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「エリア拡大」「ZERO宣言」でユーザー増も、課題山積の楽天モバイル 有料化までに解消できるか石野純也のMobile Eye(2/3 ページ)

楽天モバイルの申し込み件数が160万を突破し、徐々にユーザー数が拡大している。自社回線エリアの拡大と各種手数料を無料化した「ZERO宣言」がじわじわと効いている印象だ。エリアについても前倒しで進めているが、不安がゼロになったわけではない。

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eKYC導入でeSIM対応を強化、手数料撤廃でハードルを下げる

 11月には、新たなサービスとしてeKYCを「my 楽天モバイル」アプリに導入した。現状ではAndroidのみの対応になるが、11月30日にはiOS版の「my 楽天モバイル」の提供が始まり、同時にeKYCも利用できるようになる。eKYCは、eSIMと対になって効果を発揮するサービスだ。もともと楽天モバイルは、Rakuten Miniの発売に合わせてeSIMを本格導入していたが、本人確認の壁があった。携帯電話不正利用防止法で、住所確認のための郵送が義務付けられていたからだ。

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11月にはeKYCを開始した。ただし、eKYC自体はY!mobileが先に導入していたため、日本初をうたうなら、厳密には“eKYCによるeSIM”と言った方がいいだろう

 そのため、楽天モバイルも、当初はeSIMを新規契約した場合でも、郵送でeSIMのアクティベーションができる“紙”を送付していた。これだと、物理的なSIMカードを送付するのと何も変わらない。オンラインで契約からプロファイルのダウンロードまでできるeSIMの魅力が、大きくそがれてしまっていたというわけだ。この法律施行規則の一部を改正する省令が4月に改正され、10月1日には、本人確認記録の作成や保存にも、書面が必要なくなった。楽天モバイルのeKYCは、この法改正にいち早く対応したものといえる。

 eSIMは、その手軽さから、業界ではユーザーの流動性が高まると考えられている。もともとのユーザー数が少なく新規事業者にとっては武器になる一方で、既存の事業者は流出が増えることを懸念し、全面的な導入には慎重な姿勢を示していた。新規事業者である楽天モバイルが真っ先にeSIMとeKYCを提供したのは、自然な流れだ。ただし、いくらeSIMのサービスを用意しても、対応する端末が少なければ価値が薄れてしまう。そこで同社は、eKYCの開始に合わせ、AUOQS sense4 liteやOPPO A73などのミドルレンジモデルを導入。自社ブランド端末以外にもeSIMを拡大していく方針を示した。

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オンラインで即時利用できるようになるのが、eSIM本来の魅力だ
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eSIM対応モデルとして、AQUOS sense4 liteやOPPO A73を追加した

 自社ブランドの端末はeSIMオンリーだったが、新たに導入した2機種は、物理SIMとeSIMのデュアルSIMモデルだ。狙いは、他社ユーザーがカジュアルに乗り換えられること。デュアルSIM対応端末なら、「今ご使用中の回線はそのままで、楽天モバイルのeSIMに乗り換えられる」(河野氏)。既存の契約や電話番号を残しつつ、データ通信には容量無制限の楽天モバイルを使うといった、お試し感覚での利用が可能になるというわけだ。物理SIMのデュアルSIMでも同様の使い方はできたが、オンラインで即座に契約できるeSIMだと、そのハードルは大きく下がる。

 また、「ZERO宣言」と銘打ち、契約時の事務手数料やMNPの転出手数料、SIMカードやeSIMプロファイルの再発行手数料など、こまごまとかかっていた各種手数料を撤廃。契約のハードルを下げることで、既存キャリアとの差別化を図った。既存キャリアは、代理店への手数料やシステムへの投資があり、大胆に手数料を撤廃するのは難しい。楽天モバイルの手数料無料化は、こうした事情を逆手に取った施策といえそうだ。

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各種手数料を無料化し、契約のハードルを下げた

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