auローミングの改定で魅力が増した「楽天モバイル」 MVNOユーザーの移行も進むか:石野純也のMobile Eye(1/2 ページ)
楽天モバイルの正式サービスが、4月8日にスタートした。その際、auエリアでのデータ容量と低速時の通信速度を改定するサプライズがあった。新規ユーザーにはもちろん、同じ楽天モバイルが運営するMVNOのユーザーにとっても魅力的なプランになった。
楽天モバイルの正式サービスが、4月8日にスタートした。当初予告していた通り、料金プランは基本的に「Rakuten UN-LIMIT(以下、UN-LIMIT)」一択で、料金は月額2980円(税別、以下同)。データ通信の容量は無制限になる。300万人まで料金は1年間無料だが、現時点では到達してないという。サービス開始に合わせ、大きなサプライズもあった。それが、パートナーエリアの容量増量だ。
もともと、UN-LIMIT発表時は、auローミング時のデータ容量が2GBに制限されていたが、4月22日からはこれが5GBに増量される。さらに、5GBを使い切った後の通信速度も、128kbpsから1Mbpsに緩和される。楽天モバイルによると、新型コロナウイルス感染症拡大による支援の意味も含め、計画していた増量を前倒しにしたという。ここでは、その影響を見ていきたい。
サプライズだったauローミングのデータ容量拡大
UN-LIMIT発表時に、悪い意味でのサプライズになったのが、auローミング時の容量制限だった。無料サポータープログラムでは使い放題だったauローミングが、2GBへと一気に絞られてしまったからだ。本連載でも過去に指摘した通り、背景には1GBあたり500円近くかかるローミング料金がある。形式的にはユーザーがこれを楽天モバイルに支払う形だが、その9割以上がKDDIに支払われる。2980円の料金では、無制限のローミングは許容することができない。
料金発表前に、ローミングを提供するKDDIの高橋誠社長が「無制限のような料金を提供すると、われわれにローミング料金をお支払いすることになってしまう(ので難しいのではないか)」と述べていたのは、そのためだ。ふたを開けてみると、無制限の料金プランは提供されたものの、auローミング時の容量は2GBに制限される形となった。
自社回線の無制限と、auローミング時の2GBでは落差が大きい。東京23区のように、自前のエリアが進んでいる場所でも、地下街はauに接続することが多い。通勤、通学で地下鉄を使っていると、すぐにデータ量を使い果たしてしまう恐れがあった。東京でも23区を出れば、まだまだauローミングに切り替わる場所は少なくない。首都圏単位で見ても、これは同じだ。東京23区や大阪、名古屋を除くほとんどのユーザーの目には、無制限ではなく、2GBで2980円の料金に映っていたというわけだ。
楽天モバイルは、こうした不満を、正式サービス開始に合わせて一気に解消した。冒頭で述べた通り、auローミングの容量は倍増以上になる5GBに増量。これを使い切った後の速度も、128kbpsから1Mbpsに高速化した。5GBの容量があれば、通勤、通学時に短い動画を見るにも十分。仮に使い切ってしまっても、1Mbpsの速度が安定して出ていれば、画質を落とすことで乗り切れる。ストリーミングの音楽程度であれば、文字通り無制限に近い形で利用できそうだ。
MVNOからMNOへのマイグレーションも加速できるか
新規ユーザーにはもちろん、同じ楽天モバイルが運営するMVNOのユーザーにとっても、auローミングが5GBに増量されたのは、魅力的なはずだ。MVNOの楽天モバイルは、4月7日で新規受付を終了。サービス自体は当面継続していくというが、自社回線の楽天モバイルへの移行は促していく。MVNOの楽天モバイルは、10分かけ放題の通話やデータ通信がセットになった「スーパーホーダイ」をメインの料金プランに据えていた。2GBの「プランS」の料金は、2年目以降が2980円だ。
このプランSのユーザーが楽天モバイルの自社回線に移ると、支払い額は維持したまま、使えるデータ容量が増える。楽天モバイルエリアなら無制限、そうでない場合も2GBから5GBに容量がアップし、しかもauローミングが使えれば、エリアもMVNOと大きくは変わらない。さらにキャンペーンで1年間無料になるとなれば、移行するメリットは大きい。6GBの「プランM」の場合は1GB使えるデータ量は少なくなるが、支払額も1000円下がる計算になる。
auローミングが2GBだった当初のUN-LIMITだと、プランSで据え置き、プランMだと大幅に容量が下がることになり、MVNOの楽天モバイルユーザーが非常に移りづらい。この2プランは、特にユーザー層が厚そうなだけに、auローミングが5GBになったことで、移行に弾みをつけることができるかもしれない。
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