一人勝ちのahamo、楽天モバイルの逆襲 2021年の“携帯料金競争”を振り返る:石野純也のMobile Eye(2/3 ページ)
2021年の携帯料金競争で話題を集めたのが、ドコモ、au、ソフトバンクのオンライン専用プランだった。ユーザー獲得ではKDDIのUQ mobileや、ソフトバンクのY!mobileが健闘した。楽天モバイルも料金を改定して、0円からの「Rakuten UN-LIMIT VI」で支持を集めた。
0円プランで先行した楽天モバイル、2社のサブブランドも順調に拡大
オンライン専用プランの影響を受けたのは、大手3キャリアだけではない。2020年4月に本格参入したばかりの楽天モバイルも、その1社だ。同社は4月にデータ通信が使い放題の「UN-LIMIT V」を改定。0円から3278円の間で料金が変動する、段階制のUN-LIMIT VIを導入した。段階制の料金プラン自体は大手3キャリアも導入しているが、楽天モバイルのそれは、1GB以下が無料になるのが最大の特徴。0円のままでも楽天市場での還元率が1%上がるため、ポイント目当てで契約することも可能になった。
使い放題と20GBという差はあるものの、大手3キャリアのオンライン専用プランとUN-LIMIT Vは金額がほぼ横並び。大手3キャリアに比べ、エリアが見劣りする楽天モバイルは、そのままだと“草刈り場”になる恐れもあった。本格参入開始後に始めた1年無料キャンペーンが終わるユーザーが、4月から徐々に増え始めるからだ。もともと料金競争を仕掛けた側だった楽天モバイルだが、大手3キャリアのオンライン専用プランに引きずられる形で、さらなる値下げ競争を余儀なくされたといえる。
とはいえ、UN-LIMIT VIの導入で楽天モバイルの契約者獲得に弾みがついたことも事実だ。3月には285万契約だった楽天モバイルのユーザー数は6月に366万を突破。9月には411万にまで拡大している。1年無料キャンペーンの駆け込み需要はあったものの、半年間で100万契約以上を上乗せできたのは、UN-LIMIT VIの成果といえる。結果として、大手3キャリアはもちろん、MVNOから楽天モバイルに移るユーザーも増えている。
先に挙げたKDDIのpovo2.0も、楽天モバイル対抗で導入されたサービスの1つだ。同社の高橋誠社長はpovo2.0の基本料が0円になったのは、楽天モバイルへの流出を止めるためだったと明かした。povo2.0はUN-LIMIT VIとは異なり、0円のままだと128kbpsでしか通信できないが、提携した店舗での購入特典としてデータ容量をもらえる「#ギガ活」を組み合わせれば、無料で利用することができる。このリニューアルで楽天モバイルへの流出が収まり、povo全体の契約者数は100万を突破した。
ahamoが先鞭(せんべん)をつけた料金値下げ競争だったが、KDDIやソフトバンクの場合、むしろ好調だったのはUQ mobileやY!mobileといったサブブランドだった。両ブランドとも、2月に新料金プランを導入。UQ mobileは6月に「でんきセット割」を、9月に固定回線を対象に加えた「自宅セット割」を開始した。割引を適用した際の3GBプランの料金は990円で、オンライン専用プランと比べてもそん色のない安さになった。
先行するY!mobileは700万契約、UQ mobileは5月時点で300万契約を突破するなど、両ブランドとも順調に拡大している。コンセプトの新しさから話題になりがちなオンライン専用プランだが、スマートフォンに慣れているユーザーですら、つまずくポイントは少なくない。端末を故障、紛失した際のサポート体制などにも不安が残る。店舗を構えるUQ mobileやY!mobileが、こうした点を重視するユーザーの受け皿になっているといえそうだ。
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