三木谷氏「楽天モバイルの23年単月黒字化は十分可能」と自信、povo2.0の影響は「ほぼない」(1/2 ページ)
楽天グループが11月11日、2021年度第3四半期決算説明会を開催した。売上収益は前年同期比で12.6%増となる4069億円となったものの、基地局建設などモバイル事業への継続的な投資の結果、前四半期に続き営業損失を計上。三木谷社長は、単月黒字化は2023年に十分達成可能だとの見通しを示した。
楽天グループが11月11日、2021年度第3四半期決算説明会を開催した。売上収益は前年同期比で12.6%増となる4069億円となったものの、基地局建設などモバイル事業への継続的な投資の結果、前四半期に続き営業損失を計上。Non-GAAP営業利益は577億円の赤字となった。なお、IFRS(国際会計基準)に基づく計算では75億円の赤字。
三木谷浩史社長は、「驚異的なスピードで4G、5Gの基地局を建設しており、国内の4G人口カバー率は2022年3月末までに96%に到達する。基地局整備が進むことで顧客獲得も加速する」と自信を見せた。
モバイル事業には3つの目的があると語る。モバイル事業の収益化、楽天エコシステムへの貢献、Rakuten Communications Platform(RCP)をグローバルに販売することの3つだ。RCPの販売については、ドイツの通信事業者1&1社がRCPを包括採用することが決まっている。獲得可能なOpen RANの市場規模は2025年に15兆円に達するとし、「われわれは業界のフロントランナー」と胸を張った。
RCPやOpen RANソフトウェア、アルティオスターなど、通信に関連するプロダクトやサービスを集約し、事業組織としたのが楽天シンフォニーだ。RCPは楽天モバイルによって安定的に運営できることが証明されているとし、「既に契約が終わって実行しているプロジェクトのサイズも数千億円になってきている。重要なインフラであるネットワークビジネスの根幹を、日本発の楽天シンフォニーという会社が取りにいく」と意気込む。
なお、1&1社のようにエンド・ツー・エンドで全てを楽天シンフォニーが引き受ける形もあれば、基地局のソフトウェアだけ、あるいは開発した基地局のハードウェアを売るなど、さまざまなビジネスモデルが考えられるとしている。
収益の改善は2022年第2四半期以降
楽天モバイルの山田善久社長は、「通信ネットワークの整備は急ピッチで進捗(しんちょく)しており、9月時点で稼働している4G基地局数は3万超、半導体の納品を待って完工となる基地局が約1万局。速やかな基地局展開を見込んでおり、4Gの人口カバー率は目標としていた96%を来春にも達成する見通し」と語った。
当初予定していた2021年夏頃の人口カバー率96%達成は先送りとなったものの、総務省に提出した開設計画と比較して約4年の前倒しとなる。
また、自社回線整備の進捗に従い、KDDIのローミングサービスからの切り替えが進んでいる。基準カバレッジに対していない8県を除き、10月1日以降、各都道府県の対象地域で楽天回線への移行が進んでいる。
また今回、楽天モバイルの契約数が公表された。2021年9月時点でMNOの契約数は411万、MVNO契約数は99万、計510万となっている。「4月に1年無料キャンペーン申し込み期間が終了して以降も堅調に増加が続いている」(山田氏)
売上面では、MVNOユーザーが、3カ月無料となるRakuten UN-LIMIT VIに移行するという減収要因があったものの、MNOサービスで1年間無料キャンペーンが終了したことによって、課金対象ユーザーの増加という増収要因が上回り、売上高は前年同期比で21.1%増加。一方、楽天回線エリアの積極的な拡大によってネットワーク関連費用が引き続き増加し、営業損失は前年同期比でマイナス438億円となった。
2022年4月にも予定しているローミングサービス切り替えによるローミング費用の削減や、課金対象ユーザーの増加により、2022年第2四半期以降、収益の改善を見込んでいるという。
「楽天シンフォニーの未来は明るい」
楽天シンフォニーのCEO、タレック・アミン氏はまず、モバイルネットワークを分析する英Opensignalの調査で、楽天モバイルが、5Gのダウンロード速度、アップロード速度双方でグローバルリーダーに選出されたことを紹介。RCPの優秀さをアピールした。
「楽天シンフォニーの始動とともに、モバイル事業は第2フェーズに入る」とし、「テクノロジーとビジネスモデル双方において高い透明性を確保し、顧客と真のパートナーシップを築く」と述べた。
また、10月下旬に開催されたMWC Los Angeles 2021において発表した、Open RANと従来のRANに対応するプラットフォーム「Symware」を紹介した。アプリストアのような、通信事業者向けのアプリケーション提供方法も発表。「Madina」と名付けられ、ネットワークのスムーズかつ自動的な展開を実現するとした。
ドイツの1&1とOpen RAN、仮想化を採用したネットワーク構築を進めている他、テレフォニカともOpen RAN時代に合わせて通信ネットワークを変革させるべく、密に連携しているという。
アミン氏は「楽天シンフォニーには現在、世界中の通信事業者から100を超える引き合いがある。楽天シンフォニーの未来は明るい。楽天シンフォニーのソリューションは、5Gへ移行する通信事業者にとっても明るい未来を提供できる」とした。
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