新型コロナワクチン接種証明書アプリ、AndroidスマホとiPhoneで変わる「ローマ字氏名」:ふぉーんなハナシ
デジタル庁と厚生労働省が「新型コロナワクチン接種証明書アプリ」の運用を開始しました。Android版とiOS版の両方で海外用の接種証明書をダウンロードしたのですが、「あれ?」と思うことがあったので皆さんに共有しようと思います。【追記】
既報の通り、デジタル庁と厚生労働省は12月20日から「新型コロナワクチン接種証明書アプリ」の運用を開始しました。
このアプリにはAndroid版とiPhone(iOS)版があるのですが、Android版とiOS版で“ある部分”の情報(表記)が異なることが分かりました。
【追記:12月22日15時】iOS版アプリにおける今後の対応について追記しました
【追記:12月22日19時15分】iOS版アプリの更新について追記しました
アプリのセットアップは超簡単
12月20日の記事でも記した通り、必要なモノさえしっかりとそろえれば、このアプリのセットアップは簡単です。サーバの混雑さえなければ、1~2分程度で完了します。
少し細かいことを指摘するなら、Android版はマイナンバーカードの読み取りの例示画像を見直した方が良いと思いました。iPhoneを前提とした例示画像になっているため、この通りにやろうとすると永遠に読み取れない人が出るんじゃないかと……。「モバイル非接触IC通信マーク」や「N-Mark」のロゴを使って、「これらのマークがある付近にマイナンバーカードを密着させてください。マークが見当たらない機種は、取扱説明書などで密着させる位置を確認してください」という説明にした方が親切かもしれません。
海外用証明書の「ローマ字氏名」が何かおかしい?
ご時世もご時世なので、現時点において私が海外に渡航する予定はありません。ただ、「せっかく更新した新デザインの旅券(パスポート)を生かそう」と思い、海外用のワクチン接種証明書も合わせて発行することにしました。
海外用証明書を発行する場合、旅券の3ページにある本人情報をカメラで撮影する必要があります。Android版とiOS版で若干見た目は異なりますが、映像をスキャンするという観点ではどちらも同等です。
証明書の発行は、まずAndroid版、続けてiOS版で行ったのですが、Android版とiOS版で証明書におけるローマ字氏名の「姓(Surname)」と「名(Given name)」の表記が逆になっていることに気が付きました。具体的には以下の通りになっています。
- Android版:INOUE SHO(姓→名の順)
- iOS版:SHO INOUE(名→姓の順)
「アプリの表示上の違いなのかな?」と思い、証明書本文やQRコードのデータを解析してみた所、データそのものもAndroid版とiOS版で“逆”になっていることも判明しました。
海外用証明書の詳細表示。やはりAndroid版とiOS版で氏名の順序が逆になっています。なお、ICAO VDS-NC規格の証明書のQRコードには平文で氏名情報も含まれているのですが、その順序も逆になっていることが確認できました
旅券表記上はAndroid版が「正しい」
このように、現時点ではAndroid版アプリを使う人とiOS版アプリを使う人でローマ字氏名の情報が異なる状況です。
最近は「名前は国籍国における順序に従って表記しよう」という動きが見られます。日本でも、政府が「姓→名」の順序で表記する運動を推進しています。先般行われた東京オリンピックでは、日本代表の選手の氏名が中国、台湾(中華台北)や韓国の代表選手と同様に「姓→名」の順で表記されるようになりました。
一方で、ローマ字(アルファベットなど)が広く使われている欧米では、氏名を「名→姓」の順で表記する国や地域がほとんどです。「国際的に分かりやすい表記にしよう」という観点から「ローマ字表記では『名→姓』に統一すべき」という意見も少なからずあります。
今回の件に話を戻すと、旅券における氏名表記は「姓→名」の順番となっています。つまり旅券表記的にはAndroid版が「正しく」、iOS版が「誤り」ということになります。ただ、先述の通り、欧米で広く使われている方に合わせるという観点ではiOS版が「正しく」、Android版が「誤り」ということになります。
ともあれ、使うプラットフォームによって氏名の表記が異なってしまうのは、実際に証明書を使う際に不安要素になり得ます。どちらの表記でも有効なものとして扱えるのなら良いのですが、どうなのでしょうか……?
