大幅リニューアルした「povo2.0」のインパクト 楽天モバイルにも影響あり?:石野純也のMobile Eye(2/3 ページ)
auのオンライン専用ブランド「povo」が、その内容を大幅に変え、「povo2.0」に生まれ変わる。使いたいときだけ必要なデータ容量をトッピングする仕組みは定着するのか。povo2.0の料金の仕組みを解説しながら、KDDIの狙いや業界に与えたインパクトを読み解いていきたい。
アクティブユーザーをいかに増やすか、ギガ活でトッピングの促進も
KDDIの代表取締役社長、高橋誠氏はpovo2.0でユーザー層が2つに分かれていくと予想する。1つは、60GBや150GBの大容量をまとめて買ったり、24時間使い放題のトッピングを都度追加したりする「アクティブに使う層」(同)。もう1つは、「eSIM(を取りあえずインストールしておく)だけのお客さま」だ。60GBのトッピングは有効期間が90日あるため、約1カ月でならすと料金は20GB、2163円になる。150GBも同額。現行のpovo1.0より20GBあたりの料金が安くなるため、ヘビーユーザーが増えるというわけだ。
一方で、使わなければ料金は0円で維持できる。180日間の間にトッピングを最低1回つけるなど、契約を維持するための条件はあるものの、いざというときのためのサブ回線として契約する人もpovo1.0のときよりは確実に増えるはずだ。こうした使い方は、複数のプロファイルを端末内にインストールしておけるeSIMと相性がいい。月額料金がかからない料金プランは一定の人気があり、KDDI傘下のビッグローブが始めたdonedoneの「エントリープラン」は、一時SIMカードが不足するほど申し込みが殺到した。povo2.0でも、こうした使い方をするユーザーが増える可能性は高い。
ただ、どちらのユーザーが増えても、KDDIにはプラスになる。1GBや3GBのトッピングは確かに現行のpovo1.0より安いが、一方で大容量のデータ通信を使うユーザーも集まりやすい立て付けなっているからだ。実際、高橋氏は「povo1.0はトッピングという形で始めたが、アクティブなユーザーのARPU(1ユーザーあたりからの平均収入)は結構高かった。povo2.0も契約をしたあとトッピングを盛り上げていくことで、結果的に多様な使い方をしていただければ、減益にはつながらない」と語っている。
Circles Asiaが他国で提供しているサービスでも、同様の傾向があるようだ。同社との提携を決め、KDDI Digital Lifeの設立を発表した2020年10月の決算説明会では、「シンガポールの例を見ると、MVNOだから安いのではなく、MNOよりARPUが高いケースもある」(同)と語られていた。オンライン専用のため、ベースの料金は抑えられているが、使った分だけ支払うユーザーが増えれば、その分だけ収益を増やすことにつながる。
サブ回線として使うユーザーは、もともと月額料金を払うユーザーとはバッティングしないため、契約者の上乗せになる上に、何らかのトリガーがあればアクティブユーザーに変わる可能性もある。そのきっかけになりそうなのが、povo2.0のスタートに合わせて展開する、「ギガ活」と銘打ったキャンペーンだ。これは、小売店やスタートアップ企業との協業で、買い物をしたり、特定のサービスを発見したりするだけでデータ容量をもらえる仕組みのこと。例えば、ウエルシアや丸亀製麺、ローソンでなどでau PAYを使って500円以上支払うと、3日間有効な300MBが付与される。
他にも、シェアリングサービスを提供する各社と提携し、「FIND povo」と名付けた企画を展開。第1弾として、電動自転車や電動キックボードを提供するLUUPや、傘をシェアするアイカサ、モバイルバッテリーを貸し出すmochaと手を組む。こちらは、街中やバーチャル空間でpovoのキャラクターを見つけるとデータ容量がもらえるキャンペーンで、スタートアップ各社にとってはプロモーションを兼ねた仕組みといえる。
こうしたキャンペーンを使って無料で手に入れたデータ容量を使い、povo2.0を使うようになれば、ゆくゆくはARPUの高いアクティブなユーザーに“化ける”かもしれない。また、データ容量を付与する形で店舗への送客ができるようになれば、KDDIにとって新たな収益源になる可能性もある。この手のマーケティングにはポイントプログラムが使われるのが定石だが、トッピングのデータ容量に置き換えたところはpovoならでは。ユーザーにどのように受け入られるのか、注目しておきたい取り組みだ。
関連記事
- auの「povo」、9月下旬から基本料金0円に データ通信は1GBから選択
KDDIが、オンライン専用プラン「povo」のアップデートを発表した。2021年9月下旬から基本料金を0円とし、10種類以上のトッピングを選べる「povo2.0」を提供する。1GB〜150GBのデータ通信、データ使い放題、通話かけ放題などのオプションをトッピングとして選べる。 - auの「povo2.0」は“月額0円”で運用できるのか? 実は制約あり
KDDIが9月下旬から、オンライン専用プラン「povo」を「povo2.0」に改定する。月額料金を0円とし、オプションの「トッピング」としてデータ容量を選ぶ形となった。通話(発信)やデータ通信を利用しなければ月額0円で運用できるわけだが、制約もある。 - 買い物やサービス利用でギガがたまる povoで「#ギガ活」を開始
KDDIが、povoでデータ容量をためられる新たな活動「#ギガ活」を9月下旬に開始する。買い物でギガを「もらう」、街中やバーチャルイベントなどに隠れているギガを「さがす」、抽選などでギガが「あたる」という3つの取り組みを実施する。買い物やサービスの利用などで、300MB/3日間や1GB/7日間などのデータ容量をもらえる。 - 「1プランが柔軟性を損ねていた」 povoが0円+データトッピングに変更した理由
KDDIが2021年9月下旬から、オンライン専用プラン「povo」を「2.0」にアップデート。基本料金を0円とし、データ容量は必要に応じてトッピングで選ぶ形に変更する。データ容量が毎月固定されないので、利用スタイルに応じて、毎月のプランを選択するイメージに近い。 - 刷新したUQ mobileのプランとpovoはどちらがお得? 20GBで月額2728円プランを比較
UQ mobileは夏から9月2日にかけて段階的に料金プランを刷新し、auからより乗り換えやすくなった。オンライン専用プラン「povo」もあるが、UQ mobileの方がサービス面は充実している。povoは、使い放題24時間などのトッピング(オプション)をうまく活用できる上級者向けサービスという側面が強い。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.