ドコモが固定代替サービス「home 5G」を始める狙い 他社サービスとの違いは?:石野純也のMobile Eye(1/3 ページ)
コロナ禍で家中での通信環境に注目が集まる中、ドコモは5Gを使った新たなサービス「home 5G」を提供する。固定回線の代替としてモバイル回線を使う仕組みで、ホームルーターの「home 5G HR01」も用意。このhome 5Gを他社のサービスと比較しつつ、ドコモの狙いを読み解いていきたい。
コロナ禍で家中での通信環境に注目が集まる中、ドコモは5Gを使った新たなサービスの提供を開始する。「home 5G」がそれだ。同サービスは、固定回線の代替としてモバイル回線を使う仕組みで、ホームルーターの「home 5G HR01」も用意。サービス開始は8月下旬を予定する。海外では、4Gや5Gなどのモバイル回線を使ったFWA(Fixed Wireless Access)を提供するキャリアも多く、日本ではKDDIやソフトバンクがホームルーターを扱っている。
固定回線の代替として企画したサービスのため、料金もスマートフォンやタブレットのそれとは異なる。「5Gギガホ プレミア」や「5Gギガライト」などのギガプランとセットで契約すると、主回線側に割引を受けられる点も、ドコモ光などの固定回線に近い。もともとドコモは、FWAの提供にやや消極的なスタンスを貫いていたが、5Gが広がる中、満を持してサービスを開始する。そんなhome 5Gを他社のサービスと比較しつつ、ドコモの狙いを読み解いていきたい。
固定代替として打ち出したhome 5G、料金もワンプランでシンプルに
home 5Gは、その名の通り、家の中に通信を提供するサービス。個々人にひも付くモバイルサービスというより、家単位で利用する固定回線に位置付けは近い。ドコモの井伊基之社長が「工事が不要の便利なWi-Fi環境を提供する」と語っていたように、光回線などの固定回線に比べ、設置が簡単で、契約したらすぐに利用できるようになるのが、home 5Gの強みだ。サービスの企画もドコモ光と同じ、光ブロードバンド事業推進部が担当する。
同部のサービス企画担当部長を務める滝澤暢氏は、「ドコモ光はおかげさまで700万契約を超えたが、その中で工事の時間を短縮したい、手軽に使いたいという方がいた。どうしても届かなかった声に応える狙いで企画した」とhome 5Gの狙いを説明する。こうした声は、単身者や若年層のユーザーからとりわけ多く寄せられたという。ドコモ側の事情としては、5Gのサービス開始から1年がたち、超高速通信回線のエリアが徐々に広がっていることも挙げられる。「広がっている5Gエリアでつながり、ベースとしての速度が速くなる」(井伊氏)というわけだ。
ドコモ側からは明確には語られなかったが、コロナ禍でリモートワークが急拡大した結果、個人宅の固定回線が混雑していることも、home 5Gのような代替サービスが求められている一因といえる。総務省の調査によると、第1回目の緊急事態宣言下だった2020年5月には、固定ブロードバンドのトラフィックが19Tbpsへと急増していることが分かる。回線の逼迫(ひっぱく)とは別の話だが、古いマンションのような集合住宅では、各戸への配線にVDSLを使っているため、最高速度が100Mbpsや200Mbpsに制限されるのも、固定回線の速度が上がらない原因の1つだ。
かく言う筆者も、自宅の固定回線はフレッツ光だが、宅内の配線がVDSLのため、速度は速いときでも100Mbpsを下回る。これに対し、モバイルネットワークは帯域の拡大や通信方式の高度化により、年々速度が向上している。設置が手軽な上に、環境によっては固定回線よりスループットも高くなるというわけだ。home 5G HR01は、5Gで下り最大4.2Gbps、4Gで下り最大1.7Gbpsと、理論値なら固定回線以上。無線のため、スループットはここから大きく下がる可能性はあるが、固定回線の速度低下に悩まされているユーザーが試す価値は高い。
「ワンプライスでいきたい」(同)ということにこだわった料金は4950円(税込み、以下同)。5Gギガホ プレミアと同様、データ容量に制限はない。さらに、「home 5Gセット割」を用意し、ギガプランなどのスマートフォン向け回線と一緒に契約すると、ファミリー割引を組んだユーザーの料金がそれぞれ1100円割引になる。割引の仕組みは、ドコモ光と同じ。2年契約や期間限定の割引がなく、シンプルな価格体系を打ち出した。
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