大幅リニューアルした「povo2.0」のインパクト 楽天モバイルにも影響あり?:石野純也のMobile Eye(3/3 ページ)
auのオンライン専用ブランド「povo」が、その内容を大幅に変え、「povo2.0」に生まれ変わる。使いたいときだけ必要なデータ容量をトッピングする仕組みは定着するのか。povo2.0の料金の仕組みを解説しながら、KDDIの狙いや業界に与えたインパクトを読み解いていきたい。
1年たたずに姿を大きく変えつつあるオンライン専用プラン、競争の構図にも変化が
20GBでの料金値下げを実現するため、スタート時点では横並びになっていた各社のオンライン専用料金プランだが、LINEMOが3GBの「ミニプラン」を新設したり、povoがトッピングを前提にしたpovo2.0に鞍替えしたりすることで、一気にバリエーションが増し、各社の特徴が色濃く出るようになった。1プランでシンプルさを打ち出すドコモのahamoに対し、ソフトバンクのLINEMOは低容量プランを追加してMVNOユーザーを狙うが、povo2.0は料金体系そのものをガラッと変えてしまった。
結果として、オンライン専用料金プランには、各社の置かれた立場が色濃く反映される形になった。ドコモは、Y!mobileやUQ mobileに対抗するブランドがなく、若年層の取りこぼしもあった。シンプルで料金の安いブランドが必要だったというわけだ。逆に、ソフトバンクはもともとY!mobileが好調な一方で、傘下に収めたLINEモバイルからユーザーを巻き取っていきつつ楽天モバイルやMVNOに対抗する必要もあり、3GBのミニプランが不可欠だったといえる。KDDIも低容量から中容量をカバーしたUQ mobileが急速に伸びているため、povoにはデータ容量だけでない差別化が求められていた。
オンライン専用プランというカテゴリーでは今のところahamoが強く、契約者数も8月6日の決算説明会時点で180万を超えており、povo2.0発表時に約90万のユーザーを獲得しているpovoがこれに続く。ソフトバンクのLINEMOは2社にやや離されているが、前身のMVNOであるLINEモバイルとの合算では100万契約を超えているという。こうした状況の中、povoが料金プランを刷新し、LINEMOがミニプランを加えたことで、契約者数の追い上げが加速するのと同時に、競争の構図が変化しそうだ。2社ともいったんはARPUが下がる恐れは高く、いかにアクティブなユーザーを増やすかが課題になる。
povo2.0が月額料金を課さない仕組みを採用したことで、新規参入の楽天モバイルに影響を与える可能性も出てきた。楽天モバイルはUN-LIMIT VIで1GB以下なら無料という低料金を打ち出して以降、ユーザー数は堅調に伸びている。povo2.0の場合、0円だと128kbpsでしか通信できない仕組みのため、横並びでは比較できないが、3GBの料金に関しては990円で、1GB超3GB以下が1078円の楽天モバイルより安い。また、povo2.0はトッピングを足すことで中容量や大容量にもしやすくなり、60GBや150GBをまとめ買いすれば、20GBでも楽天モバイルとほぼ同額になる。auのエリアの広さを考慮すれば、金額は非常に魅力的といえる。
楽天モバイルはショップを構えているのが強みだが、もともとがネット企業なだけにオンラインに強く、リアルな店舗はあくまで販売拠点という位置付け。その意味で、直接的に競合するのは大手3キャリアのオンライン専用プランになる。LINEMOがミニプランを投入し、povoが1.0から2.0へとバージョンアップして料金的な優位性が徐々に失われているため、何らかの対抗策を打ち出してくる可能性もありそうだ。
関連記事
- auの「povo」、9月下旬から基本料金0円に データ通信は1GBから選択
KDDIが、オンライン専用プラン「povo」のアップデートを発表した。2021年9月下旬から基本料金を0円とし、10種類以上のトッピングを選べる「povo2.0」を提供する。1GB〜150GBのデータ通信、データ使い放題、通話かけ放題などのオプションをトッピングとして選べる。 - auの「povo2.0」は“月額0円”で運用できるのか? 実は制約あり
KDDIが9月下旬から、オンライン専用プラン「povo」を「povo2.0」に改定する。月額料金を0円とし、オプションの「トッピング」としてデータ容量を選ぶ形となった。通話(発信)やデータ通信を利用しなければ月額0円で運用できるわけだが、制約もある。 - 買い物やサービス利用でギガがたまる povoで「#ギガ活」を開始
KDDIが、povoでデータ容量をためられる新たな活動「#ギガ活」を9月下旬に開始する。買い物でギガを「もらう」、街中やバーチャルイベントなどに隠れているギガを「さがす」、抽選などでギガが「あたる」という3つの取り組みを実施する。買い物やサービスの利用などで、300MB/3日間や1GB/7日間などのデータ容量をもらえる。 - 「1プランが柔軟性を損ねていた」 povoが0円+データトッピングに変更した理由
KDDIが2021年9月下旬から、オンライン専用プラン「povo」を「2.0」にアップデート。基本料金を0円とし、データ容量は必要に応じてトッピングで選ぶ形に変更する。データ容量が毎月固定されないので、利用スタイルに応じて、毎月のプランを選択するイメージに近い。 - 刷新したUQ mobileのプランとpovoはどちらがお得? 20GBで月額2728円プランを比較
UQ mobileは夏から9月2日にかけて段階的に料金プランを刷新し、auからより乗り換えやすくなった。オンライン専用プラン「povo」もあるが、UQ mobileの方がサービス面は充実している。povoは、使い放題24時間などのトッピング(オプション)をうまく活用できる上級者向けサービスという側面が強い。
関連リンク
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.