シンプルなKDDI新料金プラン povoの“トッピング”は減収影響をカバーできる可能性も:石野純也のMobile Eye(1/3 ページ)
ドコモの「ahamo」やソフトバンクの「SoftBank on LINE」に対抗する、KDDIの新料金プランが発表された。「povo」が他社より500円安いのは、5分間の音声通話定額を「トッピング」と呼ばれるオプションにしたため。ファストフード感覚で、サービスを自由に追加できる点を差別化のポイントにした格好だ。
ドコモの「ahamo」やソフトバンクの「SoftBank on LINE(仮称)」に対抗する、KDDIの新料金プランが発表された。月額2480円(税別、以下同)で、データ容量20GBの「povo on au」がそれだ。他社より500円安いのは、5分間の音声通話定額を「トッピング」と呼ばれるオプションにしたため。ファストフード感覚で、サービスを自由に追加できる点を差別化のポイントにした格好だ。トッピングの打ち出し方次第では、減収影響もカバーできる可能性があり、バランスの取れた料金プランと言えそうだ。その狙いを読み解いていきたい。
音声通話定額なしで2480円を実現、若年層のニーズに応える
15日の定例会見で、武田良太総務大臣が「非常に紛らわしい」と評したKDDIのpovoだが、その中身は小学生でもすぐに理解できそうなほどシンプルだ。データ容量は20GBで、料金は2480円。音声通話には、別途30秒20円の通話料がかかる。ドコモのahamoや、ソフトバンクのSoftBank on LINEと同様、オンラインに特化しており、契約の申し込みやサポートには、店舗を利用できない。ahamoやSoftBank on LINEより500円安いのは、5分間の通話定額が含まれていないためだ。
音声通話定額を外したのは、メインのターゲット層と関係がある。KDDIの代表取締役社長、高橋誠氏は「近ごろのお客さまは、データ通信やメッセージの利用が中心。インターネット通話アプリで十分という方は非常に多い」と、その狙いを語る。LINEなどのアプリを使うユーザーにとっては、5分間の音声通話定額が強制的にセットにされるより、その分料金を500円下げてくれた方がいいというわけだ。実際、KDDIの20代以下のユーザーの6割は、月間の通話分数が10分未満に収まっているという。
もちろん、残り4割のユーザーの声を無視したわけではない。それを解決するのが、トッピングと呼ばれるオプションだ。トッピングとは、いわゆるオプションのこと。オンライン専用プランだけあって、アプリでスイッチをオンにするだけで簡単に申し込むことができる。ベースの料金プランはシンプルにしつつ、自由に料金をカスタマイズできるようにした格好だ。ピザや牛丼といったファストフードの料金体系を考えれば、理解しやすいだろう。
トッピングの第1弾として、5分間の音声通話定額や完全通話定額を用意。さらに面白いのが、24時間限定でデータ通信の容量を無制限にするというトッピングだ。こちらの料金は1回24時間で200円。高橋氏は「Netflixは標準画質で1時間あたり1GB必要になるが、200円をお支払いいただくことで、20GBの枠とは別に24時間はデータ量がノーカウントになる」と語り、動画を集中的に見たいときなどに活用できることをアピール。テザリングも無制限になるといい、出張やテレワークで一時的にPCを接続するときにも役立ちそうだ。
KDDIが「第1弾」と銘打っていたように、トッピングはユーザーの声を聞きながら追加していく方針。高橋氏は「2時間ドラマを見放題にしたり、1日SNSを見放題にしたりと、アイデアをいただきながらトッピングメニューをどんどん成長させていきたい」と語る。特定のサービスやコンテンツのデータ容量をカウントしないゼロレーティングのような通信サービスとも相性がよさそうだ。トッピングでサービスを自分好みにカスタマイズできる点は、オンライン専用プランならではの魅力といえる。
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