iOS版はアプリを更新予定 更新後に海外用証明書の再ダウンロードを
本件についてデジタル庁に問い合わせた所、12月22日付で回答を得られました。体裁整えた上で、やりとりを記します。
筆者 海外用証明書をAndroid版アプリとiOS版アプリでダウンロードした所、ローマ字氏名の「姓」と「名」が逆になってしまいました。この事象について把握しておりますでしょうか。
デジタル庁 把握しています。ただ今、iOS版アプリの修正を準備しています。
筆者 iOS版アプリで取得した証明書は海外でも問題なく使えるのでしょうか。
デジタル庁 直ちに「無効」というわけではありません。ただ、国や地域によっては旅券上の表記と“逆”になっていることで疑義を生じさせてしまう可能性は否定できません。
筆者 そうなると、iOS版アプリを使っているユーザーは、アプリの更新後に証明書を再発行した方が良いということになるのでしょうか。
デジタル庁 iOS版アプリで海外用証明書をダウンロードした方には、アプリの更新後に証明書の再ダウンロードを案内させていただく予定です。
iOS版アプリで既にダウンロードした海外用接種証明書は、直ちに無効というわけではありません。ただし、やりとりの中でデジタル庁の担当者が言及している通り、旅券の表記順と異なることでトラブルが生じる可能性があります。アプリが更新されたら、速やかに証明書の再発行(再ダウンロード)を行うことを推奨します。
再ダウンロードをする際には、事前に古い海外用接種証明書を削除しておくことをお勧めします。証明書の削除は、証明書の詳細画面の右上にあるゴミ箱ボタンをタップすれば行えます。
国内用を含め、接種証明書は自動で更新されません。証明書の内容に訂正あるいは追記がある場合は、都度「古い証明書の削除→新しい証明書の発行(ダウンロード)」を行う必要があります。
iOS版アプリに修正
デジタル庁と厚生労働省は12月22日、今回の問題を修正するアプリの新バージョンを公開しました。詳しくは別記事で確認してください。
関連記事
iOS版「新型コロナワクチン接種証明書アプリ」に更新 海外用証明書の“氏名”にまつわる問題を解消
デジタル庁と厚生労働省が12月20日から運用を開始した「新型コロナワクチン接種証明書アプリ」を巡って、iOS版アプリの生成する海外用接種証明書に問題があることが判明した。12月22日に公開された新バージョンのアプリで問題は解消するが、更新前のアプリで取得した海外用証明書を削除した後、再度証明書を取得することが強く推奨される。「新型コロナワクチン接種証明書アプリ」サービス開始 何が必要? どうすれば使える?
デジタル庁と厚生労働省が、新型コロナウイルスのワクチン接種の証明書として利用できるアプリの配信と運用を開始した。アプリの概要と、アプリの使い始め方を簡単に紹介する。内閣府が語る「接触確認アプリ」開発の経緯 「インストール義務化は信義則に反する」
新型コロナウイルスのクラスタ対策を目的として政府が提供するスマートフォン向けの接触確認アプリ「COCOA」。6月19日のリリース以来、7月31日までに996万件ダウンロードされている。COCOA投入までは紆余(うよ)曲折もあり、政府の説明不足から誤解を招いている点も否めない。より多くの人が使ってこそ意味がある 「新型コロナウイルス接触確認アプリ(COCOA)」をインストールしよう
AppleとGoogleが開発したAPIを活用して開発された「新型コロナウイルス接触確認アプリ」(略称「COCOA」)の配信が始まりました。この記事では、その利用方法を簡単に紹介します。「iOS 15.1」配信 SharePlay、ProRes、ワクチンカードなどの新機能追加
Appleは予告通り「iOS 15.1」と「iPadOS 15.1」の配信を開始した。FaceTimeで画面を共有できる「SharePlay」などの新機能が追加された。
関連リンク
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.