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大幅リニューアルした「povo2.0」のインパクト 楽天モバイルにも影響あり?石野純也のMobile Eye(1/3 ページ)

auのオンライン専用ブランド「povo」が、その内容を大幅に変え、「povo2.0」に生まれ変わる。使いたいときだけ必要なデータ容量をトッピングする仕組みは定着するのか。povo2.0の料金の仕組みを解説しながら、KDDIの狙いや業界に与えたインパクトを読み解いていきたい。

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 auのオンライン専用ブランド「povo」が、その内容を大幅に変え、「povo2.0」に生まれ変わる。サービスインは9月下旬を予定しており、間もなくスタートする見込みだ。同じpovoではあるが1.0と2.0では、ベースとなる考え方が大きく異なる。オンライン専用をうたいつつも、料金体系はこれまでの携帯電話と同じ月額課金だったpovo1.0に対し、povo2.0は売りであるトッピングを全面に押し出し、使う時だけお金を払う仕組みになる。高速データ通信を使わなければ、月額料金は1円もかからない

 総務省の後押しでeSIM対応端末が徐々に増え、大手キャリアも軒並みスマートフォン向けのeSIMサービスを開始したが、povo2.0の料金体系はその仕組みとも相性がよさそうだ。使いたいときだけ必要なデータ容量をトッピングする仕組みは定着するのか。povo2.0の料金の仕組みを解説しながら、KDDIの狙いや業界に与えたインパクトを読み解いていきたい。

povo2.0
KDDIはオンライン専用料金プランをpovo2.0に刷新する。サービスインは9月下旬で、間もなくスタートする見込みだ

トッピングを主軸に据え、最低利用料金を0円に設定したpovo2.0

 オンライン専用の料金プランとしてスタートしたpovoだが、もともとKDDIは、デジタルネイティブ向けのMVNOとして新たなサービスを始める予定だった。シンガポールに拠点を置くCircles Asiaと協業し、KDDI Digital Lifeを設立したのも、そのためだ。アプリで簡単にデータ容量を追加できたり、オンラインとの相性がいいeSIMを主軸にしたりといった特徴を持ち、既存のサービスとは一線を画したMVNOに仕上げることがうたわれていた。

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povoの原点は、2020年10月に発表されたMVNO。当初は20GBプランではなく、トッピングのような仕組みやeSIMを武器にしたサービスになる予定だった

 一方で、2020年12月にはドコモがオンライン専用プランのahamoを発表。総務省が20GBでの料金値下げを要望していたこともあり、ふたを開けてみると、povoも他社と同じ“諸外国より安い20GBプラン”を実現するための料金プランになっていた。トッピングで24時間定額のようなワンショットのオプションを追加することができるのは他社との違いだが、ユーザー自身で最適な料金を組み立てるカスタマイズの幅が狭くなっていたのも事実だ。

 これに対し、povo2.0は当初掲げていたコンセプトに、より忠実になった印象を受ける。大手キャリアの打ち出す料金として非常に珍しいのが、月額料金を0円に設定していることだ。もちろん、0円のままでは128kbpsでしか通信できず、あくまでほぼ使わない場合に限定されるが、使いたい分だけをトッピングで付け足していくという仕組みは海外キャリアのプリペイドプランのようで面白い。複数のキャリアのプロファイルをインストールしておける、eSIMとも相性がいいサービスといえる。

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20GB一択の料金体系を大幅に改め、トッピングで自由にデータ容量やサービスを追加できるようにする

 トッピングのデータ容量はそれぞれ1GB、3GB、20GB、60GB、150GB。料金は390円(税込み、以下同)、990円、2700円、6490円、1万2980円で、20GB一択だったpovo1.0から選択肢が一気に広がった格好だ。これらのデータ容量は月額料金ではなく、有効期限が設定されている点もプリペイド的だ。1GBは7日間、3GBと20GBは30日間、60GBは90日間、150GBは180日間と、データ容量が多いトッピングほど長期に渡って利用できる。急な出張でデータ容量が足りなくなったときに足したり、まとめてデータ容量を購入しておいて安く済ませたりといった組み立てを自由にできるのがこのトッピングのメリットだ。

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データトッピングは1GBから150GBまでの計5種類。それぞれ有効期限が異なるのも特徴で、プリペイド的な料金プランといえる
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60GBや150GBのトッピングは有効期限が長く、まとめ買いができる。1カ月あたりに換算すると、料金は安くなる

 povo1.0で好評だった24時間のデータ使い放題も、330円で残っている。金額はやや高くなったが、24時間限定でデータ容量を気にせず使えるようになるため、特定の日にデータ通信が集中しそうな場合に活躍する。一方で、月額料金制をやめたため、有効期限が切れた場合は、トッピングを再度購入する必要がある。KDDIによると自動更新はなく、ユーザーの意思でトッピングをつける必要がある。ここを面倒と捉えるか、自由と捉えるかは価値観次第だが、少なくとも今までの携帯電話の料金とは“別物”に仕上がっていることは間違いない。

 これらに加えて、新たに「コンテンツトッピング」も用意。スポーツ番組に定評のある「DAZN」の使い放題パックは7日間760円、動画サービスの「smash.」は24時間220円で提供される。いずれのサービスもサブスクリプションサービスとして月額料金で提供されているが、povo2.0のトッピングに合わせて、短期間だけ使えるようになる。毎月見るわけではないため、月額料金を払うのをためらっていたユーザーにとってはうれしいトッピングと言えそうだ。

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データ容量だけでなく、コンテンツサービスもトッピングとして“ばら売り”される。当初はDAZNとsmash.の2サービスが対応
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