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万年4位にとどまるつもりはない――楽天モバイルの2020年とこれから(1/2 ページ)

楽天が2020年の通期連結決算を発表した。巣ごもり需要により増収したものの、楽天モバイルにおいて基地局設置計画を前倒すなどした影響で営業赤字で終わった。2021年夏までには、2026年夏までに達成するとしていた「人口カバー率96%」を実現する計画だ。

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 楽天は2月12日、2020年通期(2020年1月〜12月)の連結決算を発表した。通期の連結売上高は、新型コロナウイルスの感染拡大に伴う「巣ごもり需要」などに支えられ、前年比で15.2%増の1兆4555億円となった。一方、通期の営業損益は、楽天モバイルにおける基地局建設計画の前倒しなど、先行投資が影響して1027億円の赤字(※1)となった。

(※1)Non-GAAP指標に基づく計算結果。IFRS(国際会計基準)に基づく計算では938億円の赤字

 この記事では、決算説明会における楽天モバイルに関する説明を簡単に紹介する。

通期決算
2020年度通期決算の概要。売上高は伸びたものの、楽天モバイルの基地局建設計画の前倒しや流通事業における先行投資が影響して、最終的な営業損益は赤字となった
損益図
営業損益の詳細図。モバイル事業において1512億円の赤字が発生した影響で、最終的に1027億円の赤字となった(Non-GAAP指標)
山田社長
モバイルセグメントの概況を説明する楽天モバイルの山田善久社長(楽天の副社長を兼務)
アミン副社長
技術面の説明を担当した楽天モバイルのタレック・アミン副社長(楽天の副社長を兼務)

累計申込数は250万件を突破

 楽天モバイルのMNOサービスについては、2020年12月30日付で申し込み数(※2)が200万件を突破していた。今回の決算説明会では、2021年2月8日付で申し込み数が250万件を突破したことが発表された。「Rakuten UN-LIMIT」シリーズの1年間無料提供は単純計算すると残り「50万回線」となる。

(※2)申し込みを受理した件数で、実際の契約数とは異なる

 申し込み数の伸びについて、楽天モバイルの山田善久社長は「各種キャンペーンの奏功や自社回線エリアの拡大」によるものだとしている。今後は「ヘビーユーザーにとどまらない、あらゆるユーザー層を想定した『Rakuten UN-LIMIT VI』の導入により、さらに大幅な顧客獲得ペースの拡大が望める」という。

伸び
グラフの縦軸はハッキリとしないが、2020年後半から契約に伸びが出てきたようだ

2021年時点の人口カバー率は74.9%

 楽天モバイルの課題の1つが、自社エリアの広がりだ。2021年1月末時点における人口カバー率は74.9%と、競合キャリアと比べると見劣りする。東名阪など都市圏に限ると、ある程度エリアの“面”が出来上がっているものの、地方部ではそれほど広がりが見られない。

 ただし、先述の通り、楽天モバイルでは基地局建設計画を5年ほど前倒し、2021年夏をめどに人口カバー率を96%を達成する方針を立てている。エリア化の進んでいない地域での基地局設置はもちろんのこと、既存エリアにおける基地局の高密度化も進めるという。

 設置計画の前倒しと高密度化に伴い、LTE基地局への設備投資額は当初計画の6000億円から30〜40%程度の増加(7800億〜8400億円程度)を見込んでいる。

人口カバー率
4G(LTE)エリアの人口カバー率は、2020年12月末に70%を突破し、2021年1月末時点で74.9%になったという
計画前倒し
既存エリアのネットワーク密度の向上もあせて行うことで、2021年夏をめどに4万4000局の基地局を設置し、人口カバー率を96%まで高めるという
セグメント
楽天モバイルを含むモバイル事業の営業損失が大きくなった要因としては、基地局建設計画の前倒しに加えて、ユーザー増加に伴うKDDIなどへのローミング費用の支払いの微増もあるという

5Gネットワークのパフォーマンスは随時改善

 楽天モバイルのLTE/5Gネットワークは、「O-RAN(オープン無線アクセスネットワーク)」に基づいて構築されている。タレック・アミン副社長によると、それを支えるRANソフトウェアを絶え間なく改良を続けており、ミリ波(28GHz帯)を使った5Gでは、下りデータ通信のスループット(実効通信速度)を870Mbpsから1.7Gbps超にまで改善できたという。

 基地局の設置やネットワークの運用についても、楽天モバイルでは自動化を進めているという。現時点では、ユーザーのプロビジョニングとアクティベーションにかかる時間は3分未満、マクロ基地局のアクティベーションにかかる時間は5Gで4分未満、LTEで約8分半になっているそうだ。

スピード改善
ミリ波を使った5G通信サービスでは当初、下りデータ通信のスループットが870Mbps程度だったが、ソフトウェアの改善により1.77Gbpsまで改善したという
自動化
基地局の設置やネットワークの運用でも自動化を進めているという
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