を進めている

 もう1つ、ある意味でローカル5G最大の課題といえるのは、ローカル5Gに参入する企業が必ずしも携帯電話のネットワークに詳しいわけではなく、5Gのノウハウを持ち合わせているとは限らないことだ。それゆえ実際のところは、ローカル5Gの構築や運用に関して、キャリアの力を借りるケースが少なからず出てくるものとみられている。

 キャリアはローカル5Gに直接参入できないが、参入企業への技術協力などは可能であることから、キャリアがローカル5Gの下支えをすることは自然な流れでもある。だが市場競争上の観点から見れば、ローカル5Gでもキャリアの影響が大きくなってしまう可能性もあるだろう。

 またキャリア側も「おでかけ5G」や「キャリー5G」など、一時的に5Gネットワークを利用できる設備を提供するなどして、ローカル5Gが獲得するニーズを先取りしようという動きも進めており、こうした点もローカル5G事業者にとっては脅威になるだろう。そうしたキャリアの動きに、ローカル5Gの免許割り当てを受けた各社がどのような方針を取ることになるのか、今後の動向が注目されるところだ。


ソフトバンク系のWireless City Planningが、2020年1月に大成建設と実施した、トンネル工事現場における作業員の安全管理を目的とした「i-Construction」の実証実験説明会より。実験には可搬型の5G基地局「おでかけ5G」が用いられているという
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