「povo」は100万契約突破 ドコモの通信障害は「人ごとではない」――KDDI高橋社長一問一答(2021年10月編)(1/2 ページ)
KDDIが10月29日、2021年度第2四半期決算を発表した。この記事では、報道関係者向けの決算説明会で行われた高橋誠社長との一問一答の中で、特に注目すべきやりとりをまとめる。
KDDIは10月29日、2021年度第2四半期の連結決算を発表した。第1四半期を含めた上期で見た場合、モバイル通信料の減収が想定内に収まり、成長領域(※1)の堅調さに支えられて増収を果たした一方で、2022年3月末に予定している3Gサービス(CDMA 1X WIN)の終息などで減価償却費を多く計上したことなどが響いて減益となった。
この記事では、同日に行われた報道関係者向け決算説明会における質疑応答で行われた、注目すべきやりとりを紹介する。
povo契約数は100万件突破 「トッピング」は予想以上に使われている
―― 「povo(ポヴォ)」について、9月29日から基本料0円からのプランを開始しました。現状での契約者数はどれくらいでしょうか。(povoへのプラン変更などによって)通期でどのくらいの減収を見込んでいるのでしょうか。
高橋社長 Web専用ということもあり、povo2.0(9月29日からのプラン)は立ち上げのタイミングでお客さまにご迷惑をお掛けしてしまい申し訳なく思っています。最近は(申し込みやサポートの面で)だいぶ落ち着いてきまして、11月からは拡販に向けた活動を本格的に行います。
足元の状況ということですが、この間の会見では90万(契約)という話をしたかと思うのですが、現時点では100万件を超えています(9月28日までの「povo1.0」を含む)。ひと月で10万以上増えているので、(povo2.0は顧客獲得の面で)非常に順調に立ち上がったと思っています。
povo2.0は「ゼロ(0円)から始まる」ということがコンセプトですが、(有料の)トッピングが思った以上に使われています。最初は「トッピングはそれほど使われないのかな?」と考えていたのですが、だいたい半分程度のお客さまにトッピングを使っていただきました。「この程度(が限界)かな?」と思ったのですが、(サービス開始から)2~3週間経過した時点で3分の2から4分の3程度のお客さまにトッピングを使っていただけました。順調に推移しています。povo1.0とpovo2.0で平均を取ってARPU(1回線当たりの収入)を計算すると、UQ mobileよりも高いかもしれないという状況です。
少し前を振り返ると、auのモメンタム(いきおい)が落ちてきたことから、他社への対抗もありUQ mobileの強化をした結果、他社へと転出するお客さまを抑えられました。しかし、「ゼロから始まる」コンペティター(筆者注:楽天モバイルのこと)に対して、“もう一手”を打たなければならないということで始めたのがpovo2.0です。これで「ゼロから始まる」所への流出も収まってきました。ほぼ狙い通りに行っています。
povoは私個人として本当にやりたかったサービスで、モバイル業界のDX(デジタルトランスフォーメーション)だと思っています。データを通してお客さまのことをよく理解した上で、私たちから継続的にアプローチをしてトッピングをしていただくという、「売っておしまい」から「売った後こそが始まり」というサービスをしたいと考えていたのです。
個人的には(povoには)とても入れ込んでいるので、これからもしっかり伸ばしていきます。現時点では、povoの契約数が増えることによって減益を加速することはない考えています。
楽天モバイルからの「ローミング料収入減」 どう影響する?
―― 営業利益の増減で「(楽天モバイルの)ローミング収入が押し上げ要因となった」という説明があったかと思いますが、楽天モバイルは自社回線への切り替えを加速する方針を示しています(参考記事)。今後、このことが収益に与える影響についてどうお考えでしょうか。
高橋社長 私たちの立場からすると、楽天モバイルとのローミングについては粛々と対応しているような状況です。
楽天モバイルの状況を(外から)見ていると「エリアを急速に広げます」と言ってみたり、「半導体不足で少し遅れます」と言ってみたり、今度は「ローミング代が高すぎる」と言ってみたりと、いろいろなことをおっしゃります。それはどうなのかなと思う所ですが、粛々と対応していきます。
基本的なルール(契約)は「人口カバー率70%を達成したエリアから順次ローミング契約を解除」ということになっています。楽天モバイルから先日発表された通りのスケジュールで、ローミングサービスは順次終了していくイメージです。ただ、「(人口カバー率が)70%に達したが引き続き貸してほしい」と要望される基地局数が思っている以上に多いので、今年度(2021年度)についてはローミング収入が想定よりも増えそうです。今後(ローミングは)ピークアウトしていって、徐々に減収していくと思います。
(エリア構築は)結構大変だと思います。私たちやドコモ、ソフトバンクは人口カバー率が99.9%となっていますが、彼ら(楽天モバイル)は今、96%を目指しています。(人口カバー率が)70%に達した時点でローミングを解除するということは、当該エリアではさらに多くの基地局を打たなければいけないので、(ローミング解除から)しばらくの間はどうしてもエリアの穴ができてしまうでしょう。その辺も鑑みながら対応していく必要はあると思います。
来年度(2022年度)の収益について話をすると、設備の撤去費用など、3G停波に伴う費用は可能な限り今年度中に全て引き当てる計画としています。そのため、来年度はそれが軽くなる予定です。3G停波に伴うコストが軽減することによる増益と、ローミング縮小に伴う減益はバランスする見通しです。
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