NTTドコモが5G SAによる「スライシング」をデモ――高品質ネットワークサービスは「お金」になるのか:石川温のスマホ業界新聞
NTTドコモが技術展示イベント「docomo Open House」を展示会場とオンラインでハイブリッド開催した。その中で筆者が注目したのはスタンドアロン構成の5Gネットワークにおける「スライシング」だ。ネットワークスライシングは動画のライブ配信などで有意なメリットがあることは確かなのだが、ユーザーがそれに価値を見いだしてお金を出すかどうかは別問題のように思える。
今週、NTTドコモの技術展示イベント「docomo Open House '22」が東京ビッグサイトとオンラインのハイブリッドで開催された。東京ビッグサイトは完全招待制・120分制というクローズドとなっていた。メディアにも公開されたが、時間も限られており、かなり消化不良な取材となってしまった。
この記事について
この記事は、毎週土曜日に配信されているメールマガジン「石川温のスマホ業界新聞」から、一部を転載したものです。今回の記事は2021年1月22日に配信されたものです。メールマガジン購読(税込み月額550円)の申し込みはこちらから。
個人的に興味を抱いたのは5G SAのスライシングだ。展示では、バーチャル空間で行われているアイドルのライブを配信。スライシングありのネットワークではブロックノイズや遅延があまり発生していないものの、スライシングなしのネットワークや従来のネットワークでは、ややブロックノイズや遅延が発生しているのがわかった。
確かに大きなモニターでじっくりと見比べるとその違いがわかったりする。
例えば、コンテンツ配信事業者が「ノイズや遅延のない配信サービス」をユーザーに提供しようとすると、5G SAのスライシングを用いて配信することになるのだろう。
もちろん、それだけではビジネスにならないので、従来の配信ルートも用意する。コンテンツ事業者がキャリアにお金を払ってスライシングを利用して配信したとしても、ユーザーがプレミアムな料金を払う価値を見いだせる品質を提供できるか、かなり微妙な感じがしている。
今回のデモを見る限り、確かにスライシングのありなしで品質の違いは見えたが「お金を払ってまでも得たい価値か」と言われると、ちょっと首をかしげたくなる。
もちろん、5G SAのスライシングを享受するには、5G SA対応のスマートフォン、さらにはユーザーが5G SA対応エリアにいる必要もあるだろう。
今年から5G SAが本格的に導入されていきそうだが、コンテンツ、料金、ビジネスモデル、対応端末、エリアの広がりなど、様々な条件が整う必要がある。ようやくNSAの「なんちゃって5G」からSAの「真の5G」に移行できるタイミングではあるが、まだまだ「5G時代のキラーサービス」を開拓できていない感がある。
そんななか、世間的には「メタバース」が盛り上がっている。
「docomo Open House ’22」でもメタバース関連の展示があり、実際に試す機会もあったが、世間が騒いでいるほどの期待が持てずに終わってしまった。
「メタバースを知らない人が否定的な意見を言っている」という指摘をされそうだが、個人的にはこれまで過去数年にわたって、様々な展示会やイベントでメタバースを散々、嫌というほど体験してきた。
その経験を持ってしても、メタバースが世間が言うように爆発的に普及するためには、まだ何か足りないような気がしてならないのだ。
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