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「楽天モバイル」の課題は“認知不足”? 三木谷氏がサービス開始後の1カ月を振り返る(1/2 ページ)

楽天の三木谷浩史会長兼社長は、4月8日に本格サービス開始した「楽天モバイル」について「順調な門出をした」と評価した。契約獲得の進展は想定通りだという。2021年3月までに楽天エリアの人口カバー率70%を目指す。

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 楽天が5月13日に、2020年度第1四半期の決算説明会を開催し、三木谷浩史会長兼社長がMNOサービス「楽天モバイル」の現状について説明。同氏は「順調な門出をした」と評価した。

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説明会はオンラインで開催。三木谷氏(右下)を含む役員らが、遠隔で参加した

 楽天モバイルは4月8日に本格サービスを開始し、楽天エリアでは原則としてデータを無制限で使用できる「Rakuten UN-LIMIT」を提供。このプランは開始早々に「2.0」に改定し、KDDIエリアで利用できる月間のデータ容量を2GBから5GBに、低速時の速度を128kbpsから1Mbpsに上げた。

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提供開始早々に「2.0」に改定した料金プラン「Rakuten UN-LIMIT」

他社にはマネできないネットワークとプラットフォーム

 無制限プランや、RCS規格に準拠した無料のコミュニケーションサービス「Rakuten Link」を提供していることで、楽天モバイルのユーザーは、他社と比べてデータ使用量が2.5倍多く、RCS(Rakuten Link)による通話はVoLTEと比べて2倍多いという。こうして増え続けるトラフィックも、問題なくさばけることを三木谷氏は強調する。

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楽天エリア内のデータ使用量やRCS(Rakuten Link)を使った通話は日に日に伸びている

 同氏は楽天モバイルが完全仮想化ネットワークを運用していることに触れつつ、「やってみて分かったのは、容量を上げる、ネットワークのスピードを上げることはハードに依存しない。バーチャルマシンを増やせば、容量はいくらでも上げられるし、爆発的なデータ容量の使用にも耐えられる」と自信を見せた。「安定性、拡張性、柔軟性は、他社にはマネができないと思う」と強気のコメントも変わらずだった。

 楽天モバイルの仮想化ネットワークを構築するシステムを「Rakuten Communications Platform(RCP)」としてコンテナ化し、海外の携帯キャリア向けに展開する。また、RCSも2020年夏以降に「UCC」として独自に標準化し、RCPの一部とする。

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楽天モバイルの戦略

2020年内に300万契約を達成したい

 新型コロナウイルス感染症の影響で、楽天モバイルショップは4月から休業としており、契約を獲得するタッチポイントの一角を失う形になったが、「楽天市場やメンバーシップ(楽天会員)をベースに、オンラインで獲得できている」と三木谷氏。4月8日から30日までにかけて、96.5%が楽天モバイルをオンラインで契約しており、「想定通りの契約数」だという。よりスムーズにオンラインで契約できるよう、今後は、本人確認をオンラインで行う「eKYC(electronic Know Your Customer)」も導入する予定とのこと。

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ショップを休業した影響もあり、申し込みの大半がオンラインとなった

 楽天モバイルでは、300万人を対象にRakuten UN-LIMITの利用料金(月額2980円、税別)を1年間無料としているが、現時点ではまだ300万人には達していない。「もともと、年末までに300万達成を目標にしているので、そういう意味ではほぼ予定通り」とした。

 三木谷氏は「楽天カード」を引き合いに出し、「楽天カードは当初、1日の獲得数が50くらいだったが、今では1万前後の会員数が毎日伸びている。これと同等のレベルは楽天モバイルで最低限、実現できるのではないかと思っている」と自信を見せた。

1年間無料の認知が進んでいない

 一方で、プロモーション活動はあえて控えており、テレビCMも打っていない。そのせいか、楽天が新しいモバイルサービスを始めたことの認知度は高くなっているが、1年間無料であることや、KDDIエリアで5GBまで使えること、超過しても1Mbpsに抑えられることについては、まだ認知が低いという。

 また、一度に大量の申し込みを処理するためには顧客獲得システムを強化する必要がまだあるようで、「1日10万人、20万人の申し込みが来ても受け入れられる体制を確認した上で、第2〜3弾のロケットを打っていく」という。Rakuten UN-LIMITも2.2や3.0など、さらにバージョンアップさせていくことを予告した。

 山田善久社長は、「Twitterではネガティブ(な意見)の比率が、当初と比べて何分の1くらいにまで下がってきている」と評価が高まっていることに言及した。

新規契約者の大半が楽天のサービスを使っていない

 楽天モバイルのユーザーには、楽天グループが提供する金融やECなどのサービスを使ってもらうことも期待されるが、三木谷氏によると「新規契約者の大半が楽天のサービスを使っていない」という。今後に向けて「楽天モバイルのユーザーに、楽天グループのサービスを使ってもらえる仕組みを検討している」といい、「楽天市場で買い物をしたり楽天カードを使ったりすることで、(Rakuten UN-LIMITの)無料期間が終わった後も、携帯電話がタダで使えることが実現できると思う。楽天モバイルユーザー向けの特典も考えたい」とした。

 無料化の施策もあり、2020年度第1四半期のモバイル事業(MVNOやViberなども含む)は、318億2800万円の赤字となった。三木谷氏は「(ユーザー数が)700万人に達成するまでに相当額の赤字は出る」とみるが、「コスト構造が圧倒的に安い」(同氏)というRCPを海外展開することも黒字化につながるとみているようだ。

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MNOが投資フェーズのため、モバイル事業は赤字が続いている
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