巣ごもり需要で150%成長した「dTV」 5G時代の戦略とは? NTTドコモに聞く(3/4 ページ)
コロナ禍の巣ごもり需要で動画配信サービスの成長が目立つ。NTTドコモの「dTV」についても、2020年12月には20世紀スタジオとディズニー配給の洋画200タイトル、海外ドラマ1800エピソードが追加された。dTVを統括するNTTドコモ コンテンツビジネス部長の田中伸明氏に、今後の戦略を聞いた。
ひかりTV for docomoとのすみ分けは?
―― NTTぷららが提供する映像配信・放送サービスの「ひかりTV for docomo」には、dTVと「dTVチャンネル」もバンドルされていますが、これでユーザーが増えたという動きはあったのでしょうか。
田中氏 基本的に、ひかりTVはセットトップボックスありきの、いわゆるISPとセットで提供されているサービスです。われわれが提供しているサービスは、いわゆるOTT(Over The Top)と言われているサービス同様、ネットワークとは別に、サービスレイヤーでいかに頑張るかを考えています。ひかりTV for docomoが劇的に会員数に寄与しているということはありません。
―― dTVとひかりTV for docomoで、コンテンツがかぶっていることについては、どう思いますか?
田中氏 そこはうまくすみ分けたいと思っているところです。私は7月からdTVを担当していますが、ずっと横で見ていて、いろいろな意味で変化させていきたいと思っています。楽しみにしていただけるとありがたいです。
―― 現時点で、ひかりTV for docomoとdTVは、どういうすみ分けなのでしょうか。
田中氏 ひかりTV for docomoは、光回線契約の上でひかりTVを展開していく中に、dTVを組み込んでいくというモデルです。ひかりTVのサービスと光回線を、どういう風にユーザーさんに使っていただくか、という形でセットにしています。OTT的なピュアな映像配信サービスというより、軸足がちょっと違う形で提供していると捉えていただくといいかもしれません。
―― dTVチャンネルもありますが、こことはコンテンツがすみ分けられているのでしょうか。
田中氏 正直にいうと、われわれ提供者側が期待するほどユーザーさんに伝わっていないところがあると思っています。これから工夫が必要だと思っています。
―― 実際は内容が違っていて、ターゲットもdTVチャンネルとdTVでは違っているということですか?
田中氏 そうですね。ただ、かぶっているのは否めません。攻めるユーザーさんの対象とサービスの対象をどうマッチングさせるか、少しこれから工夫が必要だと思っています。
サービスでも若者を取りに行く
―― ドコモは、かねて若年層が弱いといわれ、料金プランの「ahamo」も若者を対象にするというメッセージを出していますが、dTVにおいても若年層を取りにいくような工夫が、今後、強まっていくのでしょうか。
田中氏 実は、dアニメストアは20代が過半です。サービスとしては20代にリーチできているものがいくつもありますが、dTV自身がそこにリーチできているかというと、まだまだこれからだと思っています。ahamoを3月から提供するので、そこに向かったユーザーさん、またZ世代に使ってもらえるサービスにどうやってしていくかは、私のようなおじさんじゃなくて(笑)、若いメンバーに考えてもらわなくてはいけないと思っています。
―― 若者向けというところでは、クレジットカードを持たない人向けに、コンビニでdTVの3カ月分の視聴コードを購入できる施策もしています。この反響はいかがでしょうか。
田中氏 想定通りという感じです。本当はもっと爆発的に行ってほしいなと(笑)。
―― 棚の競争率が厳しそうですね。
田中氏 そうですね。カードだらけなので。今まで電話料金という前提だけしか見ていなかったところに、コンビニでコードを買うという方法ができた。一方で、dポイントもコンビニさんと連携させてもらっています。決済方法が限られている方に伝えて買っていただくように、認知を広げていく必要もあると思います。
オリジナル作品も増やしていく
―― 今後もオリジナル作品は増やしていくのでしょうか。
田中氏 そうですね。他社もオリジナルで攻めています。実は、映画と連動させたり、原作を書き下ろしたりとか、今までもオリジナル作品は意外と作っているんです。知ってもらうこと、オリジナルだけでも見てみたいと思ってもらえるようなアテンションをどうしていくか、まだまだ工夫が必要です。若い人たちは情報の取得方法も変わってきていて、Googleで検索しなくなっていますから。ユーザーの行動属性をとらえながら、フルファネルマーケティング(購買プロセス全体を一気通貫するマーケティング手法)を展開していくことだと思っています。このあたりはこれまで以上に変化させていきたい。
―― 完全なオリジナル作品は、既に放映されたドラマや原作など、何かしらユーザーが知っているフックになるものがないと難しそうに思いますが。
田中氏 いや、そんなことはないと思いますよ。最近はアーティストさんに寄っているものも作っていて、映像である必要もなくなってくるのかなと思っています。「Clubhouse」のような音声も含め、いろんなものがコンテンツになり得る環境ができていると思っています。dTVも映画を配信するだけである必要はない。という風に捉えて、オリジナル作品を映画や番組に限定する必要もないと考えています。
―― dTVには、エイベックスと共同でやっているミュージックビデオやカラオケがあり、音楽コンテンツが充実しているのも強みだと思います。音楽ジャンルを拡充していくプランはありますか?
田中氏 ドコモは「新体感ライブ CONNECT」というライブのネット配信をやっていますが、巣ごもりのタイミングで、いろいろな取り組みをしています。最近ですと、B'z、サザンオールスターズの他、amazarashiなど、若手アーティストともやらせていただいています。
ライブだけではもったいないです。二次利用コンテンツはdTVで見られるとか、アーティストさんを起点にして番組を作るなど、そういう流れを工夫していきます。ユーザーさんに対して伝えていく手法は、1つのサービスである必要もないと思っています。ユーザーさんの行動に合わせた提供の仕方を工夫していけるといいなと思っています。
―― エイベックスとのシナジーは、やはり音楽のコンテンツが一番大きいですか? 映像作品にもシナジーは生きているでしょうか。
田中氏 エイベックスさん自身も映像系サービスを広くやっていらっしゃいます。映像と音楽の親和性は高く、よりシームレスにつながっていてもいいだろうと思っています。一緒に取り組んでいることで、いろいろなアイデアが生まれています。
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