コロナ禍でニーズ増す金融サービス 「LINE Score」「LINE Pocket Money」の戦略とは?(1/2 ページ)
LINEのスコアリングサービス「LINE Score」の登録ユーザーが500万人を突破した。LINE Scoreは個人の信用度を独自の基準で点数化することで、金融サービスをはじめとした各種サービスへの展開を図ろうとしている。それを実際に活用しているサービスとして個人向けローンサービス「LINE Pocket Money」がある。
LINEのスコアリングサービス「LINE Score」の登録ユーザーが500万人を突破した。LINE Scoreは個人の信用度を独自の基準で点数化することで、金融サービスをはじめとした各種サービスへの展開を図ろうとしているが、それを実際に活用しているサービスとして個人向けローンサービス「LINE Pocket Money」がある。同社ではこうした金融サービスをテクノロジーで強化することを、「Credit」と「Technology」を合わせた「Credit Tech」として位置付け、さらにサービスを拡大していきたい考えだ。
LINE上のサービス利用状況を踏まえたスコアを表示
LINEの子会社であるLINE Creditが提供するLINE Scoreは、月間利用者数8400万人のLINEユーザーが利用可能なスコアリングサービス。15問の質問に回答すると、LINE上のサービス利用状況を踏まえた独自のスコアリングモデルでユーザーの信用度を1000点満点で表示する。そのスコアにもとづき、「ユーザーのライフスタイルに合った特典やキャンペーンを提供する」ことが狙いとされている。
全て個人の同意にもとづいてスコアリングするため、LINE Score開始時の規約に同意して初めてスコアが算出され、利用していないユーザーのスコアは算出していない。スマートフォンの普及でパーソナライズ化が加速し、オンライン上での行動データが蓄積されたことで、ビッグデータを機械学習で解析して個人に合ったサービスが提供できるようになった、とLINE側では話す。
LINE上の行動データは、メッセンジャー、ニュース、漫画などのエンターテインメント、コマース、金融など、同社の各種サービスでの行動を踏まえたもの。いつ、どこで、何を買った、といった細かい情報ではなく、「ユーザーがどういうコミュニケーションを大事にしているか、消費傾向、興味関心などを抽象化した上でスコアを算出している」(同社)という。
メッセンジャーの利用データも活用されるが、もともとLINEのメッセンジャーや音声通話は暗号化されていてLINE自身にも中身を見ることはできないため、メッセージ本文のようなセンシティブなデータは使われていない。
“社会性のスコア”として多方面での応用が可能
こうして得られたスコアリングは、「約束を守るなどの社会性のスコアと捉えている」と同社。信用度がスコアとして可視化することで、さまざまな応用が可能という認識だ。
その一例として、シェアリングサービスでの個人同士のマッチングでは、信用が図れないためにマッチングしにくいという課題があったという。LINE Scoreによって信用度を担保できることでサービス拡大につなげられる、というのがLINE Scoreの方向性だ。
現時点で提供されているLINE Scoreの応用事例として挙げられるのが「LINE Pocket Money」だ。LINE Pocket Moneyは個人向けローンサービスとして2019年8月からサービスを提供。申込数は20万を超えている。LINE上で完了するローンサービスであり、スマートフォンで契約、返済などが全て完結するのが特徴。貸し付けられた資金もLINE Pay上に振り込まれるので、そのまま決済に使用することもできる。
契約極度額は5万~300万円で、融資額は1円から1円単位で可能。実質年率は3.0~18.0%。この利率の変動がポイントだ。LINE Scoreのスコアが高いと信用度が高いと判断され、利率が低く抑えられる、というわけだ。
新型コロナウイルスの影響で収入が減って困難に直面している人も増えている。特にフリーランスや非正規雇用への影響が拡大している、と同社ではみている。実際、Pocket Moneyにおける雇用形態別の申し込み構成比では、フリーランスや非正規雇用、従業員10人以下の小規模事業者の在籍者が増加傾向にあるという。
他にも、飲食業の従業員、賃貸住宅の居住者の申し込みが増えているそうで、「伝統的な金融機関のローンで評価されにくい傾向のある属性の人の申し込みが増えている」という。
個人にフィットしたフェアな与信ができる
一般論でいえば、経済情勢が危機的な状況にあると、金融機関は与信を引き締めて貸し付けを控える傾向にある。それに対して、Pocket Moneyでは現状でも与信の引き締めはしておらず、LINE Scoreを活用した貸し付けを実施しているという。与信では通常の信用情報も用いて、共同出資しているみずほ銀行やオリエントコーポレーションのノウハウも掛け合わせてはいるが、ここにLINE Scoreが入ることで、個人のスコアに応じた利用限度額や利率が適用される。
個人の属性や肩書などの画一的な与信ではなく、個人の行動データを基盤にしたスコアを加味することで、「個人にフィットしたフェアな与信ができるのではないか」と同社は強調。実際、同社の調査ではスコアを利用したローンサービスに利用者の7割がポジティブな印象を持っていたという。
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