「エリア拡大」「ZERO宣言」でユーザー増も、課題山積の楽天モバイル 有料化までに解消できるか:石野純也のMobile Eye(1/3 ページ)
楽天モバイルの申し込み件数が160万を突破し、徐々にユーザー数が拡大している。自社回線エリアの拡大と各種手数料を無料化した「ZERO宣言」がじわじわと効いている印象だ。エリアについても前倒しで進めているが、不安がゼロになったわけではない。
「第4のキャリア」として4月に本格サービスを開始した楽天モバイルの申し込み件数が、160万件を突破した。本格サービスを開始した4月から約3カ月たった6月には100万件に達していたため、スタートダッシュからペースは緩やかになった格好だが、申し込みが月間で10万を超えるなど、徐々にユーザー数は拡大している。
自社回線エリアの拡大と各種手数料を無料化した「ZERO宣言」がじわじわと効いている印象だ。eSIMをフル活用するため、11月には新たにeKYCを導入するとともに、「AQUOS sense4 lite」や「OPPO A73」を導入。いずれもデュアルSIMでのeSIMに対応したAndroidスマートフォンで、“お試し需要”も取り込んでいく狙いがある。一方で、基本使用料の無料期間は、2021年4月から徐々に終わりを迎えていく。現状での課題はどこにあるのか。楽天モバイルの最新動向を解説する。
料金と自社回線エリアの拡大、楽天エコシステム効果でユーザー増へ
「顧客獲得はほぼほぼ順調。とりわけ楽天エコシステムを使ったオンラインでの獲得が進み、黒字化に向かって大変順調に行っている」――こう語るのは、楽天モバイルの代表取締役会長兼CEOの三木谷浩史氏だ。11月には申し込み数が160万件を突破。申し込み数が100万件を突破したころは、「Rakuten Miniが爆発的に売れてしまい、在庫がない期間があったため、(申し込み数と契約数の)ギャップがあったが、今はそういうことにはなっていない」と、実際の契約者数もこれに近いペースで推移しているという。
ユーザーが伸びている理由は、料金と自社回線エリアの拡大、楽天エコシステムの3点に集約される。まず、料金はデータ通信やRakuten Linkを通じた音声通話、SMSが使い放題で2980円。楽天モバイルの代表取締役社長 山田善久氏が「少なくとも設備投資で40%、運用コストで30%の削減を実現して、他社と比較しても圧倒的な価格優位性がある」と述べていた通り、確かに料金は安い。ただし契約から1年間、300万ユーザーが無料になるキャンペーンを実施しているため、現状では価格に対する評価がしづらい点には注意が必要だ。
自社回線エリアの拡大も、ユーザーの伸びを支えているようだ。楽天モバイルは新規参入事業者のため、エリアを補完するためにKDDIとローミング契約を結んでいる。本格サービス開始当初から全国区で使えるのはそのためだ。一方で、KDDIとの契約は従量課金になっているため、容量には5GBという制限がある。こうした事情もあり、やはり自社回線のエリアになっている場所の方が、ユーザーの獲得が進んでいるようだ。三木谷氏は「カバレッジのあるところとないところでは、コンバージョンレート(成約率)が倍ぐらい違う」と明かす。
自社回線の人口カバー率は、2021年夏に96%を達成する見込みだ。「当初目標の2026年3月から、来年(2021年)夏ごろへと、おおよそ5年間前倒しにして、基地局整備を加速している」(山田氏)という。人口カバー率はあくまでエリアの広さを示す指標の1つでしかないが、ゼロから基地局を建ててきたことを考えると、異例の速さといえる。三木谷氏も「他社が(LTEを)始めたときとは、比べものにならないぐらいいいのではないかと思っている」と自信をのぞかせた。
本格サービスの開始以降、楽天エコシステムの相乗効果を発揮できる取り組みも、徐々に進めているようだ。楽天 常務執行役員 CMO(チーフ・マーケティング・オフィサー)の河野奈保氏は「SPUだけでなく、楽天市場でもお買い物マラソン(と楽天モバイルの連動企画)をやっていたが、結果として、既存の楽天エコシステムのユーザーが使い始めるということがデータとして出ている」と語る。逆に、楽天モバイルで楽天のサービスを使い始めたユーザーも、「数カ月以内に新たなサービスを使っていただけている」(同)。強力なエコシステムを持つのは、楽天の強み。「他社にはできないベネフィットをご提供できる日も近い」(同)と、さらなる連携を検討していることもうかがえる。
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