菅政権肝いりの「キャリアメール持ち運び」、どこまでニーズがあるのか?(3/3 ページ)
キャリアメールはスマートフォンとSNSなどの普及で利用は大幅に減少している。にもかかわらず、総務省は現在のタイミングでキャリアメールの持ち運びができるよう各キャリアに求めている。一体なぜなのか。また、どのようにキャリアメールを他社でも引き継げるようにするのか。
果たしてどこまでニーズがあるのか?
総務省、そして菅政権が強い期待を抱いているキャリアメールの持ち運びだが、実際どの程度ニーズがあるのかは判断しにくい。総務省のアンケートでは一定の利用があるとされているが、それはあくまで5000人の意見にすぎず、一方で持ち運びが「必要ない」という声も少なからず聞かれ、キャリアメールの持ち運びを競争政策の目玉の1つに据えることには疑問を抱く向きも多いようだ。
ただ一方で、3キャリアのオンライン専用プランのサービス開始直前に、多くのWebサービスが、オンライン専用プランへの移行でキャリアメールが使えなくなり、トラブル発生の可能性があるとして注意喚起していたことも記憶に新しい。このことは、利用頻度が減っていてもキャリアメールが実際は何らかの形で使用されており、存在感が大きいことを示したともいえる。
また最近ではドコモがahamoに有料での店頭サポートを追加するなど、オンライン専用プランを若い世代以外にも拡大しようとしているのではないか? という動きも見られ、そうなれば今後、キャリアメールの持ち運びニーズが高まる可能性も考えられる。それだけに、キャリアメールの持ち運びがどこまで利用されるのか? というのはふたを開けてみないと分からないというのが筆者の見方である。
ただ先の事業者間協議によると、変更元管理方式では「IMAP対応メーラーを具備している」ことが必須条件とされているが、特に古いフィーチャーフォンの利用者がそうした条件を理解し、端末を買い替えて設定までこなせるのか? という点には疑問が残る。また移転元のキャリアメールは、移転先からしてみれば他社サービスなので、それを移転先のキャリアショップがどこまで面倒を見るべきなのかという点も、報告書を見る限りは明確になっていない。周辺環境の整備にまで議論が及んでいない状態で、開始を急ぐ必要があるのか? という点には疑問がある――というのが正直なところだ。
関連記事
キャリアメールの「持ち運び」は2021年中に 武田総務大臣「公正な競争環境に」
武田良太総務大臣が6月25日、記者会見でキャリアメールの「持ち運び」について言及した。キャリアメールの持ち運びは2021年中に実現する見通し。総務省はキャリアメールについて「一定程度のニーズがある」とみている。SIMロックは「原則禁止」 キャリアメールは「転出元管理」で持ち運び――総務省がMNP活性化に向けた「論点案」を提示
総務省が、MNPの円滑化に向けたタスクフォースの第4回会合を開催した。会合では、eSIMカードに関して構成員(有識者)に説明するヒアリングが行われた他、同省による論点の整理案が示された。この記事では、同省が提示した論点整理案を中心に解説する。eSIM開放やキャリアメール持ち運びの課題は? 総務省が「スイッチング円滑化タスクフォース」で論点整理
総務省が第1回「スイッチング円滑化タスクフォース」を11月26日に開催した。主な検討事項は、eSIMの促進、SIMロック解除の一層の推進、キャリアメールの持ち運びに向けた検討、MNP手続きのさらなる円滑化に向けた検討など。eSIMの提供は、セキュリティ上の懸念があるとキャリアから意見が挙がっている。SMSやキャリアメールとの違いは? 「+メッセージ」でできること、できないこと
3キャリアが5月9日から提供する「+メッセージ」。SMSの後継となるサービスだが、何ができるのか? フィーチャーフォンや格安SIMでは使えるのか? 今、分かっていることをまとめた。MVNOはキャリアメールを提供できるのか
「MVNOにはキャリアメールがないから乗り換えられない」という方が多くいます。MVNOはキャリアメールを提供できないのでしょうか。そもそも「キャリアメール」とは一体何なのでしょうか?
関連リンク
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.