楽天モバイルの5Gは“高速”にこだわる 三木谷氏「大阪駅前で驚がくのスピードが出る」(1/2 ページ)
楽天グループの2021年度の連結売上業績は、携帯電話事業で基地局整備などによる投資が響き、2021年度のIFRS営業損失は1947億2600万円となった。楽天モバイルの5G戦略について三木谷氏は、低周波数の5Gにはそれほどメリットがないと話す。新周波数のSub-6やミリ波を使ってスピードを追求していく方針を示した。
楽天グループは2月14日、2021年度通期および第4四半期決算説明会を開催した。2021年度の連結売上業績は前年比15.5%増の1兆6817億5700万円に達したが、携帯電話事業で基地局整備などによる投資が響き、2021年度のIFRS営業損失は1947億2600万円となった。2021年度第4四半期の売上収益は、前年同期比15.9%増の4812億円、IFRS営業利益は前年比530億円減のマイナス864億円となっている。
三木谷浩史会長兼社長は、完全仮想化技術の確立によりコスト効率の高いネットワークが拡大しているとし、2022年2月に国内人口カバー率96%を4年前倒して達成したことをアピールした。今後の自社エリア拡大により、ローミングコストなどがさらに減少する見込み。契約者数は2月にMNOとMVNOを合わせて550万人を突破した。これは楽天カードを上回る顧客獲得スピードだという。また、三木谷氏は「楽天モバイルについては2000万人、2500万人は行くと確信している」と自信を見せる。
また、Rakuten Communication Platform(RCP)に関して、2021年にはドイツの通信事業者1&1の大型受注、米国dish向けの受注など、数千億円に上る受注獲得に成功。モバイル事業においては、2022年第2四半期以降の収益の改善を見込んでいる。
さらに三木谷氏は、アナリストとのインタビュー映像の中で5Gや、スペースモバイル計画について以下のように語っている。
「周波数帯域が低い5Gは、それほどメリットがない。スピードは(4Gと)あまり変わらないし、キャパシティーもそんなに変わらない。やはりSubー6といわれている中周波数帯域、あるいはミリ波といわれている高周波数帯域を、いかにうまくやっていくかが大きなポイントになってくる。
他社との大きな違いは、我が社はほとんど自分たちでテクノロジーをコントロールしているということ。ビームフォーミングやMassive MIMOをソフトウェアで管理することによって、ターゲティングされた接続ができるようになってくる。既に4000のエッジコンピューティングセンターを日本中に作った。楽天のネットワークはほとんど遅延のない最高のネットワーク品質になると思っている」
「スペースモバイルの使途については2つある。1つは、過疎地・遠隔地へのカバレッジ。これがしっかりとブロードバンドベースでできるということ。他社との違いは、地上局が必要ないこと。(端末に電波が衛星から)直接入ってくること。
もう1つは、大きな災害のとき、スペースモバイルで提供ができる。日本は災害が多いので、そういう場合に衛星からインターネットアクセスを可能にできることが大きなメリットになる。実は、遠隔地や過疎地におけるカバレッジには、非常にコストがかかる。ユニバーサルサービスを提供しなくていけないが、それがかなりコストを上げていて、料金に跳ね返ってしまう。衛星からサービス提供することで大幅なコストダウンができる。本当に大きなブレークスルーじゃないかと思う」
MNOとMVNO合わせて550万契約
モバイル事業についての詳細は山田社長が説明。人口カバー率96%を、総務省に提出した開設計画と比較して4年前倒しで達成したことを報告した。「屋外型の一般的な基地局に加え、スモールセルやフェムトセルなど、異なるエリアやユースケースに対応するさまざまなプロダクトを活用し、計20万セル以上と、OpenRANとしては世界でも有数のネットワークを構築した」と胸を張った。
カバレッジの拡大に伴い、楽天回線エリアでの通信量の割合が上昇。MNOサービスと契約数は着実に拡大し、MNOとMVNOを合わせた契約数は、2022年2月に550万を突破した。この契約者数の獲得スピードは、楽天カードが初期に会員を獲得してきたペースと比較して3倍以上。また、MNPで他社から乗り換えたユーザーの割合も継続的に増加しているという。「MNPのお客さまはARPUが高く、解約率が低いことが確認できており、MNP比率の上昇はモバイル事業の業績の向上につながる」(山田氏)と説明した。
第4四半期のモバイルセグメントの業績は、売上面では前四半期比で増加している。これは1年無料キャンペーンの適用が終了した課金対象のMNOユーザーの増加や、デバイス売上の増加、また楽天シンフォニーの売上計上が貢献したためだ。一方、楽天回線エリアの拡大に伴い、償却費やネットワーク関連費用が引き続き増加している。
MNO事業は、先行投資の継続により営業損失が拡大している。今後は「課金対象ユーザーの増加や契約獲得の加速、ローミング費用の削減により、2022年第1四半期を収益のボトムに、以降は収益の改善を見込む」(山田氏)としたが、具体的な黒字化の時期などは言及がなかった。
楽天シンフォニーについては、楽天モバイルCTOのタレック・アミン氏が説明した。
まず、楽天シンフォニーの大型契約として、2021年8月にドイツの通信事業者1&1との契約を取り上げ、「計画は順調に進展している」と説明。楽天シンフォニーのプロダクトの中でも、複数のネットワーク機能、RAN、クラウド、IPルーティングに対応した次世代オンサイトプラットフォーム「Symware」が注目を集めたと紹介した。
また、「わずか数年で自社ネットワークの構築と商用サービス開始を実現し、イノベーティブな3社を完全子会社化して2000人規模にまで体制を強化。従業員の90%は研究開発に従事し、複数の国に研究開発拠点を設立している」と、楽天シンフォニーについて説明した。
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