au、ソフトバンクと連携を深めるフードデリバリー 「dデリバリー」を失ったドコモはどう出る?:石野純也のMobile Eye(2/3 ページ)
コロナ禍に伴う緊急事態宣言などで飲食店の営業に大きな制限がかかる中、フードデリバリーは急激に市場を拡大している。KDDIはmenuとの業務提携を発表し、ソフトバンク傘下のPayPayは、Uber Eatsのミニアプリを搭載する他、出前館でもPayPayのネット決済を利用できる。一方、「dデリバリー」を終了させたドコモはこの分野で後れを取っているように見える。
まずはキャンペーンから、IDやユーザーデータの連携も視野に
では、資本業務提携により、どのようなサービスが実現するのか。短期的に見ると、au向けの割引がユーザーにとってのメリットといえそうだ。資本業務提携が発表された6月2日には、auスマートパスプレミアム会員向けのキャンペーンを開始。auスマートパスプレミアムに新規登録した際に、合計4000円分のクーポンを発行する(既存の会員は3000円分)。会員数の規模の大きなau PAYからmenuへの送客を行う取り組みも実施済み。au PAYアプリの「おすすめサービス」の1つに、KDDIグループ内のサービスと並んでmenuが加わっている。
現状、menuでの支払いにはクレジットカードの登録が必要だが、7月にはau PAYのネット決済が加わり、au PAY残高の利用が可能になるという。現状でもau WALLETプリペイドカードを登録すれば、au PAYの残高で決済することは可能だが、ネット決済が加われば、使い勝手はさらに高まる。マスターカードのプラットフォームを介さないau PAYのネット決済は、KDDIにとって、手数料を節約する効果もありそうだ。
さらに、au PAY内にmenuのミニアプリを搭載することも検討しているという。現状はあくまでmenuのアプリへのリンクが張られているにすぎないが、ミニアプリが加われば、au PAYアプリからダイレクトに食べ物の注文が可能になる。これらがユーザーやKDDI、menuにとっての短期的な資本業務提携の効果といえる。一方で、この取り組みはより長期的なID連携やデータの相互活用まで視野に入れたものだ。
将来的には、au IDとmenu、双方のIDを連携させ、ユーザーの購買履歴などを元にしたマーケティングを強化していくという。多田氏によると、「通常のデリバリーは店舗内飲食とは異なり、店舗側からはデリバリー事業者の先に、どのようなお客さまがいるのかが分からない」ことが課題になっているという。そのため、デリバリーを利用したユーザーが店舗を利用した際に、データに基づいてお勧めのメニューを提案するといったことができない。逆も同様で、店舗内ではデータが取れていても、その情報をデリバリーに生かすのが難しい。
多田氏によると、店舗内の決済に利用できるau PAYのau IDと、デリバリーを行うmenuのIDを連携させてデータを統合すれば、こうした課題が解決される可能性があるという。また、au PAYやPontaを組み合わせれば、より幅広い業種とコラボレーションできる。例えば、デリバリーで人気のメニューを元にコンビニエンスストアが商品を開発したり、デリバリーでニーズの高い商品をそろえるのに活用できたりと、マーケティングの幅が広がる。menuとの資本業務提携は、こうしたゴールを見すえたものだという。
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