異例の新プランを発表した楽天モバイル 解約率は下がるも、収益性を上げられるか:石野純也のMobile Eye(2/3 ページ)
楽天モバイルの新料金プランは、段階制を導入することで、20GB以下と3GB以下の料金を低廉化。さらに1GB以下の場合、料金を無料にするという大胆な手を打った。大手3社のオンライン専用料金プランに対抗した格好で段階制を導入することで、小容量と中容量のプランにフィットするユーザーの負担感を軽減するのが狙いだ。
他社のオンライン専用プランやサブブランドに対抗、低容量ユーザーもターゲットに
先に述べたように、楽天モバイルのUN-LIMIT VIは大手3キャリアのオンライン専用料金プランに対抗するものだ。ドコモの「ahamo」やソフトバンクの「SoftBank on LINE」は、いずれも料金が2980円。auの「povo」は、2社と異なり5分間の音声通話定額がトッピングという扱いだが、料金自体は500円安い2480円だ。これに対し、楽天モバイルでデータ量が20GB以下だった場合は1980円。ahamoやSoftBank on LINEより1000円、povoよりも500円安い金額を打ち出している。
MNO大手3社の値下げを受け、MVNO各社も値下げに踏み切っているが、20GBまでで1980円はそれと同水準だ。例えば、日本通信がahamo対抗で導入した「合理的20GBプラン」(ahamo開始までは16GB)は、料金が1980円。同プランには70分の音声通話が付くものの、「Rakuten Link」を通じた音声通話が無料になる楽天モバイルの方が条件はいい。2980円という金額は並ばれてしまった楽天モバイルだが、2980円でデータ通信無制限は維持しつつ、20GBというしきい値を設定することで、横並びで比較したときに、競合他社より1000円程度安い価格を訴求できるようになった。
1GBから3GBの金額は980円で、これも、MNOでは最安水準を打ち出していたUQ mobileの「くりこしプランS」を金額で下回った。UQ mobileの場合、データ容量3GBで1480円のため、500円安い料金を打ち出した格好だ。楽天モバイルが発表会でも示したように、毎月のデータ使用量が5GB未満のユーザーは、全体の66%とまだまだ多い。UN-LIMIT Vまでの料金プランは、データ通信無制限として見ればリーズナブルだが、小容量、中容量の料金プランを契約するユーザーの目には割高に映っていたのも事実。1GBから3GBを980円にすることで、こうしたニーズも取り込めるようになったといえる。
さらに、1GBまでの料金は0円に設定。複雑な条件は特になく、音声通話も上記と同様、Rakuten Linkを使えば無料になる。当然、国内では最安の料金で、MNOはもちろん、MVNOにもこれに対抗できる料金プランは存在しない。ことわざとは真逆だが、“タダより安いものはない”というわけだ。
【更新:2021年2月1日10時00分 Rakuten Linkの音声通話について、「完全定額」から「無料」と訂正いたしました。】
1GBというと少ないように聞こえるかもしれないが、外出先などであまりデータ通信を使わなければ、1GB以下に抑えることはできる。先に挙げた総務省のデータでも、2GB以下のユーザーは49.5%と多い。ドコモがギガライトを発表した際にも、1GB未満のスマートフォンユーザーは全体の約4割を占めていることが明かされている。その意味で、1GB以下に0円をつけたインパクトは大きい。
楽天モバイルの料金プラン改定には、2つのメリットがある。1つは、新規ユーザーの獲得。もう1つは、解約率の低減だ。データ容量別に料金を刻んできたことで、三木谷氏が「全国民に対して最適な料金」とうたうように、これまでのUN-LIMITよりも間口が広くなった。現時点で、楽天モバイルの契約者数は220万に達したが、このペースは上がることになりそうだ。ただし、この220万ユーザーが4月以降、そのまま楽天モバイルにとどまってくれるとは限らない。本格サービス開始直後に契約したユーザーの、無料期間が4月から終わり始めるからだ。
競合他社が低容量、中容量でリーズナブルな料金を打ち出している中、何も手を打たなければ、楽天モバイルが草刈り場になり、解約率が大幅に上がる恐れもあった。他社のオンライン専用プランと同じ20GBや、サブブランドと同じ3GBに区切りをつけ、一段安い料金設定をしたのは、そのためだろう。新規ユーザーの獲得に弾みをつけつつ、ユーザーが逃げ出さないための止血処置をした格好だ。三木谷氏も、「解約率は下がると思っている」と語る。
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