新料金プランが好調も、値下げの影響をどうカバーする? 4キャリアの決算を振り返る:石野純也のMobile Eye(1/3 ページ)
NTTドコモ、KDDI、ソフトバンクの2020年度決算と、楽天の第1四半期決算が出そろい、新料金プラン導入後の状況が徐々に見えてきた。中でも、オンライン専用の料金プランは各社とも好調に推移していることがうかがえる。それに伴う減収影響も徐々に拡大していく見込みだが、非通信領域でカバーしていく。
NTTドコモ、KDDI、ソフトバンクの2020年度決算と、楽天の第1四半期決算が出そろい、新料金プラン導入後の状況が徐々に見えてきた。中でも、オンライン専用の料金プランは各社とも好調に推移していることがうかがえる。一方で、それに伴う減収影響も徐々に拡大していく見込みだ。大手3社と楽天モバイルの決算から見えてきた、最新動向に迫っていきたい。
新料金プランへの移行が進む大手3社、楽天モバイルも契約増が加速
大手3社と楽天モバイルの決算が出そろい、オンライン専用料金プランをはじめとする料金値下げの影響が見えてきた。ユーザーからの反応は上々で、各社とも契約者数を順調に伸ばしている。中でも規模が大きいのは、他社に先駆けahamoの投入を発表したドコモだ。契約者数は4月末時点で100万を突破。事前エントリーの250万には及んでいないが、ドコモの井伊基之社長は「30代以下のユーザーが50%を占めており、狙い通り若年層を中心にご好評をいただいている」と自信をのぞかせる。
内訳は、やはりドコモ内の料金プラン変更でahamoに移るユーザーが多いようだが、他社からの乗り換えも少なくないという。井伊氏には「既存のドコモからの移行の方が多いが、新規契約や他社からの流入がないわけではない。期待通り、ドコモに戻ってくる方もいる」と語る。その証拠として、ドコモは4月のMNPは転入超過になった。井伊氏によると、楽天モバイルに流出したユーザーも、「一定程度、戻ってきている」という。
KDDIのpovoも、ahamoを追う。KDDIの高橋誠氏は「実数は開示していないが」と前置きしつつ、「povoは結構順調。100万契約が見えてきたというのが、今のところの状況」と語る。ahamoと同様、「最初の段階では、auのお客さまが多い」(同)といい、auからの料金プラン変更が多いことを明かした。povoの特徴であるトッピングも、「利用状況の数字は申し上げられないが、結構トッピングしていただいている」(同)。中でも、24時間限定でデータ通信が使い放題になるトッピングが好評を博しているといい、KDDIの狙いが当たった格好だ。
ソフトバンクは、ブランド別契約者数の内訳を実数で開示していないが、LINEMOとLINEMOの前身であるLINE MOBILEを合算した契約者数は、開示されたグラフから推計すると、3月末時点で100万程度になっているようだ。移行元は、ソフトバンクやY!mobileが多いという。同社の宮川潤一社長は、「ソフトバンクやY!mobileのユーザーがLINEMOに移動している数が少し出ている。見込み以上かどうかというと、見込み通り」と語る。Y!mobileの伸びも大きく、「スマホの短期的な目標は(3ブランドで)まず3000万回線」(同)を掲げる。
3社のオンライン専用新料金プランのあおりを受けると見られていた楽天モバイルも、月額0円からの段階制プラン「UN-LIMIT VI」を投入したことで、回線数の伸びが加速している。楽天モバイルの山田善久社長は「MNOへの申し込みは発表後、急速に加速し、3月下旬には他社が新料金プランを始めたが堅調。MNPで他社から乗り換える方が増加している」と語る。累計申込者数は5月11日時点で410万に達し、「以前と比べ、ペースは上がっている」(楽天グループの河野奈保CMO)という。
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