20GBの中容量帯でahamoやpovoに反撃 y.u mobileとNUROモバイルの新プランを解説:石野純也のMobile Eye(1/3 ページ)
大手キャリアが料金を値下げし、低容量プランでMVNOの得意とする領域に攻め込みつつある中、MVNO側も徐々に中容量プランの市場を開拓し始めるようになった。y.u mobileがU-NEXTをセットにした「シングルU-NEXT」、NUROモバイルがMNO並みの品質を目指す「NEOプラン」を提供。なぜ中容量帯のプランを投入したのか、その狙いを解説したい。
大手キャリアが料金を値下げし、低容量プランでMVNOの得意とする領域に攻め込みつつある中、MVNO側も徐々に中容量プランの市場を開拓し始めるようになった。10月1日には、y.u mobileがU-NEXTをセットにした「シングルU-NEXT」プランをスタート。データ容量は10GBだが、U-NEXT側につくポイントでデータ容量を購入すると、20GBまで料金の範囲内で増やすことができる。料金は2970円で、オンライン専用料金プランとしてユーザー数を増やすドコモのahamoと同額だ。
11月1日には、ソニーネットワークコミュニケーションズのNUROモバイルも、データ容量20GBの新料金プランを追加する。「NEOプラン」がそれだ。同プランの価格は2699円で、こちらはKDDIのpovo2.0の20GBトッピングより1円だけ安い。同社はNEOプラン専用の帯域を用意し、通信品質でも“MNO並み”を目指す。低容量、低価格を得意としていたMVNOだが、MNO各社のサブブランドやオンライン専用プランに対抗する形で、下克上を狙う。その詳細を見ていこう。
中容量の領域に攻め込むy.u mobileとNUROモバイル
y.u mobileのシングルU-NEXTプランは、データ容量10GBにU-NEXTがセットになったプラン。料金は2970円で、ドコモのオンライン専用プランであるahamoと同額だ。一見すると、データ容量はahamoの半分しかないように思えるが、U-NEXTに加入していると、毎月1200ポイントが付与される。このポイントで、追加のデータ容量を10GB購入でき、合算すると20GBの中容量プランになる。
最大の目玉は、月額料金が2189円のU-NEXTがセットになっていることだ。もともとU-NEXTを契約しているユーザーにとっては、差額の781円を払うだけで20GBのデータ容量を維持できることになる。U-NEXTをこれから契約したいという人にも、お得なプランといえる。U-NEXTの加入者は現在200万人を超えており、MVNOにユーザーを呼び込みやすい。U-NEXTの加入を促進できるという点では、まさにシナジー効果のあるプランといえる。
10月1日にスタートしたシングルU-NEXTプランだが、ユーザーからの反響も大きいという。y.u mobileの運営元であるY.U-mobileの代表取締役社長、鹿瀬島礼氏は「(新規契約の比率は)全体を100とすると、60は(5GBの)シングルプランだが、シングルU-NEXTプランが35、残りの5がシェアプラン」と明かす。もともとは低容量のシングルプランに大きく偏っていたが、シングルU-NEXTプランを導入したことで、中容量が増えた格好だ。鹿瀬島氏は「U-NEXT付きをフックに、中容量に踏み込める環境が整った」と胸を張る。
対するNUROモバイルは、11月1日から新料金プランの「NEOプラン」を導入する。NUROモバイルは4月に「バリュープラス」を導入し、10GB以下の低容量ユーザーにターゲットを絞った。対するNEOプランは、データ容量が20GBと中容量で、料金は2699円。意識したのは恐らく2700円に設定されているpovo2.0の20GBトッピングで、料金は1円だけ安い。MVNOの料金は、MNOより割安になることが当たり前だったが、NEOプランはそのセオリーに沿っていないようにも見える。
NEOプランでNUROモバイルが目指したのは、「MNOと同等の品質」(MVNO事業室 室長 神山明己氏)だ。NUROモバイルはMNOから借りるネットワークを分け、NEOプラン専用の帯域を用意。神山氏は「専用帯域を確保することで、MNOとの接続点がボトルネックにならないような設計思想を導入した」と語る。同社は以前、Xperia限定の「プレミアム帯域オプション」を提供し、高機能な端末と高速な通信を組み合わせていたが、NEOプランの設計もそれに近いといえそうだ。
また、中容量以上のデータ通信量を求めるユーザーが、20代、30代といった若年層に多いことから、LINE、Twitter、InstagramといったSNSの通信量がカウントされないゼロレーティングを付けた。MNOのオンライン専用プランには導入されていないデータ容量の繰り越しに対応しているのも、差別化のポイントだ。さらに、オートプレフィックス機能に対応したことを生かし、通話料も30秒11円に抑えている。
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