KDDI決算で明らかになった新料金プランの影響 「UQ mobile」をユーザー獲得の武器に:石野純也のMobile Eye(1/3 ページ)
KDDIの第1四半期決算は増収増益。通信料収入の減収が響いた一方で、同社がライフデザイン領域と呼ぶ上位レイヤーのサービスがそれを補った。5Gも通信料収入の減収を抑止している。povoの契約数は100万まで増えたが、同社がユーザー獲得の武器として期待しているのがUQ mobileだ。
KDDIは、7月30日に第1四半期の決算説明会を開催した。決算は増収増益。通信料収入の減収が響いた一方で、同社がライフデザイン領域と呼ぶ上位レイヤーのサービスがそれを補った。同社は前四半期の2月にUQ mobileが新料金プランを導入、3月にはauのデータ無制限プランを値下げした上で、オンライン専用の料金プランのpovoを導入している。第1四半期には、その結果がダイレクトに反映された格好だ。ここでは、決算説明会で明らかになった新料金プラン導入の影響を読み解いていきたい。
料金値下げの影響を受けつつも、第1四半期は増収増益に
KDDIの第1四半期決算は前年同期比で増収増益となった一方で、マルチブランド通信ARPU(1ユーザーあたりの平均通信料収入)収入は、117億円の減収に見舞われた。同社が成長領域と位置付けるライフデザイン領域や楽天モバイルなどからのローミング収入、ポイント引当金の戻しといったその他収入が、通信料のマイナスをカバーした。
マルチブランド通信ARPUは、2021年度の第1四半期が4115億円だったのに対し、2022年度第1四半期は3999億円へと減少。5Gの推進によるデータ利用増で一定程度を補っていく方針だが、2022年度通期では600億円から700億円の減収になる予想を打ち出している。原因となったのは、一連の政府主導による料金値下げだ。KDDIの高橋誠社長は「通信料金の値下げ影響などにより、マルチブランドARPUが減少している」と語る。
KDDIの料金値下げを振り返ると、同社はまず2021年2月にUQ mobileに「くりこしプラン」を導入。家族割引などの条件をなくし、3GBで月1628円(税込み、以下同)からの料金を実現した。さらに、UQ mobileは、6月から「auでんき」や「UQでんき」とセットで契約することで、単身契約でも料金を値引きする「でんきセット割」を開始。セット割という条件はつくものの、3GBの料金をMVNOの水準に近い990円まで値下げてしている。
3月には、データ通信の使い放題を売りにするauの料金も値下げし、新料金プランの「使い放題MAX 4G/5G」を導入。各種割引適用前の料金で7238円を打ち出している。同月には、月額2728円のオンライン専用料金プランであるpovoもスタートした。auやUQ mobileは既存契約者も値下げの恩恵を受けられる上に、「比率はお答えできないが、値下げによってUQ mobileやpovoに(auから)ユーザーが流れている」(同)という。結果として、料金値下げの影響はauに直撃した格好だ。
一方で、通信料収入の減収を抑止している要因もある。それが5Gだ。高橋氏は「5Gを使っているお客さまのトラフィックは、4Gのトラフィックと比較して倍以上になる」と明かす。料金値下げによってデータ容量あたりの単価は下がったが、データ使用量が増えればユーザーは上位のプランやブランドを選択する。600億円から700億円の減収は、こうした増収要因を含んだもの。5Gの比率が上がっていくことで、値下げの影響を小さくできるというわけだ。
5Gでトラフィックが伸びているのは、大容量のコンテンツを消費するユーザーが増えるためだ。高橋氏は、中でも大きいのは動画だとしながら、次のように語る。
「5Gは『これがキラー』だとなかなか言いづらいという方もいるが、明らかに動画サービス。われわれが提供する動画ではなく、世の中にある数多ある動画サービスが見やすくなる。それによってトラフィックが倍以上に上がることは、われわれにとってプラスの要素だ」
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