2700円に値下げをした「ahamo」の戦略 “サービスの簡略化”による混乱も?:石野純也のMobile Eye(1/3 ページ)
ドコモは3月1日に、ahamoの料金を2700円(税別)に値下げすることを発表した。値下げ幅は280円と少額だが、総額表示が義務化される4月以降、3000円を下回る2970円でアピールできるのは大きな差になりそうだ。一方で、ahamoのサービス内容は既存の料金プランから大幅に簡略化されているため、混乱も予想される。
ドコモが発表したオンライン専用料金プランの「ahamo」に対抗する形で、KDDIは「povo」、ソフトバンクは「LINEMO」も立ち上げた。いずれの新料金プラン、新ブランドも、サービスは3月に開始される。ahamoやLINEMOが20年12月、povoが1月に発表され、サービスインまで時間が空いていたこともあり、導入前から競争が加熱。条件変更や料金変更が相次ぐ、異例の事態になっている。
そんな中、ドコモは3月1日に、ahamoの料金を2700円(税別、以下同)に値下げすることを発表した。値下げ幅は280円と少額だが、総額表示が義務化される4月以降、3000円を下回る2970円でアピールできるのは大きな差になりそうだ。合わせて、dカードやdカードGOLDでデータ容量が増える特典も発表した。対するソフトバンクは、LINEMOの通話定額オプションを1年間500円引きにするキャンペーンを導入。サービス開始前の前哨戦が続いている。ここでは、その経緯を振り返りつつ、ahamoの料金改定の狙いや課題を読み解いていきたい。
サービス開始前に相次ぐ料金改定、その経緯を振り返る
オンライン専用20GBプランの変遷を、時系列で見ていくと以下のようになる。まず、20年12月にドコモがahamoを発表した。データ容量は20GBで2980円。ここで、20GBプランの水準が打ち立てられた。これに対し、ソフトバンクは、即座にのちにLINEMOと命名される「SoftBank on LINE」を発表して対抗。LINEを使って契約でき、eSIMに対応するといった差別化は図っていたものの、料金自体はahamoと同じで、5分間の通話定額もついていた。
KDDIが追随していれば、料金は3社で横並びになるところだったが、同社は差別化競争を仕掛けてきた。povoでは、5分間の通話定額を「トッピング」と名付けたオプションにすることで、ベースの料金として他社より500円安い2480円を打ち出した。通話定額のトッピング化は、単なる値下げ以上に、他社の料金を“抱き合わせ”に見せてしまう効果があった。
実際に、ユーザーからも通話定額はオプション化してほしいという声が上がっていたことを受け、ソフトバンクはLINEMOのサービス名発表に合わせ、料金を2月に改定。料金はpovoと同じ2480円にして、通話定額はオプションにした。2社が通話定額を外して、ユーザーの選択に委ねた中、ドコモがこの動きに追随するかどうかが注目を集めていた。
ところが、ドコモは「追加料金の心配がなく、安心して生活を送れる一助になる」(営業本部長 鳥塚滋人氏)として、ahamoの通話定額を維持。代わりに、料金そのものを280円下げた2700円に改定し、他社との差別化を図った。これでも料金そのものは、5分の通話定額を外せるpovoやLINEMOの方が安いが、条件をそろえ、5分の通話定額を付けた場合はahamoが最安になる。
ahamoの値下げに対抗する形で、ソフトバンクは3月4日にLINEMOのキャンペーンを発表。キャンペーンは通話定額が12カ月間、500円値引きになるというもので、期間限定ながら、5分間の通話定額は無料になる。1年間は5分間の通話定額を付けても付けなくても、ahamoより安い金額になるというわけだ。KDDIは対抗策を発表していないが、3月のサービス開始を間もなくに控え、ようやく全貌が固まってきた格好だ。
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